《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》3

「あの……フレドさん、ご相談がありまして」

「ん、なになに?」

「ご相談と言うか報告と言うか、……実はフレドさんと話し合う前に自分の中で決めてしまってて。勝手にしちゃってそこはほんと申し訳ないと思ってるんですけど……」

「なに?! え、ちょっとこわ……俺なんかしちゃった?!」

宿に報告して、子供サイズの服を買ってきてフレドさんの部屋に立ち寄った私は詰め寄るように謝罪を口にしていた。フレドさんの言葉に我に返って顔を上げる。フレドさんの部屋にってすぐ、ガバっと頭を下げた私に大層困してる様子だった。

「ご、ごめんなさい……! 私、伝えなきゃって気持ちが暴走しちゃって……」

「いやいや、びっくりしただけだから。で、何かあったの? リアナちゃんがそんな思いつめた顔で相談……というか報告があるって言うなら、大事な話なんでしょ?」

溫泉から戻ってきたばかりらしいフレドさんが、髪のから滴る水をガシガシと拭いながら私に落ち著くように促してくれる。

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変な勢いがついていた私はようやく心の中で立ち止まって、話すことを整理してからひとつずつ言葉にしていった。

「あの、私今日……この宿の庭で昨日の子に會ったんです。琥珀って呼ばれていた……」

「ああ……ギルドの前で喧嘩起こしてた獣耳の子ね」

「冒険者資格が剝奪されて、ここの従業員の知り合いに食べをもらいに來てたんです。その子に……強くなりたいから弟子にしてしいって言われて」

「え?! ……あ、いや続けて続けて」

一瞬ぎょっとした反応を見せたフレドさんに、一人で話を進めてしまった事に反省が募る。多分、私がこの後に続ける話が分かったんだろう、フレドさんはし苦笑していた。

「でも私、そう言われる前から……昨日からずっと、何か出來たんじゃないかって考えてたんです。私自がランクだけで一人前とは言えないのも、出會う人全て、何か出來るからって介するわけにはいかないのは分かってるんですけど……」

「……なるほど」

「私……私なら、今後この子が何か起こしそうになっても、止められる。間違えそうになってもどうにかできる、から。そ、それに! とても心強い仲間になると思うんです」

途中から何が言いたいか自分でも分からなくなってしまう。付け足したように仲間にした後の話をしたけど、正直自分でも「今するべき話じゃなかったな」と思った。

「まぁ、リアナちゃんなら出來るだろうね。昨日も軽くあしらってたし、上手く手綱を握れると思う。でも……出來るっていうのと、『やらなきゃいけない』って別の事だよ。たまたま知り合っただけの他人に、リアナちゃんがそこまでしてあげる義務は無い」

「それは……」

「助けてあげたいって誰に対しても思えるのは、リアナちゃんの良い所だと思うけど」

どうしてあの子に関わろうと思ったのか、自分でもうまく言葉にできない。何故、なぜと思考の奧に問えば問うほど摑みどころなく消えてしまう。

「……あの様子じゃその辺の5歳児より厄介だし、なのに力だけはあるからすごーく大変だよ?」

「でも……ごめんなさい。何て言うべきなのか分からないんですけど……私、あの子とここで別れて関わらない事を選択したらこの先ずっと後悔してしまうし……」

自分なら出來るから、後悔するから、それももちろんあるけど、そうじゃなくて。

「私があの子の手を取りたいって、そう思ったん……です」

々理由はついているけど。そもそもこれは私がやりたいと思ってるだけ。私のワガママだ。ちゃんとした理由なんてない。

パーティー申請してまだ一回目の依頼をけてないうちからこんな事を言い出して、きっと呆れられてしまっていると思う。當然、フレドさんが反対したら自分の出來る範囲で責任を取るつもりだった。私の瑕疵で自分を除籍すればギルドに関してフレドさんにデメリットは発生しない……他の面でも思いつく限りの事をしよう。

「リアナちゃんがやりたいなら、しょうがないなぁ」

だからまるで何でもないと言うようにそう告げられて、逆にそっちを想像してなかった私は理解するのに時間がかかってし固まってしまった。

「え……あの、反対しないんですか……?」

「ん? 反対してしかった?」

「や、違います……けど!」

慌ててブンブンと頭を橫に振ると、なら一件落著だとばかりにフレドさんは笑うだけ。

「殘りはアンナさんのとこに向かいながら話そうか」

どうしてこんなに簡単にれてくれたんだろう。宿の廊下を移しながら、窺うように隣を歩くフレドさんの顔を見てしまう。いつものふにゃっとした笑みで、いつもの口調で話すフレドさんだ。

「リアナちゃんはいつも……なんと言うか……いつも人の頼みを聞いてばかりでしょ? 自分から何かしたいって聞いたの初めてだから」

「そう……ですか?」

「そうだよ~、初めて。ギルドの依頼でも、向こうがしがってるのをわざわざけてあげてるじゃない? 自らくのも、昨日のギルドの前みたいな、の高い人助けだし……」

それは消極的に生きてるというか、私に主がないからだと思う。人に謝されたいって心の中で常に思ってるから、誰かが求めてる仕事をやりたいだけ。家に居た時からずっとそうだった。自分で學びたいと行したことは何もなくて、家族に言われるがままでしかない。褒めてもらえるかもしれないって、そのためにやってた。

でもフレドさんが言い換えると、気恥ずかしくなるくらい素敵な事に聞こえてしまう。そんな立派な考えでやってるんじゃないのに。

「だから俺がリアナちゃんがやりたいって思った事、手伝いたくなっちゃったんだよ」

……自分「も」やりたいと、そういう事にしてくれるフレドさんの優しさが眩しすぎる。

「フレドさんは……私の事を甘やかしすぎだと思います」

「え?! そ、そんなことないでしょ~。さっき、かなり意地悪な聞き方とか、試すような態度も取ってたじゃん……?」

真摯な対応とは思ったけどまったくそうじなかった、と伝えるとなんだか意気消沈していた。とても冷たく接したつもりだった……らしい。

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