《【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可すぎる彼たちにグイグイ來られてバレバレです。》41 馴染みの「言い分」を聞いてみたら予想以上に最悪な件

馴染み・ブタこと瑠亜サイドの話

七月末の某日――。

高屋敷羅(たかやしき・みら)は、一族の當主である高屋敷泰造のもとを訪れた。

羅は瑠亜の親戚であり、鈴木和真の師匠である。子供の時からよく知っている二人が「絶縁」したと聞いて、理由を知りたいと思った。

帝開學園の隣に建つ豪邸、その広い応接間で面會した。

泰造は玉座のように豪奢なソファにその老を沈めている。

瑠亜は面白くなさそうな顔でゴディバのチョコをムシャムシャしながら、ペットのライオンをソファがわりにしてもたれかかっていた。マンガに出てくる金持ちかよ、という思いをじ得ない羅である。

「久しいな、羅よ。耕造は息災か?」

「は~い前。おかげさまで、事業も順調なようです~」

羅の祖父・耕造は、泰造の弟である。帝開グループの金融部門を取り仕切っている。経済界の重鎮であり強い影響力を持つが、そんな祖父でも泰造には頭が上がらない。當主の発言権は、高屋敷において絶対なのだ。

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その泰造は、長男・貞蔵の娘である孫・瑠亜を溺している。

これにより、一族の序列は「瑠亜>泰造>>>>>その他」という歪な形になっている。

高屋敷家は、この國に大きな影響を及ぼすことができる。

つまり――このワガママ放題の金髪ブタ野郎が、この國の支配者といっても過言ではなかったりする。決して大げさではない。実際、瑠亜が「こいつの顔キラ~イ。ニュースとかで見たくナ~イ。お爺さまなんとかしてぇ~ン?」という理由だけで、総理の首がすげ変わったことさえあるのだ

「それは何よりだ。――して、今日の訪問の理由は?」

「おわかりでしょ~? 鈴木和真くんのことです~」

ちらっ、と羅は瑠亜に視線をやった。

「あによう、羅っち。アタシに何か言いたいことでも?」

10歳も年上の羅に対してもこの態度である。

「瑠亜ちゃんさあ~、和くんにひどいこと言ったらしいじゃない?」

瑠亜はギクリとを強張らせた。ご主人の異変をじて、ライオンがグルゥゥと鳴く。

「どういうことだ羅? ワシにも話せ」

「二人が絶縁したきっかけを、和くん本人に聞いてみたんですよ~。そしたら、瑠亜ちゃんにこう言われたんですって」

「ふむ。なんと?」

「『アンタと馴染みってだけでも嫌なのにw』」

ちゃんと草もつけて伝えた。

泰造は白いあごひげをでてため息をついた。

「瑠亜よ。何故そんなことを? それでは和真が怒るのも當然ではないか」

「ちっ、ちがうもん! アタシはただ、ちょっとイジワルしてやりたかっただけで……別にホンキじゃなかったわよ!」

「どうして、そういうイジワルを~?」

「だってさあ、高校生になった途端カズが言うんだもん! 『明るくなりたい、友達がしい、彼しい』って!」

「んん? それが何か~?」

高校生の男の子なら、普通の願いだと思う。

瑠亜は大きく首を振った。

「アタシというものがありながら! アッタッシッというものがありながら、よ!! トモダチがしいって何事!? この世界一可い瑠亜姫がいるのに、不満だっていうの!? あまつさえカノジョとかナメてんのかッッ! アタシひとりで世界中の100萬人分くらいあるでしょーがっ!」

ツバが羅のところまで飛んできた。ライオンがすごすごと部屋の隅へと逃げていく。そのくらいの剣幕であった。

「それはいくらなんでもムチャクチャよお~」

羅は困り果てて、泰造に視線を向けた。

こういう時こそ、當主の威厳をもって、このバカ孫にビシッと――。

「うむ。瑠亜の言うことはもっともだな。和真が悪い」

「…………」

あっ。

だめだこりゃ。

「い、いや、だけどね~? 和くんと和解したいなら、まず瑠亜ちゃんが折れないと~」

「ヤダっ」

「そうしないと、和くん、他のの子に取られちゃうわよ~?」

「それもヤダっ!!」

頑として首を振る。

羅っちさあ、十傑の筆頭でしょ? カズのお師匠でしょ? 羅っちの方から上手くアレをソレしてナシつけてよ! 意地張ってないで可い瑠亜ちゃんに謝るようにカズに言って!! 『本當は大好きだよ、瑠亜』ってチューしてくるように仕向けて!」

「……チューはどうかなあ……」

無茶振り、ここに極まれり。

こうなったらもう、瑠亜は他人の言うことなんて聞かない。

前は、和くんを瑠亜ちゃんのお婿さんにするのは諦めてないんですよね~?」

「當然だ。あれだけの逸材、そうはおらん。ぜひ我が一族に迎えれたい。そのために、お前を師匠につけて帝王學を仕込んできたのだ」

このジーサンも負けずにガンコだなと、羅は思う。

和真に執著しているのは、祖父も孫も同じか――。

「なんにせよ、和くんの洗脳は解けちゃったワケだから~。二學期から大変なんじゃないかなあ~?」

「大変って?」

「だってカレ、今までわざと『オール3』取り続けてきたんでしょ~? 小學校から、今の今まで、ずーーーっと。テストも、ねらって平均點取ってきたんでしょ? 問題を解きながら平均點はこのくらいって予測して、その通りの點數を取ってきたのよ? そーいうバケモノなのよ?」

それが、どれだけ〝異常〟なことか。

どれだけあり得ないことなのか。

オール5を取り続けることより、もっともっと不可能なことではないのか――。

「でも、瑠亜ちゃんと絶縁した今、もう力を抑える必要はないのよ。スポーツでも、學業でも、大騒ぎになるんじゃあ~?」

天才學園。

様々な才能が集う帝開學園のことを、そんな風に呼ぶ者もいる。

だが、その天才たちの中に、天才すら超える「超才」の持ち主が、突如出現する。

しかも特待生ではなく、一般生徒の中にだ。

學園は、教師も含めて、大混に陥るだろう。

プライドを々にされる天才も出てくるのではないか。いや、もう居てもおかしくない。

「しかも和くんってば、ともかくの子にモテるんだから。子供の頃からもうモテまくってるんだから! 今まで何度、和くんを好きになったの子を転校させてきたか、瑠亜ちゃんも知ってるでしょ~?」

そうなのだ。

十傑は、瑠亜をガードすると同時に、和真の周囲もつぶさに観察していた。彼に好意を抱いているの子が現われると、即座に排除していた。その子の父親の勤務先に手を回して、転勤させたりしていたのだ。

和真はそこまでは知らない。

だから「自分はモテない」。――そういう風に思い込んでいる。

でも、これからは?

和真の真の姿を目撃した、並み居る天才たちは――彼を放っておくだろうか?

「ふふんっ、とーぜんでしょっ。アタシのカズなんだから♪」

「うむうむ。それでこそ、帝開グループを継ぐにふさわしき〝帝王〟よ」

と、二人は何故か誇らしげである。

やっぱり、だめだこりゃ――。

(もう、私、知~らないっと)

二學期から、和真と瑠亜がどんな騒を巻き起こすのか――。

天才學園の生徒たちに、羅は同した。

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