《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》深刻な病??

「滝本さん……私……病気かもしれません……」

金曜日の夜、帰宅すると相沢さんがリビングの機に正座していた。

そして神妙な顔をして小さな聲で呟く。

一瞬で狀況は理解したけど、楽しそうなので猿芝居に乗ることにした。

相沢さんは、王の椅子という名のソファーをトントンと叩いて、俺をリビングに招きれた。

「うう……折角結婚したのに……短くて……すいませんでした……」

「はい」

俺はネクタイを緩めて上著をいで座り慣れてきた王の椅子に座る。

するとすぐに相沢さんが「飲みます?」と橫のミニ冷蔵庫からビールを出してくれた。

この席に座ったら飲むのはお約束なのか。

俺はお禮を言って、ビールを開けて一口飲んだ。ああ、ライブの後のビールは最高に味しい。

機の橫を見ると、空き缶が3本くらい転がっている。

なるほど、相沢さんは結構出來上がっているみたいだ。

「うう……滝本さんっ……どうしてツッコミをれてくれないんですか?」

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「そうですね、狀況を見れば分かるので」

「あ、すいません、マッチングしました」

相沢さんは猿芝居を一瞬で止めてプロコンを握り、すぐにプレイを始めた。

大きなテレビ畫面に映っているゲームは〇ンテンドーが出している〇プラトゥーン2だ。

使っているのは〇プラローラーというカーペットの掃除に使うコロコロみたいな武なのだが、普通は3回くらい撃たないと殺せない敵を一発でキルできる武だ。

そしてイカ忍者という居場所が分からなくなる裝備(ギア)をつけて、移速度が速くなるイカ速も付けている。

初心者は裝備が揃っていないことが多いが、相沢さんはとても綺麗なので、わりとやっているようだ。

「あっ……ちょっとセンサー置きすぎ、マジイカ忍殺しなんだけど!」

センサーというのは、その上を通ると忍者として隠れているのに場所が分かってしまう裝置だ。

相沢さんは大騒ぎしながら試合を終えたが僅差で負けて瞬時に『続ける』ボタンを押した。

そしてクルリと振り向いて

「……漫畫のネームが収まらなくて……アイデアもなくて……〇プラトゥーンがやめられないんですよね……ゲームやりすぎ病です……」

「そのようですね」

俺は靜かに頷きながらビールを飲んだ。

機の上には白い紙が散している。俺は漫畫など全く書けないので分からないがコマが割ってあるのは分かる。

床に丸められた紙が広がっていて、その真ん中に相沢さんが正座してコントローラーを握っているのだ。

中々妙な狀況だ。

相沢さんはコントローラーを機の上にポイと置いて紙のゴミの真ん中に転がり、目の前の丸まった紙を広げてため息をついた。

「私印刷所の予約を60ページで取っちゃって、もうそれは変更できないんですよね。だから60ページで終わらなきゃいけないんですけど、ネームが膨らんじゃって削っても削っても75ページを切らないんですよ。ちなみに昔もこの狀況になって上下巻にしたら、上巻60ページ、下巻20ページになっちゃって、なんだよそれバランス悪すぎって……あ、マッチングしましたね」

そう言ってムクリとを起こして、再びゲームを始めた。

今度はローラーが得意とする広くて段差があるステージなので、潛伏からの一撃必殺が上手くいき、余裕の勝利だった。

迷わず『続ける』を押して、再び相沢さんはコロンと橫になり、紙を広げて、鉛筆でサラサラと何かを書いていく。

全く絵が書けない俺からすると、鉛筆から魔法のように線が生まれて、何かが生まれていくのは凄いと思う。

でも相沢さんはデジタルで漫畫を描いていた気がするけど……。

「下絵は紙なんですね」

「ネームっていって、コマ割りは今も紙なんですよねー。こう全が見わたせるから便利なんです。要らない場所とか、コマの絵が似てないか……とか、同じような構図が多くないか……とか確認しやすいんですよね。1.2……3.4……と。ああ……前半を切ってしまって後半でセリフで説明させる……だったらこのブロック丸々切って……あ、マッチングしましたね」

相沢さんは転がっていた紙を並べて何か思いた風なのに、またムクリとを起こしてプレイを再開した。この一連のきが面白すぎる。

見ていたら今度はローラーが得意ではない高所から見つけられてしまうコースだ。

ここは上に長程狙える武がいつも狙っているので、ちょっとしたきでキルされてしまう。

「あーー!」

「そこはブロックに隠れると上から見にくくなりますよ」

「え? ああ、そうかも!」

俺は思わずアドバイスしてしまった。実は俺もわりと好きで、〇witchも持ってるし、それなりにやりこんでいる。

レベルも相沢さんと同ランク……いや、俺のほうが上だ。

好きなアイドルが〇プラトゥーンで一緒に遊べる人を募集をしていて、それに參加したくて始めたのだが、わりと楽しくてハマってしまった。

アイドルがゲーム畫を撮影するときに呼んでもらえるようになったし、アップされる畫に自分が出ているのは嬉しいので、手は抜けない。

そして相沢さんはギリギリ勝った。そしてクルリと振り向く。目が真剣だ。

「滝本さん、〇プラトゥーン……ウデマエ何ですか?!」

「ウデマエは、X(エックス)です」

「マジで?!?!」

相沢さんは今まで見たことがないほど、目を大きく開いてんだ。

〇プラトゥーンーにはランクがあって、一番上は『X(エックス)』だ。一番上手い人たちが多い。

その下が『S』……『A』……と続いていく。俺はアイドルのゲーム畫に出たいがためにやりこみすぎて『X』だ。

どうやら相沢さんは『S+8(エスプラスハチ)』という『X』まであと2段階という所にいた。

相沢さんは速攻スマホを立ち上げて電話をかけた。

「ワラビちゃん、滝本さんXだって!! ツキイチリグマ……滝本さん、このあと用事ありますか?!」

電話を始めたと思ったら、突然振り向いて聞かれた。

「えっ……いえ、大丈夫ですよ。でもビール飲んでしまってますが……」

「私なんて4本飲んでますよ!!」

3本じゃなかった。紙の下に1本隠れていたのか。

なるほど、相沢さんのほうが酔っている。問題は無さそうだ。

「ツキイチリグマ、もう一人集まらなくて諦めようと思ってたんですけど、滝本さん一緒に出ませんか?!」

「大丈夫ですよ。何時からですか?」

「30分後です!」

「〇witch持ってきますね」

「お願いします!! ワラビちゃん、板橋さん呼んで板橋さん!!」

俺は殘っていたビールを飲み干して、二階に上がり〇witchを取りに行くことした。

30分あるなら著替えよう。今日は會社帰りにライブに行ったのでスーツのままだった。

ツキイチリグマとは〇プラトゥーンの公式が毎月開催している大會のようなものだ。

4人集まれば誰でも出ることが出來る。やっていることは知っていたが、4人同時刻に集まるというのが難しくて出たことは無かった。

〇witchとプロコンを持って下りていくと、散らかっていた紙は全て隅に集められていた。

……これで良いのかどうかは、分からない。

相沢さんはテレビの前からし離れた場所に機を移させてくれていた。

たしかに同じ部屋でしていたら音がかぶってやりにくそうだ。

「どうぞ、ここに、ここにどうぞ!」

「はい」

正直同じ部屋で一緒にプレイするのは初めてだ。

相沢さんは會話アプリを立ち上げていた。

その先からワラビさんの聲がしている。

『滝本さん~~よろしくお願いします~~!』

俺はその場でし頭をさげる。

「練習しましょう。あ、フレコこれです」

大きなテレビに相沢さんのフレンドコードが出ている。これはゲームをする人、皆が持つナンバーだ。

これをお互いに換しあうと、一緒にゲームすることが出來る。

を持って練習を始めたら相沢さんが悲鳴を上げた。

「キャンシェル使いなんですか?!」

「そうですね、出た當初からこれを使ってます」

『きゃあああウデマエXのキャンシェルがいるなんて、勝てる気しかしませんよおお~~!』

通話の向こうでワラビさんも興している。

俺が用しているのは、キャンピングシェルターという、大きな傘のようなものが出てくる武で扱いが難しい。

でも慣れると味方も守れるし、最強な武だ。

試合が始まった。

俺はさっき相沢さんのプレイを見ていたので、し癖が分かっていた。

「ちょっと前に出すぎですね。右奧で潛伏してたほうがいいと思います」

「分かりました!」

俺たちは協力してプレイして、なんとか勝利した。

ワラビさんともう一人の方も、相沢さんと同じくらいのウデマエでそれほど下手ではないようで、勝率6割くらいで戦いを終えることが出來た。

「あー! 楽しかった! 來月は100位以目指したいですね!」

相沢さんはとても嬉しそうにワラビさんたちと通話を切った。

「そうですね……」

と俺は答えたが我慢できずにツイ……と部屋の奧に積まれた白い紙の山を見た。

すると相沢さんも俺の視線を追って白い紙の山を見て、床に倒れこんだ。

そして顔を持ち上げて口をへの字に曲げた。

「滝本さん……私……病気かもしれません……」

「そうですね」

俺は思わず吹き出して笑った。

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