《【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可すぎる彼たちにグイグイ來られてバレバレです。》22 馴染の彼氏は○○でした。

それからしばらく、ブタさんによる「アタシ彼氏できたのよ」アピールは続いた。

放課後はわざわざイサミくんを教室まで迎えに來させて、これ見よがしに腕を組み「校門まで一緒に行きましょ♪」とか。俺の方を見てニンマリ。そのたびにクラスの男子が嘆き、子は黃い悲鳴で、ちょっとした騒ぎが起きる。

「る、瑠亜姫っ。そいつなに? 彼氏なの? 付き合ってるのっ?」

「えー? そーゆーわけじゃないけどォ、そー見えるぅ?」

なんて言いながらのまな板をイサミくんの腕にゴリゴリして、またも俺の方を見る。しかもドヤ顔。うーん毆りたい。

まぁ俺のことはいいのだが(無視するだけだし)、付き合わされるイサミくんがいささか不憫である。

うちのクラスのブタ親衛隊からは、すっかり目の敵にされてしまった。

子からもなんだかいろいろ噂されているようだ。

まだ中等部で、しかも転生なのに、高等部の教室に一人で來るのは勇気がいるだろう。ブタさんはそういうの一切無視だからな。可哀想。付き合ってるっていうより、捕食されてるってじ。

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それにしても――。

彼が教室に來るたびに、俺と目が合う。

熱っぽくて、どこかせつなげな視線で見つめてくる。

絶世の男子にそんなまなざしで見つめられたら、なんだか妙な気分になる。なにしろ、外見だけ見れば可い年下のの子といって差し支えないのだから。

最初は彼(ブタ)の馴染である俺のことを警戒しているのかと思っていたが、どうも別の事がありそうだ。

あれから何度も記憶を掘り起こしてみたが、やっぱり「白鷺イサミ」なる年に會ったことはない。そもそも他県から引っ越してきたらしいし、俺との接點など何もないはずだ。

なのに何故、あんなせつない目で俺を見るのだろう。

そんな風に、首をひねる日々が続いたのだが――。

七月某日。

期末テストが終わり、いよいよ夏休みを間近に控えたある日の放課後。

俺は演劇部に呼び出されて、彼らが活している學生ホールへ趣いた。

そこには細い目の三年生子が待っていた。演劇部の部長である。學校で一番長の高い子で、生徒集會などで何度か顔を見かけている。特別形というわけではないが、のある笑顔をする人だ。

「君が、噂の鈴木和真くんね」

「噂かどうかは知りませんが、鈴木は俺ですよ」

部長さんはニコッと笑った。そんな風に笑うと、細い目が糸のようになる。

「聲優の皆瀬甘音さんがブレイクしたのは、君のおかげって聞いたよ」

「まさか。彼の力ですよ」

「その彼から聞いたのよ。あの子、君のこと本當に尊敬してるみたい」

甘音ちゃん、そんなこと言ってたのか。やれやれ……。

「正直、彼の話を聞いても半信半疑だったんだけど、こないだの學食での一件を見て信じる気になったの。あの瑠亜姫を言いくるめるなんて、ただ者じゃない。最近は胡蝶さんまで君に接近してるらしいじゃない? あの冷たい會長の氷を溶かすなんて、信じられない」

まったく、會長まで。買いかぶりすぎである。

「そんな君を見込んで頼みがあるの。夏休みまでの2週間、私たちの稽古を見て意見を言ってくれない?」

「素人の俺に?」

「舞臺を見に來る観客は、その素人でしょ? 八月の公演、絶対功させたいの」

こうしている今でも、ホールでは二十人ほどの部員たちが演技の稽古をしている。どの部員の顔も真剣だ。聲からも作からも、気迫が伝わってくる。こないだ見た野球部の練習よりも、よほど熱がっている。

この帝開學園にあって、演劇部の地位はそんなに高くない。実績がないからだ。こんな場末のホールが活場所になってしまっている。今の熱より、過去の実績。それがこの學園のルールだ。

ならば、俺はルールに抗おう。

「本當に大した意見は言えませんからね」

「うわっ、ありがとう! よろしくっっ!」

部長は俺の手を強く握ってきた。

「さっそくだけど、ひとつ相談があるの。白鷺イサミくんのことで」

思わずドキリとした。

「彼、子供の頃から劇団にいただけあって演技は上手いんだけどね。どことなく固いっていうか、うちの部に馴染めてないっていうかさ。瑠亜姫と際してるって噂もあるけど、だったらもっと浮かれててもいいのに」

「転してきたばかりだし、仕方ないんじゃないですか?」

部長は「うーん」と唸った。

「そういうじでもないのよ。たとえば彼、他の男子部員とは著替えも休憩も別々にするの。なんか避けているみたい」

「何か理由が?」

「それがわからないのよ」

ふむ……。

あの、俺を見つめるせつないまなざしと、何か関係あるのだろうか。

「ちょうど彼、裏で休憩してるから。良かったら話してみてくれない?」

俺はホールを出て、その隣にある部屋へ向かった。そこを控え室として使っているらしい。

ドアをノックして、聲をかけた。

返事はない。

失禮しますとドアを開けると、誰もいなかった。白鷺イサミのと思しきバッグが機に置かれている。ジュースでも買いに行ったのかもしれない。

どこからか、水の流れる音がする。

部屋を見回すと、カーテンのかかった一角がある。その向こうに誰かいるらしい。

カーテンを開けると、そこはシャワー室だった。學生ホールなんて滅多に來ないから知らなかった。この部屋、シャワーがついていたのか。

床に置かれた籠の中に、男子の制服がきちんと畳まれていた。ネクタイので中等部とわかる。

だが、俺の目をひいたのは、制服ではなく――。

「…………」

純白のブラジャー、そしてショーツが、制服の上に置かれている。どちらも可いワンポイントのリボンがついている。機能重視の素っ気ない下著だけど、一杯可くしたい! という持ち主の気持ちが表れてる気がした。

その下著のそばに、白い包帯のような布が置かれている。

サラシってやつか?

「………………」

磨りガラスの向こうで、誰かがシャワーを浴びている。

この男の制服と、の下著の持ち主だ。

ガラスごしにもわかる、しっかりと発育しただった。全のシルエットはまろやかで、とおはパツッとしている。特に、あの。甘音ちゃん以上、會長未満くらい。あれをサラシで押さえこむのはひと苦労だろう。

その解放に浸っているのか、磨りガラスの向こうの彼、いや、彼は、かすかに鼻歌を歌っている。ふんふん♪ と楽しそう。だから、俺の侵にも気づかなかったのだ。

俺は音を立てないよう注意しながら部屋を出た。

廊下の壁に寄りかかって、深呼吸して、天井を見上げて――混した思考を整理した。

つまり、こういうことか。

元・なじみの彼氏は、「彼」だった。

「これからも読んでやるよ!」という心優しき方。

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