《【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可すぎる彼たちにグイグイ來られてバレバレです。》8 ブタさんとももちー

びっびの聲を出しながら、ブタが俺の腕に抱きついてきた。

「カズ! こんなところで會うなんて奇遇ねぇ~ン♪」

鉋(かんな)で削ったようなをゴシゴシと俺の腕に押しつけてくる。なんのつもりだ。俺の腕は洗濯じゃない。

「アタシ、今さっきライブやったところでー。この後、清原兄弟の大會にもゲストで出ることになっててー。ぶひひ、人気者すぎてツラっ♪」

ブタの唾が飛んできて、俺はイラっ。

俺たちが今日ここに來ることをなんらかの方法で知って、わざわざ邪魔しに來たってことか。

「前髪ウザスダレも、カイチョーさんも、イサミンも、彩加も、來てたんだ! 奇遇だネ!」

「…………」

甘音ちゃんたちは沈黙し、訝しげな目を闖者に向けている。デートの邪魔をしに來たのはわかりきっているが、どんな風に邪魔してくるのか? なにしろ、普通じゃないブタである。どれだけ警戒してもしすぎることはない。

ゴリラ次男が言った。

「瑠亜姫、今日はスポンサードありがとな」

「んー。格闘技とかちょっとヤバンでコワイんですけどー、まぁ、お祖父さまに言われてるし?」

「だいじょうぶだって、何かあったら俺が守るからさぁ」

さっき桃原ちとせを馬鹿にしていたのとは真逆の、びた口調だった。

その桃原ちとせの存在に、ブタさんも気づいた。

「あれあれぇ? ちとせ先輩じゃないですか! おはようございまーす!」

「……おはよ」

は目をそらしたまま応えた。あきらかに気まずそうだ。

「どうしてココに? あ、そっか、最近オシゴトでコラボってるんでしたっけ? 金魚のフンみたいに!」

「……」

「畑違いの相手とも絡まなきゃいけないの、タイヘンですねー! ガンバッテクダサーイ♪」

口調は丁寧だが、彼を嘲っているのは見え見えだった。

アイドルとしては後輩にあたるブタさんだが、いまや人気と勢いは凌駕しているという自信があるのだろう。俺に言わせれば、桃原ちとせのほうが明らかに可くて華があるのだが――世間はブタと人間の區別がつかないらしい。

「ところでろでぇ、清原キョーダイさんは、なんでカズに絡んでたの? なんかあったの?」

「いや、彼にも大會に出てもらおうと思ったんだ。もしかして瑠亜姫の知り合いなのか? なら遠慮するよ」

長男の対応も、あきらかにさっきと違う。

無理やり話を進めようとしていたくせに、今はブタの意向を伺うような姿勢を見せていた。

不良のカリスマだって、言ってたのに。

権力にはびてしまうのか……。

「ん~~~……」

ブタさんはしばらく何か考えていた。

それから、長男に何やらコショコショと耳打ちを始めた。

長男の顔に、ニンマリとした笑みが浮かび上がる。

「いいね、そのアイディア。さすが瑠亜姫。彼は出場決定だな」

「だしょ~? よろしくね~ん♪」

何やら、約がかわされてしまったようだ。

……やれやれ。

せっかく泳ぎにきたのに、厄介事に巻き込まれてしまうなんて。

俺は涼華會長の隣に行って、小聲で話しかけた。

「すいません會長。せっかくってもらったのに、妙なことになってしまったようです」

「そのようね」

會長の顔にはあきらめが浮かんでいる。ブタさんのゲリラライブの時から、ある程度予測していたのかもしれない。

「こうなった以上は、さっさと終わらせてきます」

「ええ。どういうレベルの格闘大會か知らないけど、あなたならきっと瞬殺よ」

「いや、違います」

俺は首を振った。

そんな、一億回も再生されてるチャンネルで本気なんか出せない。普通の高校生活を送れなくなってしまう。

だから――。

「瞬殺、されてきます」

本日の立ち絵公開!

ブタさんこと、高屋敷瑠亜!

いやー、畫像からすでに調子ノリノリですねー。

8/2の発売日まであと一週間!

「S級學園」よろしくお願いします!

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