《【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】》23話 愚かな編集者、実はすごい副編集長

僕は聲優の由梨恵(ゆりえ)とともに、書籍を出してもらっている出版社・編集部へとやってきた。

「打ち合わせってどこでやる?」

「芽依(めい)さんに聞かないとわからないかな」

擔當編集の芽依さんからは、17時に編集部に來てと連絡をけていた。

編集部り口から、中の様子をうかがう。

けど彼の姿はない。

「連絡してみようかな」

と、そのときだった。

「カミマツ先生ー!」

突然僕に聲をかける人が居た。

芽依さん……? と思ったけど違った。

「やぁどうもぉ先生!」

「生カミマツさまだwうはwすげぇw」

「……?」

よく知らない人たちだった。

首からネームプレートを提げていて、編集者であることがわかる。

中年と若そうな編集者達に、僕らは囲まれた。

ちなみに由梨恵は変裝しているため、素がバレていない。

「やー先生読みましたよ! 僕心! もうとっても面白かったです!」

「自分もっす! なんつーか、まじはんぱなかったっす! これは1億部くらい売れちゃう的な!」

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「おいおい一億部は言い過ぎだろう! ま、今回も売れに売れまくるだろうけどな! さっすがカミマツ先生!」

「はぁ……ど、ども……」

やばい、知らない人がめっちゃぐいぐいくる。

怖い……。

基本キャなので、知らない人にからんでもらいたくないのに……。

「あ、あの……め、芽依さん……佐久平(さくだいら)さんに用事があるんで……できれば……」

呼んできてしい、と言おうとする。

けど編集者二名は、こっちの言うことを聞いてくれない。

それどころか……。

「ところで先生、ぜひわたしとも、書き下ろしの仕事を、ご一緒させていただけないですかねぇ~」

中年編集者が、手をこすり合わせながら、びへつらうような笑みを浮かべて言う。

「デジマス大ヒットしてるんですから! 書き下ろしも絶対ヒットしますよ! やりましょうよ是非!」

「あ、えっと……す、すみません。そういうのは、芽依さん……擔當編集を通してもらわないと……」

「堅いこと言わずに! いいじゃないですか! ね! ね! わたしにもカミマツ作品に絡ませてくださいよぉ~」

一方で若い方の編集がこんなこと言ってきた。

「せんせ、サインくんないっすかー?」

「さ、サイン……?」

「そーっす。おれの彼がぁ、デジマスの大ファンでぇ、作者のサインほしーっていってたんすよぉw」

「は、はあ……」

え、人のためにサインしいの?

そういう私を仕事に持ち出して良いの……?

「あ、あの……サインは……その……」

「えーいいじゃないっすかぁw けちけちしないでくださいよぉw」

ちら、と僕は壁掛けの時計を見やる。

約束の17時を過ぎていた。

「あ、あの……それより芽依さんを……」

しかし編集ふたりは、僕の話を聞いてくれない。

「書き下ろし! やりましょう! ぜひそうしましょう! 予定組んどきますね!」

「サインペンとってくるんでちょっち待っててくださいよw」

ああもう! 話聞いてくれないよ!

「ちょ、ちょっとあなたたち」

さすがに見かねた由梨恵が、一歩前に出る。

「カミマツ先生が嫌がってるじゃないですか!」

けれど編集2人は由梨恵(変裝)を見て、ふん……と馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

「小娘が。引っ込んでいろ。今は仕事の話をしているんだ」

「つか関係者じゃない人が勝手にっちゃダメじゃないっすか。でてったでてった」

ドンッ……! と若い編集が、由梨恵を

どつく。

「きゃっ……!」

「ゆ、由梨恵!」

がバランスを崩した、そのときだった。

「おっと」

ぱしっ、と誰かが由梨恵を後ろから支えた。

「大丈夫かい、ゆりたん」

「あ、ゆ、勇太くんの……」

「父さんっ!」

副編集の父さんが、僕らの元へやってきていたのだ。

「坂城くん、それに平田くん。こんなところで……何をしているのかな?」

穏やかな調子で、編集者ふたりを見やる父さん。

坂城が年取ってる方で、平田が若い方の編集らしい。

「ふ、副編集長……」

「さ、さーせんw」

坂城と平田はたじろいでいる。

「何があったのかな? ちょっと教えて」

父さんが由梨恵に尋ねる。

は簡潔に事を話す。

スッ……と父さんの表が、変わった。

「坂城くん。カミマツ先生の擔當編集は佐久平くんだ。君も知っているよね?」

「は、はい……」

「擔當を通さずに仕事を依頼するのは、さすがに常識を欠いているとわかるよね?」

「す、すみません……」

父さんは穏やかな調子を崩さない。

でも、表が……真剣だった。

「カミマツ先生は確かに売れっ子だよ。彼と仕事をすれば自分の評価が上がる。だから一緒に仕事をしたい。その気持ちはよくわかるよ」

けどね、と父さんが続ける。

「君の不快な発言が原因で、カミマツ先生が嫌な思いをしたら? そのせいで、もううちで書いてもらえなくなったら? 君は責任を取れるのかな?」

「た、たいへん……もうしわけございません……」

坂城は汗をかきながら、ペコペコと頭を下げる。

「うん。反省すれば良い。けど謝る相手はぼくじゃないよね?」

「は、はい……先生」

坂城がその場でしゃがみ込んで、土下座してきたのだ。

「大変ご無禮を働いてしまい、申し訳ございませんでしたぁ!」

大人から土下座されて戸う。

「先生、許してあげても良いかな? 次から同じことが起きないよう、社で厳しく注意しておくから」

「う、うん……」

さて、と次に父さんは、若い方の編集、平田を見る。

「平田くん」

「は、はい……」

今の一幕を見ていて、舐めた態度を取っていた平田も、さすがにビビっていた。

「カミマツ先生は基本的にプライベートでのサインを止してる。なぜかわかるかな?」

「わ、わかんねーっす……」

「そうか。知らなかったのか。じゃあ仕方ないね」

父さんは僕の肩を叩く。

「大ヒット作デジマス、その作者のサインとなればプレミアが付く。つまりサインだけで金銭的な価値を持つんだ。だから、トラブルの元になる。ゆえに彼にはプライベートサインを止してほしいとこちらから頼んでいるんだよ」

「そ、そうなんすか……」

「うん。君は知らなかったようだから、今回は仕方ない。けど次からは同じような無禮なマネはしないように。いいね?」

「わ、わかりました! ほんと先生、すんませんでしたっ!」

バッ……! と平田が腰を直角にして頭を下げる。

「平田くん」

「は、はい……」

厳しい表で、平田を注意する。

「言葉遣いがなっていない。カミマツ先生は年下だが、仕事相手だ。しかも超お得意様だ。先生は優しいから何も言ってこないが、言葉遣いに厳しい相手だったら今頃仕事が消えてる危険もあったんだぞ」

「す、す、すみませんでした……!」

こちらも滝のような汗をかきながら、平田が頭を下げる。

ふたりの編集がしょぼくれた表で突っ立ってる。

「カミマツ先生。それに由梨恵さん」

「あ、あ、は、はい……」「はい」

深く、父さんが頭を下げる。

「部下が失禮をしてしまい、大変申し訳なかった。心からお詫びします」

……父さん。

「だ、大丈夫です。ほんと」

「私も。もう頭上げてください」

ホッと安堵の吐息をついて、父さんが頭を上げる。

「よし。じゃあふたりとも、仕事に戻りなさい」

「「はいっ……!」」

編集者達が気まずそうな表で、ぺこぺこ頭を下げながら消えていく。

「さて……今日は芽依くんたちと會議だったね。今日は上の會議室取ってるから。ぼくが案しよう」

芽依さんは他の作家さんと打ち合わせが長引いているんだってさ。

僕は父さんとともに、階段を上っていく。

「お父さん……會社だと雰囲気違うんだね」

由梨恵が僕の隣でこっそりと耳打ちする。

「う、うん……そうだね」

家だと結構けないじだけど、そこはさすが副編集長だ。

上の階に來て、廊下を歩く。

「勇太。ゆりたん。ほんとごめんね」

ぺこっ、と父さんが軽く頭を下げる。

「あとでちゃんと編集長にも報告して、厳重注意してもらうから」

「いや……ちょっと厳しくない?」

「でもふたりは大事な大事な仕事相手だからね」

父さんは會議室の前までやってくる。

「相手の機嫌を損ねて、會社に損害を與えた……なんて事例めちゃくちゃ多いからさ。こういうのは、再発防止をちゃんとしておかないとダメなんだ」

僕も由梨恵も目を丸くする。

……ああ、父さん。

本當は凄い人だったんだね。

家ではわざとあんな風に振る舞っているんだ……。

ちょっと、いやかなり見直しちゃった!

「ん? どうしたんだい?」

「いえ……勇太くんのお父さん、カッコいいなって思ったので」

すると父さんは微笑むと……。

「でっへへ~♡ そうかなぁ~♡ うひょー! ゆりたんにほめられちったー!」

……ううーん、すごい人なんだよね、父さん?

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