《【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可すぎる彼たちにグイグイ來られてバレバレです。》29 邪悪なる胎 of 馴染み
「そのの子、誰ですか? ずいぶん、親しそうですけど」
甘音(あまね)ちゃんが放った質問に、どう答えたものか。
鮎川本人が答えてくれれば楽でいいのだが――ダメだこりゃ。完全にフリーズしている。俺が來た時もそうだったが、よほどここでバイトしてるのを知られたくないらしい。
一方の甘音ちゃんは、このメイドさんが鮎川彩加(あゆかわ・あやか)とは気づいてないようだ。
ダンス部の有名人だから、甘音ちゃんも顔くらい知っていると思うのだが、ギャル制服とは似ても似つかないフリフリの裝と下ろした髪のせいでわからないのだろう。
ならば、俺が答えるべきは――。
「バイトの先輩だよ。今日が初日だから、いろいろ教えてもらってる」
「……そうでしたか」
甘音ちゃんは、むうっと頬をふくらませた。
あれ? 回答、間違えたかな……。
「ほら、先輩。ここは俺に任せて休憩行ってくださいよ」
立ち盡くしている鮎川の肩を叩いた。
鮎川はロボットみたいに頷いて、そそくさとバックヤードへ消えていった。
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「それじゃあ甘音ちゃん。こちらの席へどうぞ」
「はぁい」
席に案して、彼が好きなクリームソーダを持っていった。クリーム山盛りてんこ盛り。鮎川に叱られるかもだが、このくらいは許してもらおう。
「和真くん、タキシード似合いますね! 本の執事さんみたい!」
「格好だけだよ」
「そうかなあ。立ち居振る舞いとか、すっごく本っぽいですよ!」
本の執事見たことあるのかな? と思ったが、突っこまないでおこう。
「今日はこれから収録なんです。その前に、和真くんの顔を見てパワーをもらおうと思って」
「忙しそうだね」
「はい! レギュラー三本も決まったんですよ! チョイ役ですけど」
聲優業は極めて順調のようだ。あのブタの事務所を抜けてから、幸運続きだな。
「ところで胡蝶會長はもう來ました?」
「いや、まだ」
「えへへ。じゃあわたしがいっちばーん! ですねっ!」
あいかわらず、胡蝶涼華(こちょう・すずか)會長にライバル心を燃やしているようだ。仲良くしてくれた方が助かるんだが。
「じゃあ、瑠亜さんは來ました?」
「ブタさん? いや、來てないよ。バイトすることも教えてないし」
何故話す必要があるのか。
俺たちしかいない店で、甘音ちゃんは聲を潛めた。
「事務所の人が教えてくれた話なんですけど、瑠亜さん、2週間オフなんですって。いっさい仕事れてないって」
「へー」
そのまま俺の周りからもテイク・オフしてくれないだろうか。
「あれだけの売れっ子さんが長期休暇なんて、珍しいから。また変なことを企んでるのかも知れません。気をつけてくださいね」
今まで酷い目に遭わされてきた彼だから、その忠告には真剣味があった。
「ありがとう。気をつけるよ」
メロンソーダを飲み干して、ついでにキスもねだって(おでこで勘弁してもらった)、甘音ちゃんはパワー満タンで収録現場へと向かっていった。
◆
「よっ、チャラ男」
グラスを片付けて振り向くと、鮎川が腕組みして立っていた。
「あれ、聲優の皆瀬甘音でしょ? あんたと付き合ってるって噂、ホントなんだ」
「付き合ってない」
「噓ばっか。あのコ、あんたにガチ惚れじゃん」
「どうしてわかる?」
「さっき、あーしが誰か聞いてたでしょ? あれは『どういう関係か』って意味っしょ? 超妬いてたよあれ。怖っ」
なるほど。あのふくれっ面は、そういう意味か。
「仲良くはしてるよ。でも彼氏彼ってわけじゃない。そういう手続きは踏んでない」
「なんで? 踏めばいいじゃん」
「慣れてないんだ」
鮎川は呆れたようにため息をついた。
「あんな可くて、しかも聲優やってる子が彼だったら鼻たかーいじゃん。どうして付き合わないの?」
「誰かに自慢するために、の子を好きになったりしたくない」
それでは、アクセサリーにしているのと同じだ。
「なによ、かっこいいこと言って。男なんてみんな、の子をアクセサリーとしか思ってないじゃん」
「そうかな」
もし俺に彼ができたら、見せびらかしたりせず、ひたすら大事にしてやりたい。
だが、鮎川の観は違うようだ。
「あの淺野だってそう。花火大會に一人で行くのが恥ずかしいからって、あーしに聲かけて。一番の瑠亜にフラレたから順番に聲かけてるだけなのよ。そんなん誰が行くかっての!」
「そういえば、鮎川には大學生の彼氏がいるんだったな」
彼はぎくりと頬を強張らせた。
「そ、そうよ? 同い年の男なんかキョーミないし。最低限、クルマは持ってないとさぁ」
「すごいな」
心の底から心した。
「え、何がすごいの?」
「大人だなと思って。彼すらいたことがない俺から見れば、の達人だよ」
「そ、それは…………ま、まぁね! あーしくらい経験富なオンナになると、もうフツーの男じゃ満足できないってゆーかっ!」
をどんと叩いた。強く叩きすぎて、ゴホゴホ咳き込んだ。可いなオイ。
「俺は、その『フツーの男』になりたいんだがな」
「あんたが? 難しいんじゃないの~? 帝開の普通ってレベル高いしっ。でもま、見どころないわけじゃないし、頑張りなさい」
「了解です。先輩」
「えへへ。よろしいっ後輩クン!」
機嫌の良い時と悪い時の差が激しくて、ちょっと疲れる部分もあるが――悪いやつじゃないよな。
夏休みのアルバイト、楽しくなってきた。
◆
【ほぼ毎日投稿】るあ姫様が斬る!~わきまえなさいッ~
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『おっはこんばんちわーっす♪』
『いろんなアニメで聲優やってます! るあ姫こと、高屋敷瑠亜です!』
『あのねー、瑠亜ねー、夏休みとったんだあ。二週間ガッツリ』
『しばらくお爺さまと一緒にのんびりしようと思って~。アタシからったげたの』
『お爺さまったら、アタシのこと大好きだからさぁ。もーはしゃいじゃってw 圧あがらないか心配www』
『でね、その代わり、お爺さまにはワガママ聞いてもらったんだぁ』
『高屋敷家のシークレットサービスから、選りすぐりのツワモノをるあに貸して♪ って』
『元自衛とか、傭兵さんとか、あとなんかよくわからん特殊部隊? のヒトとか、いろいろいるのー』
『なかにはちょーっとガラの悪いのもいるみたいだけど。ま、強ければ問題ナイよねっ♪』
『で、そいつらで何するかってゆうと――』
『もちろん、例の〝友達〟をガードしてもらうの!!』
『彼、『カズコ』ってゆうんだけどね?』
『カズコったら、めちゃめちゃモテるくせに、自分の魅力に無自覚でさあ』
『悪い蟲がたくさん寄ってきて、もー、見ててハラハラしちゃう!』
『夏休みって、いろいろとが多い季節でしょ?』
『だから、そのツワモノたちにカズコを護ってもらうの!』
『アタシに出來るのはこのくらいだけどっ。なんにもできないんだけどっ』
『やっぱ、大切ななじみのこと、護ってあげたいからっ。おめめきらきらっ♥』
『……思い知るといいわ……アタシのカズに手ぇ出したら……どうなるか……』
『…………甘音でも涼華でも……他の誰だろうと……ユルスマジ……』
『ってなわけで、夏を満喫ちうの瑠亜ちゃんでしたー!』
『まったねーい!』
【コメント欄 1054】
ババムーチョ・1分前
姫さまが元気になってよかった~!
るあ様のしもべ5號・1分前
おじいちゃん想いの瑠亜姫、尊い
ドドールコッフィー・1分前
なじみLOVEのるあちゃん、てえてえ……てえてえよぉ……
真実の使徒・1分前
カズって、の子だったんだ! なっとく!
さざんかさんさん・1分前
護衛って大げさすぎない?
香港・1分前
なんか最近、獨り言多くね?
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【WEB版】王都の外れの錬金術師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】
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