《【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可すぎる彼たちにグイグイ來られてバレバレです。》6 ブタさんのゲリラライブ

俺といっちゃんはパラソルの下へ戻り、著替え終わった甘音ちゃんたちと合流した。

さあみんなで楽しくレッツスイミング――という時になって、涼華會長がこんなことを言い出した。

「まず、じゃんけんしましょう」

「いいでしょう。負けませんよ。最初はグー!」

「和真君。あなたはいいのよ」

會長は苦笑した。

「私たちだけでじゃんけん。勝った人から順番に、一時間ずつ、和真君とすごすということでどうかしら?」

ベンチャー社長らしい合理的判斷だが、俺としては異論がある。

「俺が一人と遊んでいるあいだ、他の三人はどうするんですか?」

「どうって、思い思いに楽しめばいいんじゃない?」

の子たちだけで、危険です」

ナンパ目的の男なんて、山ほど來ているはずだ。

現にさっきから、こちらを窺う男たちの視線がチラチラチラ、もう視線だけでが空きそうなくらい。

とびっきり可の子が3+1。

しかも水著。

甘音ちゃんのは國指定の危険に認定されてもおかしくないし、會長のは超法規的存在だし、彩加のふとももだって治外法権。

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には「見るな」という方が酷であるし、お邪魔蟲の俺が離れれば、聲だってかけるだろう。

「白鷺くんがいても駄目かしら?」

「いっちゃんはの子とよく間違われますからね。寄ってくる輩はいると思いますよ」

「……確かに、ちょっとこれは鬱陶しいわね」

會長は鋭く周囲に視線を走らせた。その貫祿にほとんどの男はビビッて目を逸らす。だが、その目は結局、他の三人に辿り著くのだ。甘音ちゃんなんて、さっきからずっと俺の背中に隠れて出てこない。

「それにしてもさあ」

いやらしい視線の束をジロリとにらんで迎撃しながら、彩加がぼやく。

「なんか今日のプール、やたらむさ苦しくね? 休日だし家族とカップルばっかりだと思ってたのにさ、オトコだけのグループ多すぎでしょ」

日焼けした筋ムキムキのゴツイ男、チャラチャラ髪染めた不良。

さらに、青白いで眼鏡裝備のオタクも混じっている。

甘音ちゃんがおそるおそる俺の背中から顔を出す。

「やっぱり、清原兄弟さんの畫撮影に集まった人たちなんですかね?」

「そうかもな」

さっき桃原ちとせが言っていた「仕事の邪魔すんな!」とは、そういう意味なのだろう。

ヤンキーや半グレたちを集めて、喧嘩大會でも開こうっていうのか?

「でもさぁ、そのわりに、なんかヒョロガリっぽいのも多くね?」

彩加が言うと、そのヒョロガリっぽい集団がちょうど俺たちの目の前を橫切った。

彼らは甘音ちゃんたちには目もくれない。

ふらふらと獲を求めて彷徨うゾンビみたいな足取りで、プールサイドを歩き回っている。

擔いでいるリュックの中から、タオルの切れ端がはみ出している。

そこ書かれた文字が、ちらりと見えた。

「るあ姫♥一生す」。

まさか――。

『 ぶっひひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~ん!!!!!!!!!!!! 』

突如として、ブタの鳴き聲がドームの中に反響した。

その瞬間、ヒョロガリゾンビたちにふっと生気が吹き込まれた。

虛ろだった目にが點り、瞳にはハートマークが浮かび上がる。

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 姫さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」

ドドドドドドドドドッッッ!!!

聲がした方向に一斉に大移を始める。

呆気にとられているマッチョや不良を押しのけ、ぶっ飛ばして駆けていく。つよい。オタク強い。まるで王蟲のようだ。推しが目の前に現れたオタク最強伝説。

彼らが崇め奉る「推し」は、プールから現れた。

一度に百人以上が泳げるというメインプールの中央、水の中からステージがせり出して、そこから水著姿のブタさんがヘッドセットをつけて現れる。

『プリンセスプールで泳いでるみんなー!! こんにちるあるあ~!!』

「「「「「こんにちるあるあッーーーーー!!!」」」」」

畫で予告したとーり、いっちょライブぶちかましちゃいまーーーーーす!! 楽しんでってね~ん♥』

津波のような歓聲がプールの水面を揺らす。波が出るプールじゃないはずなのに、ザブンとここまで水が來た。

俺の腕にぎゅっとしがみつきながら、いっちゃんが言う。

「あれ、瑠亜先輩? なんでライブ?」

「さあ。ゲリラライブってやつじゃないか。昔流行った」

ライブというより、邪教のサバトという雰囲気だが。

ともあれ、これはチャンスである。

「みんな。今のうちに隣のプールに移しよう」

ブタさんが歌っているメインプールの橫には、やや小さめのプールがある。

ほとんどの客がライブの方に行っているから、広々と使えそうだ。

ブタさんの人気がこんな時に役に立つとは、まったく世の中わからないものである――が。

俺たちが遊びに來た場所でわざわざゲリラライブをやったのは「偶然」だろうか?

また何か企んでないといいんだがな。

甘音ちゃんの立ち絵公開!

8/2に発売予定の「S級學園」どうぞよろしくお願いします!

連載もがんばります!

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