《【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】》15話 馴染みは彼を今更好きになった(手遅れ)

上松(あげまつ) 勇太が、神作家カミマツであると、みちるは確信を得た。

その翌朝。

「ゆ、勇太。おはよう」

みちるは上松家の家の前で、勇太が出てくるのを待っていたのだ。

「あれ、みちる? どうしたの?」

勇太は馴染みに気づくと、真っ直ぐに見てきた。

みちるはかぁ……と頬が赤くなって、目をそらしてしまう。

「べ、別に……。同じ學校なんだし、たまには一緒に學校行きましょ」

「? 別に良いけど」

隣を勇太が歩いている。

みちるはその半歩後ろをついていた。

「一緒に學校いくのなんか、小學校以來だね」

「うぇ!? そ、そ、そうね……」

どうしてしまったのだ……相手はキャ高校生。

數日前まで眼中にない相手だった。

ハッキリ言って顔はタイプではない。

なのに、今日の彼は一段と輝いて見える。

「くわぁ……」

「な、なによあんた……寢不足?」

「うん。まあちょっと。遅くまで作業しててさ」

知っている。

カミマツは今日も神エピソードを投稿していた。

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おそらく長い時間、必死になって小説を書いていたのだろう。

そう思うと、彼の眠たげな表も、目の下のクマも、苦労の跡に見えて格好よかった。

……格好良い?

な、何を言っているのだ……? とみちるは揺する。

「どうしたの? 顔赤いけど」

勇太が立ち止まり、顔をのぞき込んでくる。

一気に溫が上がってしまった。

「なっ!?」

ドンッ……! とみちるは彼を思わず突き飛ばしてしまった。

「痛っ」

勇太が餅をつく。

そこでみちるは正気に戻った。

「ち、近づくんじゃ無いわよ!」

「ご、ごめん。どうしたんだよいきなり?」

自分でもよくわからなかった。

ただ……勇太が近くに居たことで、が過剰に反応してしまったのだ。

「熱? 大丈夫? 學校休んだ方が良いんじゃない?」

気を使われるとさらに溫があがる。

「よ、よ、余計なお世話よぉおおお!」

みちるはびながらその場を去って行ったのだった。

ホームルーム前の、學校の教室にて。

みちるは離れた席から、上松 勇太のことをジッと見ていた。

彼は腕枕をして、突っ伏して寢ている。

普段なら気にもとめないその仕草。

だが彼を神作家だと知った後では、なぜか輝いて見えていた。

「おっすー。なにしてるの?」

友達がみちるに聲をかけてきた。

「な、なんでもないわよ……」

「あーん? どうしたー、好きな男子でもできたのかー?」

「ばッ……!? す、す、好きじゃないわよあんなやつ……!」

向こうとしては、からかうつもりで言ったはずだった。

しかしこうも過剰に反応してしまえば、好きな人が居ますと白狀しているようなものである。

「ほー、だれだれ?」

みちるが向いていた方を、友人が見やる。

まずい、視線の先には勇太が……!

「あー、ふーん。なるほど……みちるはああいうのがタイプなんだ……」

ニヤニヤと友人が笑う。

「あ、ち、違うから……!」

「否定しなくていいよ。【中津川(なかつがわ)】くんかっこいーからね」

「へ……?」

友人が指さす先にいたのは、クラスで一番のイケメン【中津川】だ。

本當はその向こうにいる勇太を見ていたのだが、手前の彼を見ていたと勘違いされたらしい。

ホッ……と心で安堵の吐息をつく。

「イケメンでクラスの人気者だし、あんたと中津川とならお似合いのカップルになれるんじゃないの?」

「ああ……そう」

みちるはまるで気のない返事をする。

中津川など眼中になかった。

「……みちるさー、もしかしてだけど……上松(あげまつ)のこと見てたの?」

ドキッ……! と心臓がに悪い跳ね方をする。

「は、はぁ!? な、なんでそうなるのよ!」

「いやだって……中津川(なかつがわ)じゃあないみたいだし……」

リアクションが薄すぎたので、彼に興味がないことがバレてしまったらしい。

「あんなキャ好きなの? みちる?」

「そ、そんなわけないじゃない! だ、誰があんなキモいヤツ……!」

それはとっさに口をついた言葉だった。

弾み、というやつだ。

勇太を見やる。

だが……彼は腕を枕にして眠っていた。

聞かれていないことに、ホッとしていた……。

……ホッとしていた?

「だよねー、あんなチビで、覇気のないやつと、みちるが釣り合うわけないもん」

……気づいたら、みちるは立ち上がっていた。

「どしたん?」

「……トイレッ!」

肩を怒らせながら、みちるは出て行く。

振り返るとまだ、勇太はのんきに眠っていた。

ややあって。

みちるは子トイレのなかにいた。

「……はぁ。まいった」

みちるは便座に座って、うつむいていた。

「なんなの。朝から、アタシ……変だわ」

思えば朝からおかしかった。

小學校以來となる勇太との登校。

彼を目で追っている自分。

見てるだけで、顔が赤くなる……。

「これじゃ……まるで本當に……」

と、そのときだった。

ピコンッ♪

「何……? メッセージ?」

勇太からラインが來ていた。

『大丈夫? 席にいなかったけど……お腹でも痛いの?』

気づけば一時間目の授業が始まっているところだった。

調悪いなら保健室行った方が良いよ?』

そのメッセージを見た瞬間……彼はようやく、気づいた。

「アタシ……勇太のこと……好きなんだ……」

彼に優しい言葉をかけられて、喜んでいる自分がいて……遅まきながら気づいたのだ。

そうだ。

いつだって勇太は、自分に優しかった。

自分が辛そうにしていると調を気遣ってきた。

これは今に始まったことではない、子供の時からずっとだ。

……思えば、彼はとてもいい男だった気がする。

それによく考えれば、彼が自分で正を明かしたとき、噓をつく理由が特になかった。

なぜもっと彼の話を真剣に聞いてあげなかったのか。

なぜ、自分は彼を振ってしまったのか。

「これからどうしよう……」

彼を振った後になってから、彼を好きになってしまった。

もう取り返しが付かない……。

「……待って。本當に取り返しが付かないの……?」

ふと、みちるは気づく。

「まだやり直せるんじゃない……?」

確かにここ數日、勇太はアリッサや由梨恵(ゆりえ)と言った達となぜか流を持っている。

だが、まだ數日の仲だ。

一方でみちると勇太には、10年間近い積み重ねがある。

家が近所で、い頃からずっと一緒に居た。

そうだ、ポっと出の達と比べたら、自分の方が勇太により思ってもらっているはず。

「そうよ、まだあいつ、アタシのこと好きなんじゃない……? チャンスはあるんじゃないかしら?」

そんな都合のいい話があるわけがない。

だがみちるのなかでは、なぜか知らないが勝算があるらしい。

さっそくみちるは、こんなラインを送った。

『気が変わったわ。あんたと付き合ってあげてもいいわよ』

「よしっ……!」

……何がよしなのかさっぱりだが。

みちるはこれで、勇太が自分に振り向いてくれると思っていた。

神作家と彼氏が同時に手にると思うと、浮かれた気分になる。

「さぁさっさとオッケーの返事送ってきなさい! ふふっ……これであいつが手にったら、配信で自慢しまくっちゃおーっと!」

……そんな風に浮かれてると、こんな返事が來た。

『元気みたいだね。安心した』

以上。

……え?

「こ、これだけ? 告白の返事は? ねえ!」

だが、いくら待ってもメッセージが來なかった。

痺れを切らして返事を催促する。

ほどなくして通知が來た。

「ったく、遅いのよ。さっさとはいって言えばいいのに。どれどれ…………」

『ごめん、付き合うのは無理』

「…………え゛?」

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