《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》初めて一緒に帰る夜(滝本視點)
「なるほど。それは急事態ですね」
俺は相沢さんから話を聞いて理解した。
ドルオタの俺で言うと、握手するために大量に買った同じ寫真が詰まっているアルバムを、相沢さんの母親に見られるようなものだろうか。
想像するだけで恐ろしい。もし見られたら永遠に會いたくない。
絵里香ちゃんは普通に會うと、お嬢様學校に通っている大人しい高校生だ。
だから、趣味は公にしたくないだろう。
俺はすぐに絵里香ちゃんにLineを打とうと立ち上げたが、なんと打つべきか悩む。
すると相沢さんが俺の前に一歩進み
「滝本さん、一緒に寫真を撮りましょう。私は右手にUSBを持ちます。それを送れば、全て理解できると思います」
「なるほど」
俺はスマホのカメラを回転させて相沢さんに一歩近寄った。
相沢さんも俺の橫に近づいてきた。髪のがふわりと俺の頬にれた。
そしてシャンプーだろうか、化粧品だろうか、嗅いだことがない高貴な匂いがして、心臓の音が中に響いた。
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悟られないように口の息を止めて、靜かに鼻呼吸する。
さっきニンニクがったおを食べてしまったし、至近距離は張する。
相沢さんはプレビュー畫面を見て不満げに
「ここまで暗いと、さっき會った私だと分かりにくいですね。せめて外燈の下に行きましょう」
俺たちはを求めて移する。
よく考えたら、二人で撮る最初の寫真だ。
なんだか嬉しくて、撮った寫真は保存しておこうと決めた。
俺たちは外燈の下で寫真を撮りなおしたが、相沢さんの表は暗い。
「自撮りなんて何年もしてないから……自分の顔見るとイヤになりますね」
と自的に言うので
「いえ、全然、問題ないと思います」
と仕事のように言ってしまった。しかし本當に相沢さんはキレイに寫っている。
相沢さんは寫真を見て
「滝本さんのほうが寫真のうつりかた、上手ですよね」
と言うので俺は真実を伝えることにした。
「大きなイベントだとアイドルと一緒に寫真が撮れるんです。だから自撮りはわりとしますね」
「あ~~なるほど~~。それで磨かれてる技なんですね。持ってて損はないですね。しかしほんとフォトショで直したい顔……じゃなくて、これで良いと思います。送ってください」
相沢さんの指示通り、俺は寫メを絵里香ちゃんに送った。
一度だけ俺と母さん、橘さんと絵里香ちゃんで食事したことがあり、そこで社儀禮的に換したものだ。
送るとすぐに既読になり、一瞬で電話がかかってきた。
『滝本さん、これって……!』
今まで聞いたことがない慌てた聲だ。
俺は靜かに
「USBを持っている人に電話を替わりますね。そのほうが分かりやすいと思います」
とスマホを相沢さんに渡した。
「もしもし? さっきコピーショップで會ったです。えっと終電もあるし、とにかく會いましょう。どこまで出られますか?」
さすが相沢さん、行のスピードが速い。
絵里香ちゃんは高校生ということもあり、夜遅くに遠くまで出ると父親に怪しまれるので、家の近くのコンビニまで持って行くことにした。
「驚きました……」
絵里香ちゃんはコンビニのイートインに座って待っていた。
「はい、まずUSB。間違いない……よね?」
相沢さんは絵里香ちゃんの橫に座った。絵里香ちゃんはUSBを強く握って頷いた。良かった……。
「お土産の袋にれたと気が付いてから、涙が止まらなくて。中を見られたら私一生滝本さんに會えないって。もうどうしようって……」
「小さいから逆に危ないのよ。部屋の鍵とかに付けておくと良いわよ。抜き忘れ防止にもなるから」
相沢さんは絵里香ちゃんに言った。
あまり遅くなると疑われるでしょう? と絵里香ちゃんを促し、店を出ることにした。
何も買って無いとバレてしまうので、俺はアイスコーヒーとまんを三つ買った。
「まん……?」
絵里香ちゃんは、それを手渡されて不思議そうな顔をしたが
「深夜に食べるまんって、味しいですよね」
と相沢さんは大きな口を開けて食べた。
好きなものが一緒で嬉しい。
俺は自然とコンビニでまんを買ってしまう。
溫かくて丸い優しい夜に優しい食べ。
俺たちはマンションまで歩きながら話す。
月が高い夜、影が長くびている。
「……母さんが家に來てほしくないんじゃないか……って心配してたけど……」
そう俺が聞くと絵里香ちゃんはまんをモグリと食べて首を振った。
「違うんです。もうバレてるから言いますけど、部屋が在庫の段ボールで埋まってて、滝本さんに見せられる狀態じゃないんです」
「ああ……。お母様が出りするようになって、全部部屋にれたの? 辛い……」
相沢さんは頭を抱えた。絵里香ちゃんは
「お父さんは私が同人誌を作ってる事を知っていて、勉強と両立することを條件に許可してくれています。……もちろんジャンルは知りませんが。でも滝本さんに知られるのは……」
「いや、隠したほうがいいよ」
相沢さんはハッキリと言った。
迷いなく澄んだ夜に深く、まっすぐ。
そして続ける。
「お母様は優しいから理解した顔をしてくれる。それは逆に辛いから。絶対隠したほうがいいと思う」
「!! そうなんです。なんか無理させてしまいそうで……」
俺は二人の會話を聞きながら『たしかに俺の母は無理して取り繕いそうだ』と思った。
相沢さんは
「服をね、外に出すの。段ボールから在庫を出してそこに服をれる。見られても良いからね。そして空いた裝ケースに在庫をれるの。紙袋とかに包んでね。見せて良いを並べて、見せたくないものを隠す」
「なるほど。やってみます!」
二人はTwitterのアカウントを換しあい、絵里香ちゃんは何度も手を振りながらマンションに帰って行った。
俺と相沢さんも電車に乗り、帰ることにした。
今日は々ありすぎて疲れてしまった。
駅前に停めていた自転車を出すと、置き場の前で相沢さんが待っていてくれた。
そんなことが驚くほど嬉しい。
これから俺たちは一緒に家に帰るんだ。
カラカラ……と自転車のタイヤが回る音と、俺たちの重なる足音。
初めて一緒に帰る夜。
それから數日後、仕事していたら母さんからLineがった。
「絵里香ちゃんがお部屋にれてくれたの。これからも遊びに來てくださいって……!」
どうやら絵里香ちゃんは在庫を隠すことに功したらしい。
それを相沢さんにLineで知らせたら
『良かった。これからも頑張って漫畫書いてほしいですね』
と同人作家仲間に向けるようなレスが返って來た。
相沢さんらしい。
俺は畫面をみてほほ笑んだ。
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