《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》サロメさんからの質問

『このたびは、をお掛けしてしまって申し訳ありませんでした』

通信の魔導を通してサロメさんの聲が聞こえてくる。

ニコルを逮捕してから三日が経ち、やつが行なった犯罪行為が明るみにでてきた。

俺は現在、王都にある冒険者ギルドにてサロメさんと通話を行っていた。

「いや、仕方ないでしょう。まさかそこまでの妄執は予想できないですから」

事件の発端は、サロメさんに言い寄っていたニコルが俺のことを気に食わず、襲ってきたと言う話なのだが、どうやら彼はことのほか責任をじているらしい。

『そう言えば、事件が解決したということなら、ティムさんが健在という話を伝えてしまってよろしいでしょうか?』

「別に構いませんけど、他の冒険者が悔しがるだけでは?」

何せ、あの街の冒険者ギルドには微妙な関係の人間が多い。わざわざ伝えずともしれっと復帰すればよいのではないかと考えていた。

『ところが、ティムさんの同期のグロリアさんとマロンさんがですね。ティムさんの容態を復活させるためにダンジョン奧にある【タリマモの実】を狙って毎日必死に狩りをしているんですよ。流石に不憫ですので……』

大半の冒険者は俺に対し良いを持っていないと知っていたが、そんなことがあったとは……。

「二人には『埋め合せがしたいから戻ったら酒でも飲まないか?』と伝えてもらえませんか?」

あんな斷り方をしたせいでわだかまりがあったのだが、それでも俺のためにいてくれていたことを知り、彼たちとの関係を修復したいと考えた。

『わかりました、伝えておきますね。それで、ティムさんは二週間後には戻って來られそうでしょうか?』

襲撃事件も解決し、ガーネットの件も決著したのだが……。

「いえ、もうしここにいてガーネットとこちらのダンジョンに潛ろうと考えています。彼のために、俺が何かできる時間は……殘りないですから」

『それは、ガーネットさんとパーティーを組む気がないということでしょうか?』

サロメさんの質問を俺は無言で肯定する。

『なぜでしょうか? ガーネットさんは最初から最後まで常にティムさんのことを考え、寄り添っていたように見えました。何か不満があるのですか?』

ところが、サロメさんは納得いかない様子で俺に質問を重ねる。

「それは『都合が良すぎる考えだから』ですよ」

『よく意味がわかりませんね?』

元々、俺は彼の「冒険者を続けたい」という意志を尊重するためにサロメさんの依頼をけた。

努力しても、人から顧みられないという境遇に同した側面が強かった。

依頼をけた時點では、彼とずっとパーティーを組むつもりはなく、一人前になったら別れると決めていたのだ。

それが現在では、彼は『剣聖』となり、今や俺に迫りつつあるステータスを獲得しつつある。

最初は組むつもりがなかったくせに、彼が優秀な力を発揮したから手元に置こうとする。

それでは能力を示して俺にすり寄ってきた冒険者と同じだ。

俺は『ステータス作』とガーネットの『剣聖』の職業について、ぼかしながらサロメさんに事を話した。

『うーん、それはティムさん。深く考えすぎではないでしょうか?』

「……考えすぎてますかね?」

『それはもう。こういうと何ですけど、面倒臭い人ですよ、ティムさんって』

「……すみません」

日頃からお世話になってはいたが、まさかそんな風に思われているとは考えもしなかった。

『私は冒険者がパーティーを組む以上、同じ実力を持つ相手が良いと考えています。どちらか一方に負擔を押し付ける関係は歪ですから』

それは確かにその通りだろう。実際ガーネットは実力が足りず、最後には人関係を迫られ、男に不審を抱きパーティーを抜けたのだ。

『その點、ティムさんの話だと、ガーネットさんとは役割分擔もできていて相も良い。私からするとなぜ組もうとしないのかわからないです』

俺とガーネットとの関係をすべて知っているわけではないのでそう言う反応にもなる。

『とにかくですよ、ティムさん。一度、ガーネットさんと話をするべきです。一方的に斷られたら斷られた方も辛いんですからね』

「そう……ですね」

サロメさんの言葉に俺は頷くと、通信を終えるのだった。

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