《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》ニコルの売買

『それでは、次の奴隷になります』

『金貨150枚!』

『金貨155枚!』

『金貨158枚!』

『くっ……!』

『他にいらっしゃいませんか……? 32番の客様。金貨158枚での落札となります。支払い・引き渡し、奴隷契約に関してはオークション終了時に順次行いますのでお待ちください。おめでとうございます』

先程から何度も奴隷が落札されていくさまを、俺とガーネットは見ていた。

同じ”人間”が売買されていることについて、思わないところがないわけでもないのだが、奴隷を扱う商売はあくまで救済活の一つなのだとパセラ伯爵に教えてもらった。

貧困差や飢饉など、放っておけば食うに困って飢え死にするしかない民衆も存在する。

奴隷になることで家族も食い扶持を減らすことができ、結果として多くの命が救われる。

それどころか、奴隷になれば食住が保障されるので貧しい家では奴隷商に頼み込んで子どもを売る親などもいる。

中には、非人道的な扱いをける場合もあるのだが、元々の生活基準が低かった人間にしてみればそれ以上の底はないので大した違いはない。

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あくまで、俺の的に納得できていないだけで、奴隷制度は必要なのだろう。

ふと溫もりを右手にじる。橫を見るとガーネットが自分の手を重ねてきていた。

「きっと、あの奴隷さんも、良い主人に巡り合えると思います」

「ん、そうだな」

俺の心が複雑なのを見抜いたのか、ガーネットが微笑みかけてきた。俺はそれですこし救われた気分になった。

「それより、ここまで他の連中がく様子が見られない」

意識をオークションへと戻す。

オークションに參加する際、事前に各ギルド口座の殘高証明を提出する必要がある。

自分の貯蓄額を提示することでその金額まで札することが許されているのだ。

これは、參加者の元を保証する意味もあるのだが、落札しておきながら後になって支払えませんなどとゴネるオークション荒らしを排除するためだ。

どこにでも橫暴な連中はいるらしく「思っていたよりも殘高がなくて買えない。すまないなー」など故意ではないと主張する質の悪い者も存在するらしく、頭を抱えた奴隷館側がこのルールを必須とした。

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クランや商會の人間であれば、個人口座ではなく商用口座を曬しているのだろうが、自分たちの財産のすべてを曬すのはあり得ないだろうから、口座にっているのは、あらかじめオークションで使う予定の金額までだろう。

要注意人たちには他の奴隷を買ってもらい、資金を削ってしかったのだがそうは上手くいかないようだ。

「あの方たちもやはり後半に狙いがあるのではないでしょうか?」

高額の奴隷程、出番が後に回されている。

これまで、彼らが他の奴隷に見向きもしなかったことから考えても、狙っている奴隷がいるのは明らかだ。

嫌な予がする。相當な金を用意してあるつもりだが、彼らが相手はでは準備不足かもしれない。

そんなことを考えていると……。

「「「「わっ!」」」」

會場が盛り上がりを見せた。

『次の商品は……元Aランク冒険者にして、闘技大會で準優勝したニコル。ちなみに彼は犯罪奴隷となりますので、購時に幾つかの行制限があります。そのことを踏まえての札をお願いします』

「あの方は……」

ガーネットが俺の手を強く握りしめる。まるで親の仇を見るような目をしてニコルを睨みつけていた。

「ガーネット」

呼びかけると彼が振り向いた。

「俺のために怒ってくれるのは嬉しいけど、手が痛いから力を抜いてくれ」

冒険者としてダンジョンに籠っている間に差がついたのか、筋力は彼の方が高い。

「あっ、申し訳ありません」

が頭を下げていると、

『それではアピールをどうぞ』

司會がニコルに促した。

「私は、王都で五年冒険者として活躍してきた。貴族や商人の護衛やダンジョンでの探索まで、非常に有用だと自負している。もし買ってくれたら必ず役に立つことを約束しよう」

ニコルが必死に訴えかける。

これまでの実績があるので、すぐに札がるのかと考えたのだが……。

『んー……。でもおらしはちょっとなぁ』

『あの失態を見た後だとね』

『購したら我が家の品格が疑われますわ』

商人や貴族の反応は冷めたものだった。

まるで汚を見るかのようにニコルへと視線が注がれている。

「なっ! それはっ! ちがっ……!」

焦って言い訳を述べようとするニコル。

「どうやら、これまでのオークションでも札がなかったため、最低落札金額が下がった狀態のようですね」

闘技大會で癡態を見せたニコルは、商人や貴族といった裁を気にする參加者からの評価がすこぶる悪いようだ。

狼狽えたニコルは誰か買ってくれないかと思ったのか、こちら側を見渡す。そして……。

「お、お前はっ!」

俺と目が合うと睨みつけてきた。

奴と俺の因縁は複雑で、命を奪われかけたので俺も良いは持っていない。

「おそらくですが、今回で買い手がつかなければ犯罪奴隷の彼は過酷な土地での開墾を強いられることになるのでしょう」

ガーネットが耳元で囁いた。

『頼むっ! 誰か買ってくれっ!』

俺を見返したいのか、このまま未開の地に送られるのが嫌だからか、ニコルは必死な様子で參加者に呼び掛ける。

俺たちはそれをじっと見ていると……。

『気にったわ。金貨50枚で札よ』

例の変態貴族婦人が札してきた。

「や、やったぞ!」

ニコルの表に笑みが浮かぶ。最悪の地獄から出できたことが嬉しいのだろう。

「ふふふふふ、あれだけ強い人間が私のペットに躙されてどんな聲で鳴くのか今から楽しみだわぁ」

「へ?」

ニコルの目が點になる。

恍惚とした表を浮かべる貴族婦人。彼に関しては既に醜聞知れ渡っているので裁など気にする必要がなかった。

「ふむ、確かに活きがよいな。この前の実験は壊れてしまったし、ここらで仕れておくか。金貨60枚!」

怪しい実験を行っている錬金士の男も興味を惹かれた様子で札をしてきた。

「奴隷は貧弱な者が多く簡単に壊れてしまうが、元Aランク冒険者なら丈夫なのだろう? これまでできなかった苦痛を伴う実験が捗りそうだ」

「は?」

ニコルの口が開いたまま震える。

「ふぅむ、良い戦力になるかと思って見に來たが、どうだ?」

「私の見る限り、力を落としているようですね。あれではAランクは怪しいです。今回は見送るのが正解かと」

Aランククランの二人がニコルを見てそんな會話を繰り広げている。

無理もない、ニコルの職業は『パラディン』から『見習い冒険者』へと変更済みだ。

これまでの職業補正がないので弱くなっているという印象は間違いない。

そうこうしている間にも変態貴族婦人と狂錬金士が札を繰り返していく。

未開の地以上の酷い扱いが約束されているニコルは次第に表が青ざめていくと……。

「た、頼むっ! 助けてくれええええええ!」

俺に向かってんできた。

先程、買われていく奴隷たちをみて「良い主人に出會えるように」と祈った俺も、流石にこれにはし同してしまう。

「ティムさん。救うべき対象を見失ってはいけません」

決して買えないわけではないが、ここでニコルを買ってしまうとフローネを救うことができなくなってしまうかもしれない。

「すまないな」

俺は奴に伝わるように右手を上げてみせる。

『金貨97枚。他にありませんか? それでは45番のお客様が落札されました。犯罪奴隷の取り扱い事項の説明がありますので、オークション終了後にお越しください』

「ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

狂錬金士に落札されたニコルはそのまま床に頭をこすりつけてび聲をあげるのだった。

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