《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》はやく會いたい

翌日、私は一日中ほとんどの時間を宿屋で過ごした。朝一番で買ってきた便箋にアンナへの言葉をみっちり綴って、ちょっとした本くらいの厚みになったところで「とりあえず伝えるべきことはこれで全部書けているはず」と強引に封筒を閉じる。

家を出た時に置いてきた手紙には書ききれなかった、々な話が思ったより長くなってしまった。アンナは私のを第一に案じてくれていると分かっている。心配をかけてしまった事と、一人で勝手に出奔した事に対する謝罪。この手紙を託したフレドさんが信頼に足る相手だと言う私の保証も忘れずに記した。

あとは、アンナなら手紙を見れば私の字だとすぐ分かるだろうけど、間違いなく私本人がんで書いたものだと分かるように所々私達二人にとって思い出深い事柄を絡ませて書いておく。

フレドさんに持って行ってもらって、現地でアンナに渡してもらう予定の手紙だ。當然、私はアンナをここに呼びたいと思っているが、それを決定事項として話は進められない。彼に選んでもらう、そのために書いた。

本人は、あまり思い出のないに奉公に出された上に不仲だと言っていたがアンナにはあの國に家族がいる。他にも離れられない事があるかもしれない。

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選択できるようにはしているが、心ではアンナとまた一緒に過ごしたいし、私を選んでしいと思ってるのがきっとバレバレだろうけど。

長い時間をかけてやっと手紙を書き終えた私は、フレドさんに託す基礎魔導回路図を清書して、力になってくれたお禮にと心ばかりの品も用意した。

この宿は向けで、防犯がしっかりしているがシャワールームとトイレが共用だから……耐熱パネルを敷いても部屋の床では錬金窯はさすがに使えない。あの狩猟會用に用意していた、「もしもの時用」の自作ポーションの流用だがこれをせめて贈らせてもらおう。

いや今の「駆け出し冒険者」のでは手にらない材料も使ってるし、ここで新しく作るものより間違いなく能は良い。珍しく納得できる品質になっていたし、きっとあっても困らない程度には役に立つはずだ。

いつかちゃんとしたお禮を渡したいので、心置きなくけ取ってもらえるくらいに稼げるようにならないと。

アンナに向けて書いた手紙と一緒に、運んでもらうための回路図を渡しに行くと、案の定フレドさんにポーションをけ取るのを遠慮されてしまう。

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「いや、リアナちゃんが『自分が作ったものにしては中々の能』って言うようなもの貰いたくない! 怖い! 市場価格いくらするのそれ?!」

「大丈夫です! ちゃんと使いになるものにはなってますから」

「うわぁ自覚してないから話がややこしい!」

やだやだと首を振るフレドさんに半ば押し付けるようにけ取ってもらったが、「戻ってくるまでに使わなかったら返すからね」と念を押すように言われてしまい、私はそれをれた。まぁ、怪我がないのは良い事だし……

でも私の親友を、私の代わりに連れてきてもらうのだから本來ならばこんなお禮では足りないくらいなのだが。

當然私では、ギルドを通して正式に依頼することは出來ないためフレドさんは「無事回路図を屆けて依頼を終えたら個人的な休暇としてついでにクロンヘイムの王都に旅行に行く」というていを取ってくれるという。本當に何から何まで細かく気を使っていただいて謝しかない。

ただでさえ「戻ってきてから、功報酬でいい」と言って、アンナに使う事になる旅費しかまだけ取ってもらっていないのに。

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借りばかり大きくなってしまうのが申し訳ない。恩返しができるようにしでも早く立派な冒険者になりたいと強く思った。

晝前に出発すると言うフレドさんに渡すものは渡したので、私は宿に戻って夕飯の時間まで寢ることにした。

昨日は手紙に書く文面を考えてろくに眠れなかったし、今朝は早くに目が覚めて、さっきまでずっと文機に向かって集中していたので気を張っていたようだ。

初心者講習でも「必要ないって思ってても休息日は定期的にれなければダメ」って言われたし、今日は最初から休日だったのだと思おう。冒険者三日目でもう休日なんて、とちょっと罪悪じつつ、まだが高い時間にベッドに橫になるのはとても気持ちが良かった。「これでアンナにちゃんと事を説明して、こちらに招ける」と安心したのが一番大きいが。

その日は一歩も宿屋から出ずに一日を終えた私だったが、翌日は當然冒険者ギルドに向かった。

あの魔道の商品化に當たって一般的な冒険者としては大金が手にったが、これをあてにする訳にはいかない。この宿屋ではなくアンナと一緒に暮らすためのちゃんとした部屋を借りられる収を得られるようにならなければだし、そのためには冒険者として緑札くらいにならないと賃貸契約は難しい。

ギルドへの貢獻度を優先して依頼をこなしつつ、部屋を借りてアンナと暮らす余裕があるくらいに稼がないと。

そのためには薬草採取などの納品だけではちょっと。部屋を借りる時の保証金と1年分くらいの生活費は魔道の商品化の契約金でまかなえるだろうが、依頼をけずにずっと過ごしてたら不自然だ。冒険者として稼いでその生活を維持しないとならない。

一昨日の報酬では毎日こなしても難しいだろう。フレドさんがアンナを連れて戻ってくる予定の約一月後までには収を安定させたい。

依頼として出てる討伐をけるのは私のランクでは不安視されるだろうから、採取のついでに常設で募集しているような魔を積極的に討伐して納品するなど、考えつく限りをする必要があるだろう。

しっかり稼ぐぞと意気込んでギルドの扉を開けた私の勢いは、しかしすぐさま削がれてしまった。

依頼の諾手続きをしに番號札を持って付に行った途端、「ああ! リアナちゃん、あなたの事を待ってたのよ!!」と言われて別室に連れていかれてしまったのだ。

「まず、冒険者ギルドとして謝罪させていただきたい。大変申し訳ない……!」

応接室としても使われているらしいギルドマスターの執務室に案された私は、そこで恭しく謝罪をけていた。フレドさんと親し気に話していた、強面だが人の良さそうな男――サジェさんが、今は申し訳なさそうに小さくなっている。

その隣で頭を下げているのはダーリヤさんともう一人、買取部門の責任者らしい男の人がいる。

どうやら、一昨日に納品した薬草の評定が間違っていたようで、評価を訂正した上でその差額を渡したいという事らしかった。

間違ってたというのは正しい表現ではないか。納品を擔當した職員が、怪我で療養中の冒険者だったのだが。その人がわざと不當な評価をしたらしく、非正規とはいえ雇っていた職員の職務をきちんと監督出來ていなかったと、こうしてギルドマスター直々の謝罪に発展してしまったらしい。

何でも今回の他にも若いの子に、依頼達評価をたてに連絡先を聞いたり食事に行ったり依頼に同行させたりをしていたらしく、余罪を追及してきちんと処罰するとか……別件は私に関係ないので、報酬が増えると言うなら私については被害は無いので再発が無いようにしてもらって終わりでいいと答えた。

そうして訂正してもらった評定をけ取ると『特優』と書かれていて、私は目を疑ってしまった。

今回は、私の納品した薬草を錬金協會が買い取り、それを「あまりにも処理が素晴らしい」と騒ぎになって誰が納品したか、その時の買い取り評価などを調べて判明したそうだ。

……ほんとかしら。

私はその話に懐疑的になった。

だって、あれは最低限の処理しかしてなかったのに。初級魔法に分類されるもの以外を使えるのは不自然だと言われたことを厳守して、採取した薬草に魔的な時間停止処置を兼ねたパッキングなどは當然、時間停滯魔もかけていない。

劣化を防ぐための遮や真空を施す魔法や容も使っていないのに。まぁルーマツグミ草みたいなありふれた薬草にそこまでする事は普通はないけど……

……いや、地域が変われば文化も変わるとフレドさんが言っていたじゃないか。

私が「駆け出し冒険者も知っているような最低限の処理」と思っていたあれは、ここでは広く知られていない知識だったのかもしれない。

錬金や薬草學についてクロンヘイムとそこまで差はないと思ってたのだけど、目立つような事をしてしまったのかな……。

初心者講習では、「依頼で納品するものは出來るだけ丁寧に、キレイに取ってきて、魔やおおまかな泥汚れとかは落としてから納品すると『狀態が良い』って評価が上がりやすくなるぞ」って教えていたし、このくらいも「出來るだけキレイに納品できるように新人冒険者なりに頑張った」にると思ってたんだけど。どうやら失敗してしまったようだ。

「それにしても、隨分丁寧な処理だったね。見せてもらった俺もだけど、何より錬金師が心してたよ」

「私に技を教えたお祖父ちゃんは猟師でしたけど、何分田舎だったので々頼まれて獲以外に薬草なんかも採ってくる事が多くて。素材ごとの処理の仕方なんかも叩き込まれたんです。こんなに評価してもらえるなんてびっくりしました」

私はよどみなくそう答えた。

私の、「リアナ」の設定に矛盾しないように説明を組み立てる。

「そうだなぁ。あの買い取り金額で疑問に思わなかったみたいだもんなぁ。自分の技の価値を分かってないってフレドが言ってたけど、ほんとらしい。……あれだけ丁寧な処理ができるのに、そのお祖父ちゃんは褒めてくれなかったのかい?」

「そうですね、まだまだだっていつも言われてました」

「こりゃあ厳しいお師匠さんに育てられたんだね」

サジェさんは笑って、「ここからは別の話をしたいんだけど」と居ずまいを正した。

「うちの街の錬金協會から、君に指名依頼が出てるんだ」

「指名依頼? でもそれってある程度経験を積んだベテランの方に出されるんじゃないですか?」

「あんなにキレイに薬草を採って來れるなら、指名が出てもおかしくないさ」

なるほど。単純な強さなど以外にもこんな需要があるのか。

提示された報酬の金額に惹かれて、私はいくつかの納品依頼をけることをほぼ即決で決めてしまった。

これらは通年不足しているので、あればあるだけしいのだそう。完全に歩合となる報酬に、私はやる気を出した。と言っても生態系を破壊するような量は採らないけど。

「當然、森の奧なんかじゃないと生えてないこの辺を採取する時はギルドから護衛を付ける」

まずは、私を連れて行って問題なく行って帰って來れるか確認するのにお試しをしたいらしく、3日後の予定を聞かれた。私という採取だけの足手まといがいて大丈夫か、慣らしを兼ねて確認したいのだろう。

元々毎日何か依頼をけるつもりだった私はそれを了承して、今日は今日で指名依頼のリストにあった、森のごく淺い位置で採取できる薬草を早速採りに行く事にした。

私はまばらに木の生える森のり口を歩きながら、一つの結論に思い當たっていた。

多分このくらいの処理を出來る冒険者は他にもたくさんいるんだろうけど、新人である私なら安い金額で依頼を出せる。だから指名が発生したのではないか。うん、きっとそうね。

どれも希な素材ではないが、狀態が良いと評価されて上乗せがもらえるなら立派な収源になる。

張り切ってリストを見ながら採取を行った私は、その日の報酬を計算してこれなら部屋を借りて二人暮らしが出來る十分な収になるな、と顔をほころばせた。

はやく二人に會いたい。

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