《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》パセラ家の教育
【名 前】フローネ
【 別】
【年 齢】16歳
【技 能】料理・家事全般
【特 記】純潔
【最低札】金貨200枚
掲示板にはそのように書かれている。
俺は瞬き一つせず固まっているガーネットに、何と聲を掛けるべきか悩んでいると……。
「ティムさん、この方ってあのフローネさんでしょうか?」
俺の方を向いた彼は揺しており聲が震えていた。
「わからない。フローネなんてよくある名前だし」
俺は彼にそう答え、改めて掲示板を見る。
技能の『料理・家事全般』という部分が引っかかる。俺たちが知るフローネが得意としているものだからだ。
「ど、どうにか確認する方法はないのでしょうか?」
ガーネットが服を摑んで質問をしてくる。
掲示板の説明には『オークション奴隷につき面會不可』と書かれている。
おそらくオークションに掛けられている高額奴隷には接制限のようなものが設けられているのだろう。
「俺たちじゃあ無理かもしれないけど、君のお父さんなら報を得られるんじゃないだろうか?」
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俺は思い付きを述べた。
人脈もある上、貴族としての地位も高い。パセラ伯爵なら報を得られる可能は高い。
「……なるほど、早速家に戻りましょう」
彼は慌てると、先程の劇に激していた余韻もなく、俺の手を引っ張って屋敷へと戻るのだった。
「頼まれていた件だが、調べがついたぞ」
翌日の晩餐の席で、パセラ伯爵は俺とガーネットにそう告げた。
「お父様。やはり本人だったのでしょうか?」
フォークとナイフをテーブルに落とすと、ガーネットは椅子から立ち上がり、パセラ伯爵の方を向いた。
「ガーネット、食事の席です。マナーがなっていませんよ」
伯爵夫人はナプキンで口元を拭うと、ガーネットに注意をした。
「で、ですが……」
確かに彼が慌てる理由はわかる。ガーネットが助力を求めて俺を見る。
「落ち著いて、座って話を聞こう」
俺がそう言うと、彼は不満そうな顔をしつつ椅子に座り直した。
「調査依頼の結果を読む限り、奴隷のフローネとやらは、二人が探している人で間違いないだろう」
「それは、どうして斷定できたのですか?」
なまじ焦っているガーネットより良いかと思い、俺はパセラ伯爵に斷定できた拠を聞いてみる。
「奴隷になる前の職歴を調べてみた。彼は乗合馬車の料理擔當やレストランでの調理補助などの仕事をしている。働いていた場所、外見、時期まで一致していた」
そこまで一致しているのならまず間違いないだろう。
「一、どうして彼が奴隷に……」
ガーネットは絶した表を浮かべると、ポツリと呟く。
笑顔で俺たちに料理を手渡してくれたフローネの姿が浮かんでくる。
「どうやら借金をしたらしいんだが、し妙な部分がある」
そこについても調べがついているようで、パセラ伯爵が眉を寄せて調査結果を見ている。
「妙な部分? それは一どんな?」
「普段の彼を知る人間に話を聞いたところ、彼は慎ましい生活をおくっていたらしく、とても高額の借金を抱えるような人間ではなかったと」
その容に俺は頷く。俺とガーネットが知っているフローネは、料理が大好きで、自己研鑽をする努力家だったからだ。
「でも、そう見せかけておいて、実は裏で金を使い込んでいたのではないでしょうか? ブランド品に、寶石など。この手ので持ちを崩すは多いのですよ」
ところが、伯爵夫人は別な意見を述べる。
彼は彼で多くの人間を見てきたのだろう。
確かに人には様々な面が存在しているので、フローネとさほど付き合いがあったわけではない俺たちの印象を正にして考えるべきではないだろう。
彼がどのような人であるかは重要ではない、今注目すべきは……。
「ティムさん!」
ガーネットが俺の名を呼ぶ。彼の顔を見ると真剣な目で俺を見ていた。
「私、フローネさんを助けたいです」
彼の熱意が伝わってくる。短い付き合いながらも、ガーネットとフローネは仲の良い友人だった。
俺はガーネットに返事をしようと口を開くのだが……。
「ちょっと待て、ガーネット」
「何でしょう? お父様」
パセラ伯爵が言葉を遮った。
「調査によれば『金貨100枚の借金による奴隷落ち』となっている。本人の自業自得かもしれないのに、お前は個人的な理由で冒険者仲間を巻き込むつもりなのか?」
パセラ伯爵はそう言ってガーネットを嗜めた。
「確かにティム君は冒険者として優秀だ。それは私も認めよう。そして、彼はお前に甘い。お前が頼みごとをすれば斷ることはないだろう」
思っていたよりも高評価を得ていたことに心嬉しくなる。パセラ伯爵は言葉を続ける。
「大金しさに無茶をして戻らなくなった冒険者を私は知っている。お前の我がままのせいでティム君を死なせるつもりか?」
フローネの最低落札価格は金貨200枚。途方もない金額だ。
もし、ガーネットの頼みを聞いて狩りで稼ぐとすると相當な無茶をしなければならないだろう。
「で、ですが……。奴隷となると……買い上げた人次第では……その……」
彼は顔を赤くして言い淀んだ。
俺たちはガーネットが言わんとしていることを理解する。
國が管理する以上、奴隷にも一定の人権は與えられている。合意を得ない行為の止や犯罪行為の強要などがそれにあたる。
だが、その手の話にはいくらでも抜け道が存在している。
行為に関しては『自由』と言ってしまえば問題はない。実際に、奴隷との間に絆が芽生えた例も存在しており、國も認めているからだ。
どこからが本當の自由で、どこからが強要になるのかわからない以上、周囲が咎めることはできない。
フローネは見目麗しいなので、落札者が男の場合、高確率でその手の行為を迫られるのは間違いないだろう。
「そ、そうです! でしたら、家の奴隷として買い上げたらどうでしょうか?」
フローネがそのような目に合うのが耐えきれないのか、ガーネットは顔を上げると伯爵夫人に提案する。
「確かに、もうじき家の奴隷の二人が結婚するので解放する予定です」
長年勤めた奴隷を祝い事とともに解放する習わしがある。
もうじき、二人の奴隷がいなくなるので、後釜にとガーネットは提案するのだが……。
「家が買っている奴隷は高くても金貨50枚です。縁もゆかりもない他人に金貨を積むつもりはありません」
「そ、そんな……」
はっきりと斷られたガーネットはショックをけた。
「ガーネット、貴は自分の意志で冒険者になったのでしょう?」
「……はい」
「だったら、実家を頼らず、自分の力でどうにかしてみなさい」
伯爵夫人の言葉に打ちのめされたガーネットは、食事もそこそこに部屋へと引き上げて行った。
「家の娘が申し訳ない」
「ティムさんは気にしないでくださいね」
パセラ伯爵と、伯爵夫人が揃って頭を下げる。今回の件については娘に対する教育の一つなのだろう。
「いえ、気にしないでください」
二人の謝罪をけれた俺は、
「ところで、二人に頼みごとがあるのですが……」
Duty
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