《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》真夜中のほうじ茶

これは殘業になる。

私は一枚の寫真を見た瞬間に思った。

「瀬川さん、これ、寫真の型番違いますね」

「えっ……ちょっとまって、マジで。うわ本當だ、本村さん居る?! ヤバ!」

今私が作業しているのは、來週の展示會で使う印刷機の冊子だ。

他社から請け負ったもので締め切りは今日だ。

寫真の間違いは最終確認をしていて気が付いた。

表紙の印刷機の型番はSM955。でも本文に載っている印刷機のナンバーはSM950なのだ。

本文の寫真を確認するとSM955だったりSM950だったり二枚が混在している。

どうやら発注元が間違えているようだ。

でもこの二つは、外は全く変わらず、中が変わったようで、非常に分かりにくい。

それにこの商品名の表示、良く見ないと分からないほど小さいのだ。

元のデータが違うということは発注者のミスだけど、うちの會社はデータをけ取った時點で営業制作の子が確認する事になっている。

でもデザイン部の私たちも確認するべきだった。

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それを締め切りの今日まで気が付かなかったのが悪い。

誰が悪いわけではなく、たぶん私も含めて皆のミスだ。

この冊子、たぶん明日データを出さないと印刷に間に合わないけど、これは展示會用。

関係者しかみないのだ。それに5割の寫真はどうやら合っている。

今出來るのは、張りぼてでも仕上げることだろう。

一度印刷を落としても寫真を正規のにするかどうかは、私たちの判斷ではない。

デザイン部の皆がざわめき始める。

「営業制作、本村か。首飛ぶんじゃね? どうしてもっと早く確認しなかったの?」

「殘業マジ無理なんだけど」

「200ページあるよ……てか、うちらのミスじゃないから仕方なくない?」

誰がミスをしたとか、この際どうでもいい。

なんたって今の時間は16時50分。

殘業は仕方ないけど、私は同人原稿の締め切りもカツカツで、今日5ページペンれしないと日割計算的に死が決定する。

だから1秒でも早く帰りたい。

私は改めて寫真を見る。

これ……真正面から型番を撮った寫真が高解像度であるしサイズも小さい。あれを使えば……

「良いプラグインがあります」

「えっ?!」

デザイン部の皆が私の周りに集まってきた。

それは先日原稿を仕上げた時に見つけた外國の有料プラグインだ。

して作業を開始する。曲面への畫像張り込みが一発で出來るプラグインで私は推しの犬、芝吉の服をこれですべてった。

多くある曲面張り込みは膨大な時間がかかるけど、このプラグインで正確かつ迅速に作業できた。

「曲面処理されてない畫像があるので、それを元データにして、あとは角度データだけ取れば自でやってくれます。あとは微修正でいけます」

「……なるほど。『こっちの誠意』を見せるのには十分だね」

いつの間にか後ろに立っていた上司の掛川さんはすぐにもう5個プラグインを購して、私たちは一斉に作業にった。

正直、印刷を落とすと思う。

でも気が付かなかった私たちの誠意を見せるための捨ての作業だ。

あとで気が付いたのだが、他の冊子に出てくる寫真も混在していて、修正が必要になった寫真は300枚以上。

すぐに正規の寫真に差し替えられるようにすべてリネームして別のフォルダにれておく。

仕上がったのは23時だった。

「終わったああ……」

瀬川さんは機に倒れこんだ。

やはり本気を出したら誰よりも仕事が早かったように見える。

「帰ります」

私はすぐに片づけて席を立った。

食事をして帰らないかとわれたが、用事があるので……と斷り私は電車に飛び乗った。

今日5ページやれないと、ノルマが毎日7ページになって、それは無理すぎる。

というか原稿が割り算で終わった事ないし、トラブルや調不良も加味すべきなのに、毎回コレだ。

私は自分にイライラしながら坂道を早足で歩いた。

帰宅すると、丁度玄関に滝本さんが玄関に座って靴箱に靴をしまっていた。

一本前の電車で帰ってきていたようだ。

「……相沢さん、おかえりなさい、おつかれさまでした」

「滝本さんも、おかえりなさい、おつかれさまでした」

お互いに「はあ……」とため息をついて苦笑する。

営業部も対応に追われていたようだ。滝本さんは上著をぎながら

「うちの本村がすいませんでした……」

と言った。私は首を振りながら靴をいで靴箱にれた。

「最後まで気が付かない私たちもダメでした」

最近は仕事の數が多くて素材のチェックが甘かったかもしれない。

もうしちゃんと見ないと、苦しくなるのは私たちだ。

滝本さんは気を取り直したようにし明るい聲を出して

「そういえば、お饅頭は好きですか? 今日買ったのでもし宜しかったら……」

と、鞄からゴソゴソと袋を出した。

それは會社近くの千堂屋という味しい饅頭屋さんの袋だったので私は

「大好きですよ」

と言いながら上著を玄関に掛けた。千堂屋のお饅頭はどれも甘さ控えめで味しい。

すると滝本さんが中を見て「あ……」と口を開けていた。

何だろうと思いつつ言葉を待っていると、申し訳なさそうに袋から商品を出した。

「……すいません、売れ殘ってて可哀相になって買ってきたものでした」

千堂屋さんは人気があるので、売れ殘るとか基本的に無さそうだけど……?

滝本さんが見せてくれた饅頭は、ただの饅頭ではなく、沢山の黒いブツブツがある……

「……タピオカ饅頭」

初めてみる商品だった。

「なんか店主のお嬢さんがタピオカ好きだということで作ってみたらしいんですけど、売れ殘ってて可哀相になったんです」

滝本さんは申し訳なさそうに言った。

あの饅頭屋さんは、うちの會社は贔屓にしていて、社名がった焼き印も置いてある。

店主とも皆知り合いだ。

思い出してみると、確かにギャルっぽい高校生の娘さんが居た気がする。

なるほど……?

あまりに殘念なフォルムに逆に興味を持ち

「食べてみましょうか」

と、滝本さんをって一階の臺所にり、ほうじ茶をれた。

機に置かれたタピオカ饅頭……封を開ける前からズシリと重い。

量のタピオカがっているレベルではない本気をじる。

そして一口食べてみた。

「……饅頭とタピオカの相が最高に悪いですね」

私はなんとか口の中に空間を開けながら話した。

ムニュムニュとグニュグニュのコラボレーションで予想通りの殘念ぶりだ。

滝本さんも一口たべて

「ああ、これは、タピオカが……邪魔ですね……」

とモゴモゴ話した。

元の饅頭の生地と餡子が味しいので、タピオカの異質ぶりが目立つ。

それにタピオカの量が多すぎて、食べていると息苦しくなってくる。

「なんでしょうこれ……命の危機をじます」

「口の中にタピオカが溢れてきました……」

私たちは何だかあほらしくなって、タピオカ饅頭をほうじ茶で押し込んで笑った。

帰ってくるときにじていたイライラは不思議と消えていて、夜に飲むほうじ茶は香ばしくて味しかった。

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