《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》目を背ける先は

どうか二度とあのが戻って來ませんように。

私は毎日神様にお祈りをする。都會はも土地もすごく高いって教わったけど。アジェット家はその王都の一等地に広い庭付きの豪邸を持っている。ただの庭だけじゃなくてそこにはこんな豪華な禮拝堂まであるのだ。

広々とした庭には高価な魔道で結界を張った魔法訓練用のコートも。遊歩道に、絵本に出てくるような素敵なガゼボまで。なんて贅沢なんだろう。運良くこの家に生まれただけで、この全てを「當たり前」として生きてきたなんて。やっぱりリリアーヌはズルい。

足音がしてまぶたを開くと、私の「専屬侍」って人が視界の端にわざわざやってきて頭を下げていた。何してんのと思いかけて、ああそうだ、と思い出した。使用人は自分から貴族に聲をかけちゃいけないんだった。用がある時はああやって聲をかけられるのを待たなきゃいけないんだって。

お姫様みたいにお世話されるのはいい気分だけど、貴族ってほんとこういう所はめんどくさいよね。

Advertisement

「なぁに?」

「ニナお嬢様、朝食のお時間でございます」

「わかりました。今行きますね」

膝をついて、指を組んで、祈りを捧げてた私は立ち上がる。制服のスカートが汚れないようにと床に敷いていた禮拝用の布を、侍が別の使用人に片付けるように言ってるのを聞きながら朝食用のサロンに向かった。

「ニナちゃん、おはよう」

「おはようございます、お義母さま」

「またお祈りをしてくれてたの?」

「はい、一日も早くリリアーヌお義姉さまが見つかりますようにって……」

サロンにってすぐ、寢不足なのか疲れた顔をしたお義母さまが聲をかけてきた。

當然噓だけど。ほんとは真逆、絶対見つかりませんようにって祈ってる。一番は死んでてしい。

とは言っても神頼みなんて信じてないけど、勉強をさぼる口実になるから使ってる。お勉強させられるより、祈ってるフリをした方がマシだから。すっごく退屈だけどね。

「……ニナちゃんは優しいのねぇ。こんな気遣いまで……」

Advertisement

「いいえ、そんな……ただ、私リリアーヌお姉様とあまり仲良くしてもらえ……仲良く出來なかったのが心殘りで。私にはこのくらいしか出來ないですから……」

「本當にありがとう」

リリアーヌは優しくなかったと思わせるように、わざと「つい口に出てしまった」フリをして小さく噓を混ぜる。地味だけど、自分を良く見せるにはこうやって積み重ねるのが大事なの。

そうして悲しそうに笑って見せるとお義母さまは目じりに涙を浮かべてそれを侍からけ取ったハンカチでそっと押さえた。綺麗な人だけど、今日も化粧が濃い。隈とか、顔が悪いのをそれで誤魔化してるんだろう。

「何度も言っちゃいますけど……お義母様も、他のご家族の皆様も、リリアーヌお義姉さまの事をどんなにしてたか知ってますから。言葉にはしてなかったかもしれませんけど、こんなに大切にしてくれる家族がいるなんていいなって、私すごく羨ましかったから、それで……」

「ニナちゃんがそう言ってくれるから、し救われた気持ちになるわ」

「いいえ、私が特別察しが良いってわけじゃないと思うんです。養子にしていただいてすぐの私が気付くくらいに、リリアーヌお義姉さまを皆さんたくさんしてましたから」

「そうよねぇ……私達家族はリリアーヌの事を思ってやってたって、普通は分かるわよね」

最初は、いつまでもグチグチ「あんなにしてたのに、誤解されてた自分達可哀そう」って言うのに同調してただけだったけど。私が導するまでもなく、この人たちは自分達の都合が良い方に良い方に落ちてってくれた。

私の本當のママは酒場で働いてて、男の人にすっごいモテて、いつもきれいな格好をしていた。育ててもらった覚えはないけど、どうやったら男の人に好かれるのか、良い思いをして生きていけるのかはたっぷり見て學んだ。

人ってね、口に出して言ってると最初はそんなつもりなくても段々その気になるのよ。

の人のいる酒場に來て罪悪からちょっと口にした「たまには家庭の息抜きがしたくて」って言葉に大げさに同調して、「まぁ、じゃあご家庭の中ではとっても気を遣ってらっしゃるのね」「そんな大切にされてる奧様が羨ましいわ」「こんな素敵な人に気を遣ってもらえるなんて奧様は幸せね」「そんなに頑張ってるんだからたまには息抜きしてもいいと思うの」って同意しながら付け足すの。

その「こんな良い夫に気を遣わせて、家であんな窮屈な思いをさせて。ならこのくらいは當然のちょっとした気晴らしだな」って自分がまるで元からそう思ってたような気分になるのよ。

奧さんがいるのに店にを買いに來る男の「家では息が詰まる」がどこまで本當かは知らないけど、でもそんな事関係ないってママは言ってた。

そうね、私もそう思う。実際15年も一度も褒めた事のない家族の「本當はしてたのに」がどのくらい信用できるのかなんて知らないけど、私はそんな事関係ないし。元平民の養子にそんな深い事なんて分からなくても當然でしょ?

「どうしてあの子は誤解なんかしたのかしら。ニナちゃんまでとは言わないけど、もうし察しが良ければ……こんな大騒ぎにもしてしまって」

「リリアーヌお義姉さまは、その……とても繊細な考え方をする人なんですね」

「そうね。せめて言ってくれれば良かったのにと思うわ。ああ……リリアーヌ、本當にどうして……」

最初は「誤解されて可哀そうな自分達」だった。何日経ってもリリアーヌの目撃報すら全然見つからず、生きてるのかどうかすら分からなくなると今度は責任の押し付け合いが始まった。あの狩猟會の事件も、「褒められたかったリリアーヌが無茶をした」って事になって、「父さんが追い詰めたから」って原因にされた公爵様は家族から責められて屋敷に帰っても來なくなった。

最近は、その責任転嫁の行き先がとうとうリリアーヌになっている。「あんなにけ取っていて、周りの人間だって全員知っていたのに、それで気付いてなかったなんてリリアーヌも悪い」と思ってるのが言葉の裏にけて見えている。

もうしかしら。もうしで「あんなにしてたのに気付かなかったリリアーヌが(・)悪い」になってくれそうな予がするの。

「じゃあ、私學校がありますから。行ってきますね、お義母さま」

また視界の端でアピールするように頭を下げる侍の人の無言の訴えを大人しく聞いて、メソメソしてるお義母さまに別れを告げて公爵家の所有する魔導車に乗る。

……良い子の顔をずっとしてるのって疲れるなぁ。けど今は下手な事出來ないし、大人しくしておかないと。

それより心配なのはライノルド様達よね。「リリアーヌは様々な才能に溢れた人だから、蕓や魔など各分野で突然活躍し出した人の報を集めれば遠からず見つかると思う」なんて言ってたから。

余計な事しないでしい。そんな事したら、もし生きてたらほんとに見つかっちゃう。嫌がって自分から逃げたんだからほっとけばいいのに。

でも今の彼は自分のせいじゃないかって思いこんでるから簡単に諦めてくれなさそうなんだよね。やだなぁ。

家出した理由について、自分達のせいですって言えなかったアジェット家の皆さんがこの前噓をついたのよ。「直接言葉で聞いたわけではないけど外堀を埋めるような婚約について思うところがあったのかもしれない」「家庭で問題はなかったからそのくらいしか思いつかない」ってライノルド様のせいにしたの。

すごいよね。王族に噓ついてもいいのかしら? って私はすごいびっくりしちゃった。確かにはっきり噓ついたわけないけど。後からごまかせると思ってるのかな。でも後から不敬ってやつ? あれにはならないのかしら? よく分からないけど、そうだったらヤバいし知らないフリしておいた。

でもライノルド様はそれをまともに信じちゃって、すごい落ち込んでるの。學園でも、何も事を知らない人まで心配してるくらいに元気がなくなっちゃって。同じクラスのの子たちは「最近の殿下はお顔に翳りをじるけど、でもそんな表もとても素敵」なんて騒いでるけど。

あーあ、リリアーヌなんかを好きになったせいで、可哀そうにね。でもこのまま「婚約嫌がって逃げ出した」って事にすればライノルド様も探す気失せるだろうから……真実を教えてあげる気はないけど。

はやく、みーんなリリアーヌの事なんて忘れてくればいいのに。

(`・ω・´)つ

はいよ!!お知らせですぞ!!

明日2022年1月21日から當作品

「無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~」

のコミカライズがマンガParkさんで始まりますぞ!!

https://manga-park.com/

とっても素敵なコミカライズにしていただいてるので、ほんとぜひ……ぜひ見てください!!

同じストーリーで描かれてるんですが新たな面白さがてんこ盛りなので!!

    人が読んでいる<【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才少女は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください