《【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!》川の音と寢息と

「川がきれいに見えるんですね」

通してもらったお部屋は、トイレとお風呂が故障中だったが、広くて展も素晴らしかった。

を置いて外を見ていると相沢さんが寄ってきて橫に座った。

さっき突然後ろの服を摑まれたので、心底驚いたのだが、表をみると納得した。

安心して、気が抜けたようだ。

「滝本さん……旅館のブログとか全部見てくれたんですか?」

「そうですね。旅行サイトのほうも拝見しました。失禮がないように、と思いまして」

「……ありがとうございます、私、全然知らなかったです、お母さんに好きなものがあるなんて」

「表で口にしないということは、あまり人には知られたくない可能もあり、正直博打でしたけど、喜んでもらえて良かったです」

調べすぎると「気持ち悪い」と思われてしまうので、ほどほどにしないといけない。

Facebookのほうではかなり染五郎さんのことを書いていたが、表のブログには書いてなかった。

だから痕跡を探したのだ。見つかって良かった。

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相沢さんは川の流れを見ながら大きく息を吐き出した。

「私、朝からし変でしたね、やっぱり張するんです、ここは。実家なのに全然ホームじゃない」

「そうですね、朝から表が暗くて心配してました」

俺がそう言うと、相沢さんは

「……私にとっては、東京で滝本さんと暮らす家こそがホームなんだと実しました。滝本さんに一緒にきてもらえて良かった。居てくれると安心します」

と薄くほほ笑んだ。

その笑顔が川面のでキラキラと輝いて見えて、俺は恥ずかしくなって「良かったです」とうつむいて答えた。

絶対に『良かったです』以外の言葉をいうべきなのに、相沢さんに褒められると恥ずかしくなってうつ向いてしまう。

に対しては仕事の力を全く生かせない……けない……!

「失禮します、咲月ちゃん、果歩(かほ)ですー、久しぶりです」

「あっ、お姉さんだ」

り口をノックしてってきたのは、ショートカットで大きな目が特徴的なだった。

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相沢さんが俺を紹介してくれた。お兄さんのお嫁さんだ。

俺は調べ盡くしていたので知っていたが、當然初対面なので頭をさげて挨拶した。

「すいません、わざわざ來て頂いたのにお仕事手伝ってもらうなんて……」

と兄嫁の果歩さんはため息をついた。

その橫で相沢さんも不満げに顔を歪ませて

「私は手伝うのが條件だから仕方ないけど、滝本さんもお仕事しないとダメなのかなあ」

と言った。俺は

「一人だけのんびりしてるのもつまらないので、微力ながらお手伝いさせて頂きたいと思います。いつもデスクワークがメインなので、力的にはあまりお役に立てないかもしれませんが……」

と答えた。

正直心配だった。ドル活はわりと力仕事で移距離は多い。

それにかなりの距離を歩いたりする。でもあまり重いを持ち上げたり、運んだりはしない。

手伝いではなく迷にならないと良いが……。

兄嫁さんは

「恐ろしく人手不足で、夏の間は海外の方に々とお仕事をお願いしてるんです。だから力的には大丈夫だと思うんですけど、々と問題もあって……」

と小さくため息をついた。

問題?

俺たちはお姉さんから渡された作務に著替えて館の清掃に向かった。

今は晝過ぎなので、これからチェックインしてくる方への部屋の掃除が一番忙しい時間なのだと説明される。

掃除をしているフロアに向かうと、外國の方々の話聲が聞こえていた。

俺は言語に強くないので、それがどこの國の言葉なのか、よく分からない。

しかし日本語じゃないことは確かだった。

兄嫁さんは外國の方々に俺と相沢さんのことを紹介してくれたが、みんな日本語がそれほど得意では無いらしく、あまり聞いていない。

「……基本的な會話は可能なんですけど、し難しくなると無理みたいで、コミュニケーションに苦労してます」

兄嫁さんは苦笑した。相沢さんは作業を開始しながら

「中國語だと思うんですけど……中國語ならわりと読めるんですよね。MCUって韓國中國が強くて、二次創作が強いので勉強したんです。ていうか……あれ? あれって……」

そう言って、一人の中國人の方に近づいていった。そして腰についていたアクキーを見ながら

「〇滅の刃? 〇ャンプコミック?」

と聞いた。

その瞬間、全く話を聞いていなかった中國人の方が目をパッと開いて何か早口で話し始めた。

相沢さんはポケットからスマホを出して自分のスマホに話しかけはじめた。

そしてボタンを押して、出てきた聲を中國人さんに聞かせる。

アプリは自翻訳するものらしく、相沢さんの言葉が変換されて出てきた。

『中國語は話せない。でも〇滅の刃は好き。それはオリジナルのアクキーですね、手作りですか』といわせている。

中國人の方は、それを私にも貸してくれというアクションをしたので、相沢さんはスマホをその方に渡した。

ペラペラと何かを話して、相沢さんに渡した。相沢さんがボタンを押すと

『私も日本語上手に話せない。でも〇滅の刃は好きで、これはネットで買った。日本はたくさん売っていて楽しい』と返してきた。

おお、會話が立している。

『〇滅の刃いいですよね。中國語だとどこまで翻訳されてるんですか?』

『8巻まで!』

『あ~! それはすごく辛いところで止まってますね』

などスマホを介してオタトークしながら仕事を開始した。

最後にはキャラクターの名前をぶだけになっていたが、とても楽しそうだ。

兄嫁さんはポカンとして

「……中國人のスタッフさんがあんなに楽しそうなのも珍しいけど、咲月さんがあんなに楽しそうなのも初めて見ました」

と呟いた。

「相沢さんもあの方も漫畫がお好きなんですね」

と俺が言うと

「ううん、いつも咲月さんはここに來ると辛そうで、漫畫の話なんてしなかったけど……滝本さんと一緒だからですかね、とても元気で安心しました」

と俺のほうを見てほほ笑んだ。

「……そうだったら、とても嬉しいです」

と答えた。

相沢さんは毎年手伝っていることもあり、手が必要な場所は分かっていて、率先していていた。

それをみた海外の方も『この人に聞けば分かるのでは?』という雰囲気になり、相沢さんは翻訳アプリで會話しながら順調に仕事を進めた。

そして兄嫁さんの気遣いで、俺たちは夜前には作業を終了して、社員食堂でご飯を頂くことになった。

簡単な定食だったが、かした後には格別に味しくじた。

いや、味しかったが、正直かなり張していた。

これから相沢さんと部屋で二人きりになる。

明日の朝は6時に裏口集合と言われていて、それでも今は21時。

いつも會社から退勤して帰って來たくらいの時間だ。

ここから9時間相沢さんと二人きりなのだ。

食事を終えて二人でお風呂に向かった。

従業員用の溫泉は、白濁したお湯はらかく、足がばせるお風呂は気持ちよかった。

いや、正直無駄に頭を三回もシャンプーしてしまったが。

のお風呂は長いイメージなので、俺は先に部屋に戻った。

そして散らかっていた荷を片付けて布団を引こうと思ってきを止めた。

近くに並べるのは、ちょっと……いやらしくないだろうか。

部屋は広いのだし、し遠くに並べるべきか。

いやわざと空間を開けておいたほうが、おかしくないか、むしろ「下心あります」みたいにならないか。

俺はもんもんと考えた。

でも先に戻ったほうが布団を引いておいた方がきっと良い。

だって今日は相沢さんも疲れてるし、すぐに橫になりたいだろう。

いそいそと布団を引き始めたら浴が崩れてきたので、持參した部屋著に著替えた。

そこで思いついたが、相沢さんは浴で眠るのだろうか!!

そんな……刺激が強い……!!

やはり布団は離そう。ずるずると離して、でも離しすぎな気がしてし戻したりしてみた。

そんなことを繰り返して気が付いたらもう23時近かった。

さすがに遅くないか?

相沢さん、疲れてお風呂で眠り込んでいるのでは……? 相沢さんは疲れるとどこでもすぐに眠ってしまう。

俺は心配になって扉を開けたら、ちょうどドアの前に相沢さんが立っていた。

「はあ……疲れました……」

「大丈夫ですか?」

「お風呂でホンさんに偶然會って、そのまま拉致られて、大お絵かき大會が始まって全キャラ書きました……いや私も楽しかったんですけど……」

晝間仲良くなった中國の方はホンさんというお名前らしい。

明らかに相沢さんは疲れ果てていた。

そしてフラフラと布団に向かってもぞもぞともぐり込んだ。

あ……そこ、さっきまで俺がってた布団なんだけど……!

「溫かくて気持ちいい……滝本さんの溫だ……冷えちゃって……ああ落ち著く……おやすみなさい……」

相沢さんはさっきまで俺が寢ていた布団に丸まり、即眠ってしまった。

これが前に見かけた布団のカバーを変えながら生布団の上で寢落ち的なあれだ……!

でも今日は朝からずっと張していて、疲れたのだろう。

眠る表は心なしかほほ笑んでみえて、俺は相沢さんの肩まで布団をかけた。

すると相沢さんはうっすらと目を開けて

「……明日は夜お話しましょうね……」

と小さくほほ笑んで、また眠った。

「っ……、はい」

俺が答える頃には相沢さんは寢息を立てていたけれど、俺の心臓はバクバク音を立てていた。

深呼吸をして相沢さん用に敷いた布団にもぐりこんだ。

橫をみると相沢さんが小さな寢息をたてて眠っていて、川のせせらぎが聞える靜かな夜。

でも俺はやっぱり眠れなくて、花癥の薬をなんで飲んでおかなかったのか、後悔した。

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