《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》ファーストコンタクト

お盆ということもあり、電車はかなり混んでいた。

學生の時は、この時期電車に乗るのが嫌いだった。

ホームを見ると、今年も學校帰りに食べたうどん屋さんは健在だった。なんだか毎年確認してしまう。

部活帰りによく素うどんを食べていたので、味しくも無いのに、特別な店だ。

橫をみると當然だけど滝本さんが座っている。

よく考えたら故郷に、同僚でしかも偽裝結婚した滝本さんが一緒に來ている事に驚く。

寫真を合しているような違和

「……滝本さんが、私の実家の駅にいて、変なじです」

「それは俺の母親に相沢さんが會った時に、思ってましたよ」

そりゃそうだ。

自分の過去に新しい人がれて、景を変えていくのは変なじだけど、イヤな気分ではない。

駅に著くと、電車に乗っていた9割の客が下りた。

二年前にドラマで取り上げられてから、観客が増えた。それはありがたいことだ。

お客さんは駅前の商店街に向かっていく。

ここは石畳で、緒があるので、インスタ映えする。

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私は駅前のロータリーをチラリ確認して、タクシーに乗り込んだ。

やっぱり迎えに來てないか。

実は、新幹線を下りたときに、この時間の電車に乗る……とLineしておいたのだ。

私は勝手に行くけど(というか本當に忙しいので、は基本的に迎えに行かない)

滝本さんは迎えにくるかもと思ったが、やはり変わらないようだ。

私と結婚した『家族扱い』。そりゃそうだ。

忙しいのも理解しているので、仕方ないとは思うけど、滝本さんを軽く扱われるのはし悲しい。

お金を払い、タクシーから荷をおろして、裏口の前に立った。

そして深く息を吸い込んで、吐いた。よし、一週間がんばろう。

滝本さんを連れて裏口からって行く。

ると一番前は巨大な倉庫だ。屆く荷がすべてここにれられる。

大きな棚や巨大な冷蔵庫が置いてあり、巨大な迷路のようだ。

小學生の頃はここでお兄ちゃんと鬼ごっこをして怒られた。

よく考えたら、小學校の間はよくお兄ちゃんと遊んでいた。

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他の家のお兄ちゃんは妹をイジめていたけれど、お兄ちゃんはいつも私を守ってくれて、気にしてくれていた。

ま、今じゃ父と母をコントロールしてワガママ放題の人だけどね!

私は滝本さんに説明しながら歩く。

「倉庫を抜けて右側にいくと調理場に出ます。左側……こっち側にいくと事務所です」

「なるほど。かなり大きな建ですね」

「最初は迷子になりやすいと思うので、なるべく一人で出歩かないほうが良いと思います」

調理場の方は兄がいて、部外者が立ちると怒るので面倒だ。

事務所のガラスに人影……お母さんはいるみたいだ。

私はノックしてった。

「ただいま帰りました」

「あら、おかえりなさい。迎えを出そうと思って忘れてました」

「忙しいことは知っているので、大丈夫です」

私は頭を下げて挨拶をした。

そして後ろに立っていた滝本さんを前に出す。

心無しかお母さんの表が引き締まる。

「初めまして。咲月の母、相沢津子です、遠い所、お疲れ様でした」

「挨拶が遅くなり、申し訳ありません、滝本隆太と申します。結婚のご報告が遅くなったことをお詫びします」

滝本さんは丁寧に頭を下げた。

自分の事に一杯で滝本さんのことをよく見て無かったけど、スーツとかではなく、きやすく……それでいてスッキリとした服を著ている。

お母さんは手をヒラヒラとかしながら

「いいんですよ、もう貰って頂けただけで嬉しいです、もうずっと心配してたのですよ、東京でひとり仕事とか絵ばっか書いて食事も自分で作らず適當で、気が付いたら死んでるんじゃないかってねえ、看取ってくれる相手が出來たってだけで助かりますよ!」

といつもの作り笑顔で微笑んだ。

看取るて。何年先の話だよ。私は小さくため息をついた。

実家に著いたってじだ。

お母さんは私の方を見て

「泊る部屋なんだけどね、ありがたい事に満室で、二人が泊る部屋がないのよ。事務所の奧の和室で大丈夫?」

恐ろしいほど予想通りだ。

私は頷いて荷を持った。

地獄の一週間の始まりだ。

「荷置いて來ます。これお土産です」

私はお土産に持ってきたバームクーヘンを1箱渡した。

お土産はいつもお兄ちゃんの子供が大好きなお菓子にしている。

々買ってきたけど、何も喜ばれなかったから。

「あの、これ俺からもお義母さんにお土産です」

私が奧の和室に行こうとすると、滝本さんが鞄からDVDを取り出した。

しまった!

お土産とか、何も気を使わなくて良いと伝えるのを忘れていた。

何をしても逆効果だから、何も要らないのに!!

「……なんですか、これは」

お母さんは分かりやすく眉間に皺を寄せた。

DVDとか見てる所知らないよ、うわああ……滝本さん……!!

心臓がドクドクと激しくいているのが分かる。

滝本さんはスマホを作しながら、お母さんに一歩近寄り

「〇川染五郎さんが〇生劇場でAMADEUSに出演された時の公演がW〇WOWで放送された時のです。この時だけ染五郎さんのインタビューが付いてます。もうご覧になっていたら申し訳ないのですが……」

と言った。

は?? 〇川染五郎?? 〇生劇場?? なんのこっちゃ??

完全に置いて行かれている私をよそに、ハッと見たらお母さんが見た事がない乙のような表をしていた。

なにこれ、誰?!

そしてDVDをけ取って口を開いた。

「なぜ私が染五郎さんのファンだと……」

マジでファンなの?! 何十年も見てきたのに知らなかったよ、どういうこと?!

私は冷靜な滝本さんとの微笑みをしているお母さんを互に見た。

何が起こってるの?!

滝本さんはお母さんのスマホについているストラップを指さして

「これ染五郎さんが出演された舞臺のストラップですよね。それを旅館のブログで拝見しまして、お好きなのでは……と思いまして」

「!! まあ、そうなんですよ。これ限定品なんです」

はああ~~~?? お母さんの口から限定品とかいう言葉が出てきたよ。

私の事をオタクだとかマニアだとか散々言ってきたのに、同枠じゃん!!

「実は僕も吉例顔見世大歌舞伎の鯉つかみを見てから、染五郎さんのファンでして」

「まあ! 鯉つかみ! 私も大好きです。歌舞伎がお好きなんですか」

「音楽が好きなので、舞臺を見るのは基本的に好きです」

「そうなんですか! AMADEUS見たことがなかったので、楽しく見させて頂きます」

「すいません、初めてお會いする手土産がDVDで……」

「そんな事!! まあ、本當に嬉しいわ。ちょっとまってね、玉ちゃん~~~、工事中の部屋って今どうなってるの?」

二人のトークに私は一歩もついて行けない。

お母さんは長く自分の下で使っている玉子さんに電話した。

そして相変わらず勝手に話してガチャ切りして

「よく考えたら事務所の奧じゃ狹いから、今工事中の部屋を二人で使ってください。お風呂が工事中だからそれは大風呂のほうに行ってくださいね」

と言った。

ええええ……?! まともな部屋使わせてもらうの、実家離れて10年無かったんだけど?!

「お手數おかけします」

と滝本さんは、私に向かってにっこりとほほ笑んだ。

滝本さん、お母さんのこと、めっちゃ調べてくれたんだ……。

「お部屋についたら、すぐに著替えて出てきてくださいね。お願いしたいことが沢山あるんです」

お母さんは相変わらずシャキシャキしていたけど滝本さんは笑顔で対応していた。

部屋が変わっただけで仕事量も対応も、何も変わらない。

でも、朝からじていた調不良は消えていた。

私は滝本さんの後ろの服をキュッ……と握った。

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