《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》ティム先輩からの呼び出し

嬢様、ティム様より言付けがあります」

朝起きると、私が産まれる前から屋敷に勤めている初老の執事がそう伝えてきました。

「ティム先輩が……?」

どのような用件でしょうか?

「『時間があったらで構わないから、この店に來てくれないか?』とのことです」

執事から伝えられた店名に聞き覚えがありません。名前からしてカフェのようですが、地図で見ると隨分と大通りから離れているようです。

「……わかりました、ティム先輩をあまりお待たせするわけにもまいりません。朝食はキャンセルしてください」

そう言って立ち上がると、私は部屋へと戻ります。

一応、普段著にを包んでおりますが、ティム先輩がわざわざ外に呼び出してきたのです。

私は侍に指示を出すと新品の服を用意させるのでした。

「ここが、指定の店で間違いありませんよね?」

王都の大通りから外れた場所にそのカフェはありました。

周囲は閑散としており、あまり人が多い場所ではありません。

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「……もしかして」

嫌な予がしました。

語によくあるシーンに、人に別れを切り出す際、人気のないカフェに呼び出すことが多いのです。

目の前にあるこの店は寂れており、とてもデートに利用するような店ではありません。

私はおそるおそる店のドアを開け、自分が店の場所を勘違いしているのではないか中を覗きこみました。

「いらっしゃい」

中には執事と同年齢くらいのお爺さんがいて聲を掛けてきました。おそらくこの店のオーナーさんでしょう。

「えっと……あ……。あちらの方と待ち合わせです」

奧の方にティム先輩の姿が見えました。ソファーに腰かけ後頭部しか見えませんが、私が彼を見間違えるなんてありえません。

私はゆっくりとしたきで彼の前を通り過ぎると、ティム先輩は本を読んでいました。

普段の冒険の時と比べて目が下がり、ゆったりとしている姿が目に映ります。私は読書の邪魔をしたくなくて聲を掛けずにいると……。

「あ、ガーネット。來てくれたんだな?」

私の気配に気付いたティム先輩は本を閉じるとテーブルの端に置きました。

買いをされていたのでしょうか? 小包があります。

「ティム先輩からのおいとあらば、どこへでも伺わせていただきます」

オーナーさんが注文を聞きに來たのでコーヒーを頼みました。店にった時から豆を挽いたより香りが店を満たしておりましたので、飲みたくなったのです。

注文を終え、ティム先輩を見ると普段に比べると張した様子が伺えます。

お互いに言葉を発することなく、オーナーさんがコーヒーを運んでくるまで無言を貫きます。

そしてオーナーさんがカウンターへと引っ込むと……。

「それで、どうしてわざわざこのような場所に呼び出されたのでしょうか?」

軽い用件であれば屋敷でいつでもできるはず。わざわざ外を指定した理由が気になりました。

私がそう切り出すと、ティム先輩は張の度合いを強めました。

「屋敷だと、他の人もいるからな。今日はガーネットに伝えたいことがあるんだ」

本來であればドキッとする言葉ですが、ティム先輩は無自覚にこの手の言葉を使うので、いちいち戸っていてはきりがありません。

「伝えたいこととは、何でしょう?」

私とて馬鹿ではありません。ティム先輩は普段の言葉の端々に、私が離れる想定をした容を口にすることがありました。

「いつまでにどうする」とか「これなら王都のパーティーにっても問題ないな」など、私が他の誰かと組むことを想定しているようです。

おそらく、今から切り出される話も……。

「俺とガーネットが知り合ってもう數ヶ月が経つ。毎日一緒にいて冒険をしてきたがあっという間だったな」

「……ええ、そうですね」

まるで過去を懐かしむような表。今の彼の聲にはどこか寂しさのようなものが漂っていました。

「最初はアイスアロー2発撃っただけで倒れたりして、この先冒険者としてやっていけるのか不安だったんだけどな」

そう言って「ははは」と笑って見せます。

だけど、私は知っています。倒れた私を背負って街まで歩いてくれた彼の背中の溫もりを。

「だけど、最近のガーネットは強くなった。前衛としてはもう俺よりも強いくらいだ」

「すべてティム先輩の……あなた様のお蔭です」

その言葉ではっきりした。彼は今、私に終わりを告げているのだ。

妙に寂しそうなのも、妙に誇らしそうなのも、妙に優しい目で私を見るのも、妙に後ろめたそうな顔をしているのも……すべてそれで説明がつきます。

私はを噛みしめ、震えを抑えます。ここで悲しそうな表を浮かべれば、優しい彼が決斷を鈍らせてくれると知っているから……。

「どうやら、俺が何を言いたいかわかってるみたいだな?」

ですが、この強がりも彼には通用しませんでした。彼は話の容を當てられてしまい困ったような表を浮かべながら、テーブルの上に置いてあった小包を開き、中を私の前に出しました。

「このまま何も言わず、ずっとこの関係を続けて行きたいと考えなくはなかった。だけど、それはガーネットに対しても失禮だし、素晴らしい才能を持つ君の可能を潰すことになってしまう」

目の前に置かれているのは、私が彼に関わり続けられる免罪符。

「だから、一度この関係を終わらせるべきだと思ったんだ」

次に彼が決定的な言葉を口にした瞬間、私たちの関係は終わりを迎える。

「遅くなってしまってすまない。貴重なアイテムを俺の命を救うために使ってくれてありがとう。これは返すよ」

テーブルの上で『エクスポーション』のった瓶が輝いていました。

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