《【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可すぎる彼たちにグイグイ來られてバレバレです。》15 キャ VS 100人のアウトロー

こんなことだろうと思った。

案の定、である。

清原兄弟。

三男がいっちゃんに手を出して。

次男が、甘音ちゃんを的にして。

ならば長男も何かしでかすだろう――と思っていたところだったのだ。

やつの企みは、こうだ。

俺が「黒に染まれ」の大會に出場しているスキに、甘音ちゃんたちをさらう。

そういう作戦を、ブタさんに吹き込まれたのだ。

ブタは三人への復讐を果たせる。

清原兄弟は、極上のを三人手にれることができる。

両者の利害が一致しての、この作戦だったわけだ。

だが――その企みは挫(くじ)かれてしまった。

俺が阻止したのだ。

ももちー先輩のおかげだ。

撮れ高に気をとられていた俺に、甘音ちゃんたちの危機を知らせてくれたのは彼だ。

おかげで、第二プールに連れ込まれていた三人を助けることができた。

だから――今度は俺が、先輩を助けるターンだ。

ももちー先輩を背中にかばいながら、清原長男と対峙する。

Advertisement

さすがに次男や三男とは違う。

が発する「圧」が違う。

分厚く、そして度の濃い筋

青白い蛇のれ墨が、隆々とした筋の上にうねっている。

顔半分もその蛇に覆われ、細い目がギラギラとっていた。

「ガキが、思い知らせてやる――」

やつは、俺と視線を合わせたまま、ゆっくり後ずさる。

さっきの試合會場の方へと、後ずさっていく。

すでに大會は終わっているが、観客が半分以上は殘っている。

大會「黒に染まれ」に參加した百人のアウトローたちも居殘っている。

ヤンキー、チンピラ、ならず者だ。ウンコ座りでしゃがみ込み、煙草を吸って、酒を飲んで、周囲にゴミと騒音をまき散らしている。

そんな連中が、長男の姿を見かけた途端――。

「おい! 超星(すたー)さんだぜ!」

「不良のカリスマ!」

「マジ? 今からメン限配信? もう撮ってんの?」

「あれ、さっきのブッ飛び野郎じゃね? まだ居たのか?」

口々に、崇め始めた。

長男は得意そうにの端を吊り上げて、大聲で言った。

「これより『黒染ま』のメンバー限定配信を始める!」

百人のアウトローたちが、歓喜の奇聲を発した。

俺は背中に守る桃の髪の先輩に尋ねた。

「ももちー先輩。メンバー限定配信ってなんですか?」

「清原兄弟のオンラインサロンにお金を払ってるメンバーしか見られない、特別な番組よ。視聴者がコアで限られているから、普通の配信より過激なことができるの」

ふうん。

過激、ね……。

長男が演説を続ける。

「今日のテーマは『キャ VS 不良百人』だ。大會參加者百人全員で、このガキと戦ってもらう。タイマンを百回やってもいいし、百人で一斉にかかってもいい。お前らに任せる」

えっ、というどよめきが起きた。

百人分のどよめきだ。

その聲が、視線が、怒濤のように押し寄せてくる。

背中でももちー先輩が足をすくませる気配が伝わってきた。

安心させるため、その細い腰を抱き寄せた。

「大丈夫です。俺が守りますから」

先輩は恥ずかしそうにモジモジして「馬鹿……」とつぶやいたが、俺のに顔をくっつけて離れようとはしなかった。

ヤンキーのひとりが聲をあげた。

「おいおい、何ももちーとイチャついてんだよ! キャ!」

「あんだけかっこ悪い負け方しといて、よく粋がれるなぁ? オオ?」

百人の敵意が束になって、俺のにぶつかってくる。

さっき長男が企畫を宣言した時は、戸いもあったように思う。「いくらなんでも、百人で一人をボコるなんて」という戸いだ。もちろんそれは俺を思いやったわけではなく「勝負にならない」「撮れ高なさすぎ」ということで発したものだろう。

だが、可憐なアイドルをこの手に抱く俺を見て、その戸いは敵意に変わったようだ。

そこにすかさず、長男が油を注ぎに行く。

「さらに追加だ。あのキャから桃原ちとせを取り返したら、ちとせをお前らの好きにしていい。いいか? もう一度言うぞ。『好きにしていい』。ケツは全部この俺が持ってやる。さらに最初にゲットしたやつには、一千萬の賞金を出す!」

再び、百人分のどよめきが起きた。

そこにはもう、戸いはない。

にまみれた聲だった。

「マジかよ、あのももちーを」

「いいの? 配信で?」

「しかも一千萬もらえるって……」

「やべーっしょ、それ、やべえッ!」

「バカ、超星さんならやるんだよ! やれるんだよ!」

「さすが、不良のカリスマ!」

「さすスマ!」

ふーん。

百人の男でよってたかって、の子ひとりを嬲り者にするのが、カリスマか。

どうやら「カリスマ」の定義は、俺が知らないうちに書き換わっていたらしい。

盛り上がる観衆に満足したように、長男が言った。

「オンライン上のコメントも盛り上がってる。そこに大型ビジョンに映すから、リアルもネットも同時に盛り上がろう」

プールの背後にあるイベント用の大型モニターに、配信の様子が映し出されている。

コメントがすごい勢いで畫面を流れている。

■不良三世 すげー超星さん、気前よすぎぃ!!

■瑠亜姫好き好きマン え、ほんとに? ももちーが? え? え?

■シルヴァーナ公爵 今から會場行っても間に合いますか!?

■無頼男 デストローイ!

■クリリソ 悟空! はやくこないでくれーーー!

■はべりん あのキャ、さっきすげー飛んでたヤツじゃんw

■炭酸抜きコーラ オイオイオイ死ぬわアイツw

咎めるようなコメントは一切ない。

配信を見てる連中も、ここに集まった百人と大差はない民度のようだ。

わざわざこの反社兄弟に月謝を払っているような連中、そのモラルと知能は推して知るべしだ。

「どうしたキャくん。今更びびってももう遅いぞ?」

カリスマは勝ち誇ったように言った。

畫がびる訣を教えてやろうか? カネと、暴力と、セックスだ。この三つこそ最大の撮れ高、エンタメなのさ。だから俺たち兄弟が天下を取れる。世の愚民どもがそれを選択したんだ。お前とちとせには、その生贄(ネタ)になってもらう――」

なるほど、貴重なご意見だ。

「ごめんなさい」

か細い聲が、その時聞こえた。

ももちー先輩が、大きな目に涙を浮かべながら、俺を上目遣いに見つめている。

「あたしのせいで巻き込んで。本當にごめんなさい。あんたはただ、の子たちと遊びに來てただけだったのに」

俺はその涙をそっと拭った。

百人から怒號があがる。

「俺は、あなたを泣かせるようなやつを、無條件で憎むことができます。それがカリスマだろうとチャンピオンだろうと、知ったことじゃありません」

そもそも、俺は正義の味方ではない。

俺は、俺が可いと思うの子の味方だ。

だから――。

「ももちー先輩。すぐそばで、見ていてください」

左手での腰を抱いたまま、俺は百人と対峙する。

「『外道』や『裏社會』より〝キャ〟のほうが強いってところをね」

S級學園、全國書店にて発売中です!

このカバーを見かけたら、ぜひお手にとってみてくださいね!

    人が読んでいる<【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可愛すぎる彼女たちにグイグイ來られてバレバレです。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください