《【コミカライズ&電子書籍化決定】大好きだったはずの婚約者に別れを告げたら、隠れていた才能が花開きました》熱を帯びた

本日は2話更新しています。

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(あの時、泣きそうになっていた私に優しく手を差しべてくださったのが、アルバート様だったなんて……)

シルヴィアは、その夜會でランダルが別の令嬢と踴るのを眺めながら、瞳に涙を浮かべていたのだった。もう、ランダルが他の令嬢とダンスをする姿も見慣れたはずだったのに、なぜかその日は、自分ではない令嬢の手を取るランダルの笑顔が心に刺さって、涙を溢さないようにと堪えたことが記憶に殘っていた。

シルヴィアは當時、滲む視界に、優しく聲を掛けてくれたしい顔立ちの青年をぼんやりと映しながら、彼に涙を見られるのも恥ずかしく、またランダルの様子も気になって、結局青年の顔をまともに見られないままにダンスを終えたのだった。青年の溫かな気遣いをじながらも、余裕のなかったシルヴィアは、ほとんど彼と言葉をわすこともなく、その日の夜會を後にしていた。

なぜ、アルバートほどの青年にダンスにわれたことを思い出せなかったのだろうかと、シルヴィアは殘念に思う反面、今になってようやく、歪んだランダルのに縛られていた當時の自分を、冷靜に思い返せている部分もあった。

(あの時、私はランダル様しか見えていなかったし、その後ランダル様を怒らせてしまった。だから、もう繰り返さないようにと、きっと記憶に蓋をしていたのね……)

あの日の夜會を申し訳なく思い出しながら、シルヴィアはアルバートの顔を見つめた。

「あの時は……溫かなお気遣いをありがとうございました。お禮もきちんとお伝えできないままになってしまい、すみません。……アルバート様は、どうしてあの時、私に聲を掛けてくださったのですか?」

アルバートは、包み込むような眼差しをシルヴィアに向けた。

「偶然見掛けた君の悲しそうな顔がどうしても気になって、放っておけなかったんだ。結局、君の名前も聞けないままになってしまったが、君の手を取った時の溫かな覚や、優しい雰囲気、それにその澄んだ瞳が印象深くて、その後もずっと忘れられなくてね」

アルバートの優しく真っ直ぐな瞳に、シルヴィアはの奧が熱く疼くのをじた。

(では、クリストファー様が言っていた、アルバート様の初というのは……)

シルヴィアは、まさかとは思いながらも、もしもそうであったならと、心の中で祈らずにはいられなかった。

「……先日の夜會で私を助けてくださった時、アルバート様は私に気付いていらしたのですか?」

「涙を流す君を見て、すぐにあの時のだとわかったよ。ただ、君に霊の加護があることには、あの時になって初めて気付いた。思い返せば、昔、君から溫かな覚を覚えたのも、霊の加護による力をじたからだったのかもしれないが、俺もまだ當時は、加護の力が完全には発現していなかったからね」

アルバートは、シルヴィアの腰にそっと手を回して、新しく流れ出した曲に合わせて軽やかに彼をリードしながら、らかくシルヴィアに微笑んだ。

「君が泣いている姿には痛んだが、それでも、あの時君にまた會えたことが、言葉では簡単に言い表せないくらいに嬉しかった。……でも、君に霊の加護があると気付いて、俺の教え子になることがわかっていたから、俺の気持ちで君に迷を掛ける訳にはいかなかったからね。だから、君に何と言っていいものか、考えあぐねたままにここまで來てしまったが……」

「迷だなんて、そんな……!」

アルバートは、真っ赤になったシルヴィアにふっと笑みを深めて、曲に合わせてふわりと回転させると、シルヴィアを抱き留めながら彼の瞳を覗き込んだ。

「君の迷でないなら、この曲を踴り終えたら、し君の時間をもらってもいいかい? 君に伝えたいことがあるんだ」

「はい」

シルヴィアは、アルバートの言葉に息を飲みながらこくりと頷いた。アルバートのダンスのリードは、シルヴィアのペースに優しく合わせたもので、シルヴィアがステップを踏みやすいように、自然なきでアルバートがを支えてくれているのがわかった。

シルヴィアは、高鳴るを抱えて、夢ならどうか覚めないでしいと願いながら、アルバートの腕にを任せていた。

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