《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》フローネの売買

「ひとまず、他の參加者の目的がニコルだとわかったのは良かったな」

狂錬金士も、変態貴族婦人も、クランの団長たちも、ニコルを見に來ていたことが発覚した。

他の參加者たちも萬遍なくオークションに參加しているので、フローネを狙っている參加者がいたとしても競合相手は數組に絞られるだろう。

の嫌な予が外れたことに俺がほっとしていると、次の奴隷が舞臺へと連れてこられた。

『それでは次の奴隷になります。技能は家事全般になりますが、真の価値はこの整った容姿と素晴らしいプロポーション。許されるなら私が落札して々と奉仕をさせたい。借金により奴隷になったフローネです!』

參加者の劣を煽る言葉を司會は口にする。

事実、何人かの目のが変わり、厭らしい視線を彼へと向けた。

『それではアピールをどうぞ!』

會場中が靜まりかえり、フローネが口を開く。

「私は、與えられた仕事がなんであれ主人様にお仕えする次第です」

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以前、楽しそうに料理について語った彼の面影はなく、どこか諦めにも似た表を浮かべている。

そんな彼の言葉を「的な奉仕も問題なし」とけ取ったのか、數名の參加者が札を開始した。

『金貨200枚!』

『金貨205枚!』

『金貨215枚!』

『…………!』

先程のニコルの時とは大違いだ。會場が大いに盛り上がり始めた。

「ティムさん。早く札しないと!」

ガーネットは焦ると俺の腕を摑んできた。

「いや、ひとまず彼らの札が落ち著くまで待つんだ」

このくらいの値上げは想定だ。値上げ幅の低さから考えてもこのままなら金貨300枚程で止まるだろう。

パセラ伯爵にオークション參加の際のテクニックとしてレクチャーをけたのだが、落札するコツは札がいったん落ち著き靜まり返ったタイミングで高めに被せることだと聞いている。

今のところの値上げ幅が金貨5枚単位なのでその5倍の25枚も上乗せしてやれば、余程その奴隷に固執でもしていない限り引き下がるとのことだ。

しばらく様子を見ていると、

『……金貨310枚!』

『金貨……315枚!』

勢いがなくなってきた。ガーネットと目を合わせ、そろそろかと頷き手を挙げて參加しようとしたところ……。

「金貨400枚だ! ぐふふふふふ」

「わあああああああっ!」っと會場が湧いた。

札したのは會場中央の席に座る太った男だ。

「あの方は……」

「知っているのか、ガーネット?」

「ええ、王都で商會を経営しているメタボという男です。ライバル商會にゴロツキをけしかけて嫌がらせをしたり、綺麗なを見かけては言い寄ったり、あまり良い噂を聞かない相手です」

ガーネットは嫌悪を出しながら俺に説明をした。

「どうされますか?」

一気に金貨85枚も上乗せしてきたメタボのせいで、こちらの計畫が崩された。

ガーネットから聞いた噂話が本當なら、やつが落札した場合、フローネは間違いなく不幸になるだろう。

「ここで引くくらいなら、最初から救うなんて言葉にしない」

「それでこそ、ティムさんです」

俺は挙手すると、舞臺の司會に聞こえるようにぶ。

「金貨500枚!」

「なんだとっ!」

誰も札しないと思っていたのか、メタボが目を見開きこちらを見た。

敵意が籠ったその目を俺は正面から見返す。

『おおっと! 本日最高価格が出ました! 98番の客様は初參加です! これは他の客様も負けてはいられないか?』

オークションを煽りたいのか、司會が余計な一言をそえる。

「おのれっ! 邪魔をしおって! 金貨520枚!」

「金貨550枚!」

メタボの札に俺は間髪れずに被せる。絶対に引くつもりはないという意志を示して見せたのだ。

「金貨570枚!」

「金貨600枚!」

「くそっ! 金貨640……いや、700枚だ!」

とうとう100枚の値上げをしてきた。會場の盛り上がりが本日最高を迎えた。

あまりにも途方もない金額に、俺は一瞬黙り込んでしまう。

『さて、現在の札は金貨700枚です! 他にありませんか?』

もちろんこのままで終わらせるつもりはない。いくら被せればメタボの心を折ることができるか、俺が考えていると……。

「もうおやめください!!」

フローネがんだ。

「これ以上、私なんかに無駄なお金を使うことはありません」

その言葉は俺とガーネットに向けられていた。

聡い彼は俺たちがオークションに參加している理由を察したのだろう。

「ティムさん」

ガーネットが袖を摑む。俺は彼に頷くと……。

「金貨1400枚だ!」

『『『『『『わあああああああああああああああああああああ!!!』』』』』

次の瞬間、會場が壊れるのではないかという程の聲が響き渡った。

『おおおおおおおっと! 凄いぞっ! まさかの倍額の札だ! これは決まったか⁉』

會場の期待が俺とメタボへと集中する。

「くそおおおおおおおおっ! 金貨1500枚だあああああああっ!」

『『『『『『わあああああああああああああああああああああ!!!』』』』』

「くっ!」

さらに被せてくるメタボ。今度は俺の方が追い詰められる。

、やつはどこまで積んでくるつもりなのか、上限が見えなくなったからだ。

「ティムさん!」

ガーネットが腕を握り締めてくる。彼張しているらしく、手が震えていた。

「こうなったらいけるところまで行くしかない……」

用意してある金貨にも限界がある。だけど、ここで諦めたらフローネは……。

俺が、再度札しようとしていると、舞臺袖から男が出てきて司會に耳打ちした。

『オークションが盛り上がっているところ申し訳ありませんが、一端中斷をさせていただきます』

ほっと息を吐く。一度冷靜になる時間がもらえたのはでかい。

俺たちは視界の言葉に耳を傾けた。

『ただいまの、7番の客様の札は無効となります』

「なんだとっ! なぜだっ!」

目を大きく見開き、メタボが司會に怒鳴りつけた。

司會は言葉を続ける。

『詳細な金額をお伝えするとこの後のオークションに影響があるので申し上げませんが、7番の客様が提出した口座上限を超えてしまったからです』

「なっ!」

オークション參加者はあらかじめ札上限を運営側に提示している。メタボの予算は今の俺の札額より下だったらしい。

「馬鹿なっ! 金ならあるっ! 私の商會には何十萬枚もの金貨があるんだぞっ!」

『規則は規則ですので……』

例外を認めてしまえば他の參加者に示しがつかない。司會はメタボの言葉をれなかった。

「誰かっ! 私に金を貸してくれっ! 後で必ず返すっ!」

焦ったメタボは周囲を見渡すのだが、その場にいた人間は顔を逸らした。

彼らの中にはメタボの商売敵もいるのだろう。札できずに狼狽えているメタボにたいして失笑している者もいた。

『他に、どなたか札される方はいらっしゃいませんか?』

俺とガーネットは手を握り締め、その瞬間を待つ。

『それでは、98番の客様が金貨1400枚での落札となります!』

「そんな……ばかな……、せっかくここまで……」

何やらぶつぶつと呟いてメタボがうなだれた。何と言ったのかはわからないが、呆然とした表を浮かべている。

「やりましたね。ティムさん」

「ああ、良かったな。ガーネット」

想定していたよりも高い落札になったが、フローネを助けられたことに安心した俺は息を吐くのだった。

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