《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》ホーンラビット

「ティム先輩?」

俺が立ち止まると、ガーネットは振り向いて首を傾げる。

俺は今しがた彼から得た報を覚えておき、あとで検証しようと考えていた。

「ああ、すまない。行こうか」

まずは目先のモンスター討伐だ。俺は気を取り直してガーネットに笑いかけるとモンスターを探し始めた。

「きゃああああああああっ!」

ガーネットの悲鳴が上がる。

ダンジョン一層にってから十數分、俺たちは本日初のモンスターと遭遇していた。

が悲鳴を上げたのはそのためだ。

「ガーネット、剣の先端を下げるな!」

「は、はいっ! ティム先輩……で、でも……」

がこうなってしまうのもわかる。

何せこのダンジョン一層に出てくるモンスターというのは……。

『ホーンラビット』

額に一本の角を生やした白いウサギだったからだ。

「か、可いです……」

がさきほど悲鳴を上げたのは恐怖からではない。

目の前で鼻をかし、くりくりとした赤い瞳をした、らかそうな白いを生やしたうさぎ。そのらしい姿に魅了されていたのだ。

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「こんな見た目をしているがモンスターだ。額についている角はかなりい。木で作った盾や革鎧なんかは余裕で貫ける。見た目に騙されて亡くなっている冒険者もいるんだぞ」

らしい見た目とは違い、鋭い角を持つ。ひとでしようとして近付くと、見た目からは想像もつかない力強さで飛びかかってこられてそのまま角で刺されてしまう。

當たり所が悪くて命を落とした冒険者の話は多數存在している。

「ううう、ティム先輩。本當に殺さなければいけないのでしょうか?」

ガーネットもホーンラビットの見た目のせいで攻撃し辛いようだ。これならゴブリンの方がまだ良かったかもしれない。

「遊びに來ているんじゃないんだぞ?」

そう考えた俺だが、ガーネットを叱責する。この程度で音を上げるようでは困ってしまうからだ。

俺がそう言うと、彼は真剣な目をしてホーンラビットに向き直った。

「い、行きます……」

ガーネットのを黃が包む。おそらく、あれが『オーラ』のスキルなのだろう。

「ご、ごめんなさいっ!」

ガーネットはホーンラビットに謝りながら突進し、剣を振るった。

『ラビッ!?』

次の瞬間、ガーネットの剣がホーンラビットを突き刺した。

「手に、嫌ながしました……。ごめんなさい、本當にごめんなさい」

いまだ剣に刺さったままのホーンラビットに謝るガーネット。

「倒したらすぐに死を下すんだ。次のモンスターが來たらどうする」

俺は彼に指示をだす。

「はい!」

ガーネットは返事をすると、自分が殺したホーンラビットにり死を地面へと置いた。

「あっ、ティム先輩。ドロップボックスが出ました!?」

地面に下してし経つと、ホーンラビットが地面に吸い込まれ、代わりに小型のドロップボックスがその場に殘った。

「初討伐で初ドロップボックスとは運がいい。きっと、頑張ったガーネットへのだな」

実際のところは俺の『運』が高くてドロップボックスを落とす條件を満たしていたことと、昨晩の思い付きを実行した結果だ。

俺は、昨日のに『指定スキル効果解除』を使ってスキルを一つ外し『指定スキル効果倍』に『アイテムドロップ率増加レベル5』をセットしている。

「本當ですか? えへへ、嬉しいです」

喜びながらドロップボックスを開けるガーネット。

俺も初めてドロップボックスが出たときは開けるのにドキドキした記憶があるので、その気持ちはわかる。

なんにせよ、ホーンラビットを殺した罪悪から意識がそれたのなら良いことだ。

ダンジョンのモンスターは時間が経つと消えてしまうので死がなくなり実が薄れるので、彼も次第に慣れていくに違いない。

「ティム先輩。見てください【銀の指】です」

ガーネットが嬉しそうに報告しながら、ドロップボックスから出たアイテムを見せてくる。

「良かったな、それは冒険者ギルドで売れば銀貨2枚になるはずだ」

低ランクモンスターが落とすだけあってあまり形が良くないので、溶かして細工などに使われるのだが、同等の重さの銀貨2枚と換してもらえる。

「いえ、これは初討伐の記念にとっておくつもりです」

冒険者がゲン擔ぎに、初めて討伐したモンスターから得たアイテムをお守りにするというのがある。

俺自はそんなものを信じていないので、普通に売ってしまったが、冒険者は割とそういう部分にこだわったりすることが多い。

「それにしても……」

俺はアゴに手を當てて考える。

今のドロップアイテムは偶然なのだろうか?

と推測になってしまうが、ダンジョンでモンスターがドロップボックスを落とすのはそれぞれの層で必要な運の數値を超える必要がある。

現在、ガーネットは俺とパーティーを組んでいるので、彼が倒したモンスターにもそれが適用されているのだろう。

ここまでは問題ない。

パーティーを組んだ人間がドロップボックスを落とす時點で、出現するための條件は個人ではなくパーティーの運の合計値となるのだから。

問題はドロップ確率についてだ。

普通に狩りをしていた場合、モンスターがドロップボックスを落とすのは100匹に1匹となっている。

だが、俺は『アイテムドロップ率増加レベル5』のスキルを持っているので、確率が5%上乗せされる。

現在は『指定スキル効果倍』のスキルにセットしているので11%となる。

「どうされたのですか、ティム先輩。難しい顔をされていますけど?」

「いや、ちょっと重大な問題があってな……」

俺は彼に待つように言うと考え事を再開する。

ガーネットを見ると、彼は可らしく首を傾げながら俺を見ている。

の行によって俺がこんなにも心が揺らされているというのに気楽なものだ。

俺が気になっているのは、先程のドロップボックスは”どちら”かという點についてだ。

もしガーネットがたまたま1%を引き當てたのなら、彼は神にされた幸運の持ち主ということで崇めるしかない。

だが、俺のスキルの影響だとすると話がまったく変わってくる。

もし『アイテムドロップ率増加レベル5』が影響を與えているのなら他の『取得系スキル』はどうなのか?

さらに言うなら、彼の転職可能職業には商人もある。俺と彼が同じスキルを取得した上で狩りを行ったらどうなってしまうのか……。

「これは、すぐに検証しておかないといけないな」

考えている間に段々と楽しくなってきた。

「ガーネット」

俺は表を取り繕うと彼の名前を呼ぶ。

「どうされたのですか、ティム先輩。とても楽しそうですが……?」

どうやら表を隠しきれなかったらしい。困する彼に俺は告げる。

「今のじでとりあえず、100匹くらい狩ってみようか?」

「ええっ~~~!?」

俺の言葉に、彼は大聲を上げるのだった。

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