《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》銀河鉄道の夜(滝本視點)
満ちの時に、人はたくさん生まれると聞いたけれど、引きの時に人はたくさん死ぬのだろうか。
俺はぽっかりと闇夜に浮かぶ満月を見て思った。
その満月の左下、キラリとの筋が見え始めた。
「きた……」
俺はスマホで配信を流しながら窓を全開にして、流れるをずっと見ている。
推しののんちゃんは、switchのテトリスにハマっていて、現れる挑戦者たちと戦う配信をしている。
お嬢様キャラだし実際そうなんだけど、本気でぶ姿を見ながら「もっとギャップキャラ押していけ」と思ってしまう俺は、もうアイドルをお父さん目線で見ていると思う。
いや、もちろん可くて大好きだけど。この可い人を世間に知らせたい気持ちが大きい。
「お、反対側からも來た」
暗闇を駆け抜けていくの筋……それは電車だ。
この辺りは山の中で、民家も多くない。だから夜23時にもなると、真っ暗闇の中をが走り抜けているように見える。
まるで銀河鉄道の夜だ。
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ここに住むなら、家賃3萬円で良いというので驚いた。
相沢さん曰く、固定資産稅が年間50萬円ほどかかるので、その負擔だけで良いのだと言った。水道熱費は完全に折半。
俺は普通に都のマンションに住んでいたんだけど、グッズやCD、作曲用の小さなピアノとかPCやカメラ用の冷蔵庫が占拠しはじめて、ベッドを置けなくなっていた。
だからこんな広い部屋に住めてたら嬉しい。
都心のマンションは劇場やイベントに行くのは便利だったけど、この家から自転車で數キロ走れば特急電車が止まるので、都へのアプローチは恐ろしく良い。
反対側に降りたら、橫浜方面へのアクセスは楽になる。
通費節約のために乗っていたロードバイクが、ここで使えそうだ。
「すれ違う」
俺はずっと闇夜を走る電車を見ていた。
右側から出たの筋と、左側から來たの塊が、闇を引き裂くように走りすれ違う。そして左右に広がって消えていく。
まるで流れ星のようだ。
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このまま宇宙に飛んで行ってもおかしくない。
スマホの配信から流れるのんちゃんの明るい聲と、しい景を、俺はぼんやりと見ていた。
正直とても癒される。
相沢さんが「とりあえず同居しませんか?」とれてくれた部屋は、なんと2DKほどの広さがあった。
俺が今いる電車が見えるリビング。そして簡単な臺所。
廊下を挾んで畳の部屋と風呂とトイレ。完全に一世帯が住める広さで、一階を見せてもらったら、二階より広かった。
坂を登る価値、あると思う。
俺はお茶を一口飲んで窓際に肘をついた。
一階で相沢さんが生活しているのだが、さっきから話し聲がする。
たぶんこれは作業イプというものだと思う。アプリを立ち上げて話しながら共に作業することを言う。お互いを監視しあうと進みが良いのだろう。
このコマは……とか、ベタだけでも終わらせない? とかそんな言葉が聞えている。
たまに楽しそうな笑い聲。相沢さん曰く、この周辺はもう誰も住んでいないらしく、なくとも両隣は空家。
ちなみに隣の空家まで20mくらいある。本當に東京だろうか。まあ川ひとつ挾んだ先は神奈川だから、し違うのかもしれない。
「だから好きに歌ったり踴ったりしても大丈夫ですよ?」と言ってたけど、さすがに初日から大きな音は出せない。
……でもこんなに素晴らしい環境なら、音出して作曲はできるかもしれないなあ。
明日にでもパソコンをマンションから送ろう。俺は決めた。
「いやいや、このコマ、ヤバい、浮いてる浮いてる異次元に浮いてる」
下から相沢さんの笑い聲がする。なんか、良いなあと俺は思う。
俺の家は父親が小さい頃に亡くなり、母は保険の外員をして俺を育ててくれた。
必死に働いてくれたから、淋しいなんて絶対に言えないけど、ずっと家では一人だった。
朝起きたら母はいなくて、夕食もたまにしか一緒に取れなかった。
でもそのおかげで勉強に集中して、返済義務がない奨學金で大學にることが出來たけど……靜かな家がイヤだった。
だから笑い聲が響き、華やかな笑顔が見えるアイドル番組を流し、ボカロの曲を流していたのだと思う。
リアルな人の気配をじながら、ぼんやりするなんて初めてかもしれない。
兄弟がいる人たちを心底羨ましく思っていたけれど、こういうじかな。
いや、相沢さんは兄弟じゃなくて……好きな人だけど。俺は小さく思う。
流しそうめんも、さっきの臺所でのお話も、すごく楽しかった。
相沢さんは他人に対する線引きがしっかりしてる。それは會社での立ち振る舞いで知っていた。
そして今日一日接して、その思いは増した。
今日は初日だし、細かいルールの話し合いなどあると思っていたら
「ネーム書く時もそうなんですけど、最初から設定でガチガチに縛ると続かないんです。問題が出たら話し合いましょう。気軽に話しかけてください。気持ちや狀態を察してほしい……は無しでお願いします。私も何かあったらしっかり言います。何か連絡用にLINEの換はしましょう。あ、家では話しかけてくださいね。二度手間だと思うので」
二度手間。
ものすごく冷靜で、人として面倒じゃない。
やはり俺の選択は間違っていなかった。
「さてと」
俺は相沢さんからけ取った生協のカタログを開いて、部屋の電気を明るくした。
どうやらさっきのが終電だったようで、今日は銀河鉄道の夜、終了のようだ。
だから注文するものを選ぼうと思う。
ここに自転車で登りながら思ったんだけど、食料品の調達が本當に厳しいそうだ。
し重たい荷を持っていたら、自転車で登るのは無理だと思う。
しかし俺が自転車で登っている時に、カートなど荷を持って歩いている人は居なかった。
ちなみにバスは一時間に1本。使い勝手が悪すぎる。
どうしているのか聞いてみたら「生協に宅配を頼むんです、週に一度、どっさりと。足りないをちょいちょい駅前で買うんです」と相沢さんは分厚いカタログを渡してくれた。
ちなみにページが折ってあったのは、レンジでチンしたり、溫めれば食べられる魚シリーズ。
つまり相沢さんは「趣味が一番大切で食事は食べられればそれでよい」人なのだろう。
正直俺もそれは同意見だ。
日々の食事に凝る必要はない。
でも料理は全然嫌いじゃなかった。
話し合った結果、今日みたいにタイミングがあったら一緒に食事をしようということになった。
相沢さんは言った。
「でもすいませんが、毎週水曜日は一緒に食事とか定期的な事は無理だと思います。原稿の締め切り次第なので。お互いにタイミングが合えば……にしましょう。作ったのに帰って來ないとか、が無駄だと思うんです」
「が無駄」
気が付いてるけど、相沢さんは言葉のチョイスが面白い。
でも確かに、勝手に期待して勝手に落ち込むのは、が無駄だ。
「何か頼みたかったら、ここにログインして力してください。これがアドレスとパスワードです。家用に変更しました。何も買わないなら、それでいいです。毎週土曜日締め切りです」
と相沢さんはLINEにNOTEを作って書き込んでくれた。ちなみに相沢さんは毎週同じものを買っているらしい。
なるほど、分かりやすい。そういうルーティーンの一部として使うのは便利かもしれない。
一緒に何か作るなら、駅前に一緒に買いにいって作ったほうが良さそうだ。
「……確かにこの煮魚、さんま1匹生姜煮でって230円……自分で作るより安い」
俺は頷いた。
サンマ一匹普通に買っても150円。そこに生姜と熱費考えたらお得だ。
俺も相沢さんが注文している魚シリーズを頼むことにした。
ああ、気楽すぎる。
一階からは相沢さんの笑い聲が響いて來る。
會社では聲を上げて笑ってる所とか見た事ないから、新鮮で嬉しい。
そういえば明日は一緒に會社行くのかな……と思って、絶対一緒に行かないな、と思い直した。
そういう所が好きなんだ。
完全自立型子。
でもものすごくの人だって知っている。
カタログをけ取った時に手からふわりと良い匂いがして、めちゃくちゃドキドキしてた。
好きなの人と一緒に暮してるんだな……。
俺はヤバ……と小さく呟いて、その場でころころと転がった。
正直とても嬉しい。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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