《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》知らない世界の宇宙人

「あの……さっきから気になっていたのですが、この本、見てもいいですか?」

そうめんを食べ終わって皿を洗っていたら、機の上に積んであった本を滝本さんが見ていた。

んん? ちょっと待ってくださいね。

私は皿を置いて高速で移して何の本か確認した。

なにしろ私のメインジャンルはBLなので、あまり見られたくない本も存在する。

でも滝本さんが見ていたのは

「ああ、民族裝の本ですか。どうぞ。お好きなんですか?」

滝本さんはありがとうございます……と本に手をばした。

たしか數日前にAmazonで買った本で、9割が寫真のしい本だった。

民族裝はの使い方とか派手で參考になる。

しかし、今日から滝本さんがくるのだから、本をし移させておけば良かったなと思う。

私はまず、本を買ったら機に積む。

積んでおくと、食事をしながら、掃除の隙間に、眠くなったら、手がびて読む。

また買うと、その上に積む。そして巨大タワーが出來上がる。

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置き場が無くなってきたら、下の方を抜き取って一階の奧にある書庫という名の置に移する。

全く見ないで積むより効果的だと自負しているので、変更はしたくないシステムだ。

まあ滝本さんは基本的に二階で生活するから、このリビングにることはあまりないと思う……が、初日から座っているので、もうちょっと片づけよう。

滝本さんは本を見ながら

「俺が推しているアイドルは宇宙人なのですが」

と言った。

んんんんん? ものすごく面白い言葉を聞いたと思う。

私はとても興味をもって滝本さんの前の椅子に座った。

「設定が……ですよね」

「そうですね。地下アイドルなのですが、5人組で、宇宙のんな星からナンバーワンアイドルが集まり、地球に侵略に來ている設定です」

「ものすごく面白いですね」

私は滝本さんの話に食い気味で顔を突っ込んでしまった。

私のアイドルの知識は前田敦子で止まっている。この前シンゴジを見ていたら元気に逃げてて安心した。

つまり知識が古すぎて、アイドルの設定がそこまで進んでいると知らなかった。

滝本さんは

「俺は地球結軍(ちきゅうれんけつぐん)として、和平渉も出てるんですけど」

「ガンダムSEEDなら推しはアスランですけど」

私はとりあえず答えた。

「劇場版を今も楽しみにしてます……ではなくて、それは地球連合軍(ちきゅうれんごうぐん)ですよね、俺たちのアイドル……デザートローズでデザロズって言うんですけど、デザロズを応援するための集団というのが公式でありまして。それが地球結軍(ちきゅうれんけつぐん)という名前なんです」

「ちょっと待っててください」

完全に混してきた。

私は考えがまとまらなくて、でもちゃんと理解したくて、仕事場から大きなスケッチブックを持ってきた。

これはスケッチブックの最大サイズで、考えをまとめたい時に使うものだ。大きな紙に毆り書きをして最後俯瞰でみると、々なことを冷靜にみられる。

そこにデザロズと書いて、スマホでググる。

出てきたのはオレンジや黃……とりどりの裝をきた可の子たちだった。

なるほど。私は一人ずつ書いていく。

『のんちゃん』……お嬢様タイプの前髪揃ってて人タイプね。サラサラと書くと今度は滝本さんが「おお……」とを乗り出してきた。

一応大出てるので、似顔絵は得意なんです! めっちゃデフォルメしますけど。

それで5人書いて

「この5人は宇宙人なんですよね」

「そうです。いつもライブの冒頭に宇宙船ローズ號で會場に來て、俺たち結軍が迎え撃つ……という設定でライブをしています」

「ほうほう」

私は反対側に滝本さんに漢字を聞きながら『結軍』と書いた。で結ばれる軍隊なんて……素敵な言葉。BLに使えそう。ふーん……となんとなく脳に保存した。

「ライブが終わるたびに、和平渉という集會がありまして」

「え? それはライブが終ってから話すの? ファンだけが?」

そんなの聞いたことが無かった。

うちら腐子でいう所の、アフターみたいなものだろうか。

でもあれはただの飲み會というか、を眠気と戦いながら食べる會だ。

滝本さんは靜かに首を振って

「ファンだけじゃないんですよ。デザロズの事務所の社長……まあ、俺たちは提督と呼んでいますが、提督も見えます」

社長さん?! ていうか、なるほど。戦艦の偉い人だから、提督。

「今地下アイドルって、そんな風になってるんですか」

「デザロズは特殊です。だからハマってるのですが。規模が小さい、熱心なファンがいる、提督にアイドルを改革していきたいという熱意があるグループだからだと思います」

「すごいカッコイイ……!」

そんなファンと運営が直接つながっていて、意見を換できるなんて楽しすぎる。

私に褒められて滝本さんはし嬉しそうにほほ笑んで

「それでですね、俺はデザロズの裝って……し面白みがないと思っていて」

「ああ……なるほど」

私は再び寫真をみた。

なんというか普通のアイドルの裝なのだ。頑張って言葉を探せばセーラームーン……プリキュアまでたどり著けて無い気がする。

ただ分けしているだけの裝で、あまり宇宙人がない。

「でも裝って、お金もかかるし、やはりダンスもあるから、簡単じゃないんですよね?」

私がいうと滝本さんは深く大きく頷いて

「その通りなんです。奇抜な事ばかり追った結果、舞臺上で裝が破れてしまったり、壊れてしまったりすることは多々あります。しかしきやすさのみを追求することは、歌と世界を作り上げるアイドルとして、どうしても手抜きにじてしまうんです。せっかく作り上げた世界観で俺たちも地球結軍の制服のデザインを考え始めているので、それを次の和平渉の議題に……と思ってまして」

オタク特有の早口連続トークだが、私も推しを語る時は、なんなら立ち上がるので同じようなものだ。

「それで民族裝の本に興味を……?」

「そうですね、やはりある程度はきやすさを意識して作られているんだと思うんです、民族裝は。知っていますか十二単はたった二本の紐で結ばれているだけなんです。利便も兼ねている。デザロズももっと學んでいくべきだと思うんです」

「何かの參考になるなら、どうぞ持って行ってください」

私は滝本さんに本を手渡した。

「ありがとうございます」

滝本さんは本を抱きしめた。

全く知らないジャンルの話を聞けるの、めっちゃ面白い。

私はこういう話、大好きだ。

「滝本さん、デザロズさんの曲、聞かせてくださいよ」

滝本さんの表がパッ……と明るくなる。

「ぜひ見てください。先週のライブがYouTubeに上がってるんです」

スマホを取り出してYouTubeを立ち上げるが……データが來ない。

いつまでクルクル……映像が始まらない。

「すいません相沢さん……この家のWi-Fiのパスワードを教えて頂いていいですか」

「あーー! すいません、うち4Gギリギリなんです、今寫メって來ますね!」

まだそんな基本的な事も話さずに、オタトークしてしまった。

私は本に埋まっていたルーターの裏を寫メって滝本さんに見せた。

そして「もっと早い回線にしたいなあ……滝本さんもそのほうがよいのでは……?」と考えて楽しくなった。

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