《【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】》22話 イケメン同業者からライバル視されてる
あくる日、僕は芽依(めい)さんとの打ち合わせのため、都某所の出版社までやってきた。
「わぁ……おっきービルだねぇ」
僕の隣には、変裝した人気聲優、駒ヶ(こまがね) 由梨恵(ゆりえ)がいる。
ちょうど彼も、僕と同じ用事で、芽依さんから呼び出されたんだってさ。
「あれ? り口の前に凄い人だかり……なんだろう?」
「さぁ……? アイドルでもいるのかな?」
僕の隣にもアイドル聲優いるけどね。
そう思いながら近づいてみると、騒ぎの原因に気づく。
真っ白なスーツを著込んだイケメンが、若い子達を侍らしていた。
「きゃー! 王子サマー!」「サインくださーい!」「王子さまー!」
「王子……?」
はて、と由梨恵が首をかしげる。
僕は【彼】を見て気づいた。
向こうも僕を見て、手を振る。
「やぁやぁ! これは我がライバルではないかねっ!」
「ライバル……?」
逆側に首をかしげる由梨恵。
近づいてきたのは、背の高い、イケメンの男だ。
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「ひ、久しぶりですね……【白馬(はくば)】先生」
爽やかイケメンフェイス。
きらりとる真っ白な歯。
白スーツに赤いバラをに挿した……どこぞの王子サマかよって見た目。
「勇太くん。どちら様?」
「えっと……この人は……」
すると白馬先生は「おっとストップ」と手を出して僕の発言を遮る。
「初めましてお嬢さん。私は白馬。【白馬(はくば) 王子(おうじ)】。ラノベ作家で、モデルで、曹司。三拍子そろったスーパー作家とは私のことだ!」
由梨恵に熱烈な挨拶をする白馬先生。
一方で彼は完全に「は、はぁ……」と引き気味だった。
「こんなところで立ち話もあれだから、中にろうか我がライバルよ」
「そ、そうっすね……」
白馬先生は取り巻きに手を振って、僕らは中にる。
エスカレーターにのって編集部までいく。
「あの……白馬先生」
「何かねお嬢さん?」
「作家でアイドルで曹司って……本當なんですか?」
「なっ……! この私を知らない!? だってぇ! それはいかん。是非とも覚えていってくれたまえ」
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バッ……! と白馬先生が懐から雑誌を取り出す。
青年向けのファッション雑誌だった。
表紙には白馬先生が寫っている。
『イケメンモデルラノベ作家【白馬 王子】特集!』と書かれている。
「肩書きが凄いだろう? どうだいボクってすごいだろう?」
自分で言っちゃうんだよなぁこのひと。
由梨恵は「わ、わーす、すごぉい」と引き気味にいった。
「白馬先生はあの大手製薬會社【白馬製薬】の曹司なんだ。それでプロのモデルもやってる、凄い人なんだよ」
「わっはっは! 我がライバルよ、それだけでは言葉足らずだよ!」
バッ……! と今度は1冊の文庫ライトノベルを取り出す。
「あ、この作品なら知ってます。【アーツ・マジック・オンライン】」
「そう! 略してAMO! 【このライトノベルがヤベーイ・スゲーイ!】で3年連続2位をキープしている、モンスターコンテンツ! その作者がこのボク、白馬王子なのさっ! すごさがわかったかねぇ~?」
AMOはもの凄い作品だ。
何回もアニメ化してるし、劇場版アニメだって作られた。
VRものラノベの代表格と言える作品である。
「AMOも好調ですし、今アニメやってる【超絶加速ハイパーリンカー】も良いアニメですよね」
「はっは! ありがとう! しかし我がライバルよ、君が言うと嫌味に聞こえるなっ!」
「え、な、なんで……?」
ぎりっ、と白馬先生が歯がみして言う。
「世間での話題は、ハイパーリンカーよりも、劇場版【デジマス 天空無限闘技場編】だろう?」
「いや……ハイパーリンカーだって、放送のたびに毎回ツイッタートレンドの上位にくるじゃないですか」
僕も見てる。
ハイパーリンカーは凄い面白い。
「ありがとう我がライバルよ。君のような神クラスの作家に褒められるとうれしくなる……だが、同時に悔しい! ひっじょーに悔しい!」
だんだんっ! と白馬先生が地団駄を踏む。
「ハイパーリンカー、第1巻の円盤の売り上げを知ってるかい?」
円盤とはブルーレイやDVDなど、映像ソフトのことだ。
「たしか1萬枚ですよね。今のアニメ業界じゃ、普通に凄い數字だと思います」
「そのとおり。凄い數字だ。おかげで二期も決定している」
「マジっすか! すごいじゃないですか」
だが白馬先生の表は暗い。
「ああ。しかし君の傑作、アニメ・デジマス1期には敵わなかった……!」
デジマス1期の円盤は、なんとびっくり5萬枚。
ハイパーリンカーの5倍だ。
「……円盤が5萬も売れた作品など今まで見たことがない。完敗だ……実に、悔しい……!」
くっ……! とイケメン作家が歯がみしている。
「しかーし! 君に負けたのはあくまでもストーリー、つまり私の技量が君に劣っていただけだ! スタッフや聲優陣は君のデジマスに負けては居ない! そこは勘違いしないでくれたまえよ!」
「は、はい……もちろん」
「うむ、それでいい」
ちーん、とエレベーターが編集部の階まで到達する。
「勇太くんすごいね……AMOの作者から、ライバル視されてるんだ」
由梨恵がキラキラとした眼を僕に向ける。
「いやライバルじゃないって何回も言ってるんだけど……」
ラノベ作家は、漫畫家と違って連載が雑誌ではない。
連載枠を競い合う中ではないのだ。厳にはライバルなんて存在しない。
「ふっ……確かに。君からしたら私など、眼中にないのかも知れないね」
「あ、いや! そういう意味じゃなくってですね!」
「たしかに【このライトノベルがヤベーイ・スゲーイ】で、直近3年で総合1位を取っている、デジマスの作者と比べたら、私なんてまだまださ……」
「いや、AMOの2位も普通にすごいですよ。だってラノベ市場全で2番目に凄いってことですし」
「いいのだ。私は敗者。君がチャンピオンさ……カミマツ先生。ナンバーワンは君だ」
今更だけど同業者なので、白馬先生は僕とは顔見知り(本名までは知らないけど)。
「だがしかし! 君みたいな最強の神作家が常に前を走ってくれているおかげで、私のやる気の炎はメラメラと燃え上がって、盡きることはないのさ!」
きらん、と白馬先生が白い歯を輝かせる。
「改めてだけど、デジマス映畫、最高だったよ。完敗さ。見事な映像、最高のストーリー……完璧な劇場版だった。この私が賞賛を送ろう」
「ありがとうございます。うれしいです」
にゅっ、と白馬先生が手を出してくる。
「この調子で走り続けてくれたまえナンバー1。いずれこのナンバー2が追い越して見せよう」
「きょ、恐です……次のも白馬先生のアニメに負けないように、がんばります」
ぎゅっ、と僕らは握手する。
「うむ、……ん? 次? アニメ……? まっ、まさか君……」
愕然とした表を、白馬先生が浮かべる。
「ひょっとして……いや、あり得ない。それはあり得ないか……」
「どうしたんです?」
白馬先生が考え込む姿で言う。
「我がライバルよ。もしかして……君が先日なろうにアップした作品……アニメ化されるのかい……?」
「え、あ、はい」
がくん……と白馬先生が顎を大きく開く。
「ふ、ふふっ……そうかい……ま、まあ、私のハイパーリンカーも、1巻のときからアニメ化企畫が立ち上がっていたし……」
前に父さんが言っていた、人気作家の1巻と同時にアニメ化発表された作品ってやつ。
あれが白馬先生の、超絶加速ハイパーリンカーだ。
「しかし……そうか。なろうにあげて1週間もたたぬうちから、アニメ化か……書籍がまだできてないのに……ふ、ふふ……」
イケメン作家が崩れ落ちそうになる。
「だ、大丈夫ですか……?」
「あ、ありがとうお嬢さん……」
ふらり、と白馬先生が立ち上がる。
「さすが我が最大の障害にして強敵(ライバル)。じゃ、今日はアニメの打合かい? もう制作會社も決まったの?」
「さすがにそれまでは……普通に軽い打ち合わせって言ってました」
「そうか……デジマスに続いて僕心もアニメ化かい。悔しいよ。そんな若くから二作も功するなんて」
「いや白馬先生も十分若いですし、二作もアニメ化されてるじゃないですか」
白馬先生は25歳だっていっていた。
「どちらも私が20代になってからだ。10代のうちからアニメ化2本は、ハッキリ言って次元が違うよ。素晴らしい才能さ」
はぁ……と白馬先生がため息をつく。
「だが負けていないがね!」
すぐに回復する先生。
「今日は新シリーズの打ち合わせなんだ。この作品で次のアニメ化を狙う!」
「え!? 白馬先生の新シリーズ!? 読みたいです!」
僕は結構ラノベを読む。
白馬先生の作品は大好きだ。
「今度もSFファンタジーですか?」
「もちろん! タイトルは【絶対零度の孤獨】」
「わぁ! か、かっこいい……絶対買いますね!」
「ありがとう我が宿敵よ。私も君の【僕心】の書籍が出たら買うよ」
「ありがとうございます」
編集部まで到達する。
お互いに別の編集者が擔當なので、そこで別れる。
「ではな我がライバル! 僕心の書籍たのしみにしているよ!」
白馬先生は笑って去って行った。
「ふふっ♡」
一連のやりとりを見ていた由梨恵が可らしく笑う。
「あ、ごめん。白馬先生の新作楽しみにしてるって言ってた勇太くんが、可らしくって♡」
な、なんだか恥ずかしくなってきた……。
「でもほんと凄いんだね勇太くんって。業界1位なんだ……売れてるなぁとは思ってたけど、私ラノベ業界って知らなかったからさ。ほんと、凄い人だ」
すごいすごい、と由梨恵が僕を褒めてくれたのだった。
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