《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》良い兆し

ニコニコしてる琥珀と一緒に帰宅した私はフレドさんを呼んできていつも通りに四人で夕飯の席を囲む。その時に琥珀が子供を救った事。子供達も怪我がなく、孤児院の方もとても喜んでくれた事を二人に伝えた。

二人からも褒められた琥珀は更に得意満面になる。

「それで……琥珀が助けた孤児院の院長さんがぜひ改めてお禮をしたいと言ってくださったんだけど。二人に相談したい事があるの」

「その孤児院に、何か問題でもあるのでしょうか……?」

私は二人に、琥珀が助けた子供達のいる孤児院の経営について、援助したいと思ってる事も含めて話した。向こうが気にせずに支援をけ取ってくれるのに何かいい手はないかと。

「うーん……リアナちゃん、自分が解決できそうだからって何でも関わろうとするのは悪い癖だと思うよ」

「うっ……」

「そうですね。私も……それは、そう聞いてしまうと心は痛みますけど。でもリアナ様……錬金工房として登録して営業を始める日も近付いていて、売りも用意しなければならないのに、関わっている余裕ってありますか……? 大丈夫ですか?」

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「ううっ……」

二人の指摘にギクリとしてしまう。まさに図星だったからだ。

「なら琥珀があいつらを助ける! リアナじゃなくて琥珀が勝手にやるなら文句ないじゃろう?!」

その言葉に3人でギョッとする。……余程、涙ながらに謝されて、嬉しかったらしい。何か力になりたいという思いがちょっと暴走しているように見える。よほど琥珀に強い影響があったのはじたけど、ここまでとは。

結局、「余計な事をしかねないから」という理由で私も付き添う事になった。冒険者として復帰する琥珀が、自分で稼いだお金を何に使うかは自由だけど。謝されたいから施しを與え続ける、というのは健全な狀態ではない。

その使い方に若干……いやかなりの不安があるので、琥珀の手を取ると選択した私が責任を持って監督する、という事に。

「援助するにしても、もうしリアナちゃんの起業が落ち著いてからの方が良くない?」

「だ、大丈夫です! 昔はもっと忙しかったけどこなせてましたし! まだ全然余裕あります」

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「リアナ様、あの異常な過スケジュールのあれを基準にしないでください!! 睡眠とお風呂以外常に何かの作業や締め切りに追われていたじゃないですか!」

久しぶりにアンナに叱られてしまった。

無理はしない、睡眠時間はきちんと確保する、と約束した上でいくつか條件を付けて琥珀とあの孤児院に力を貸す。お金やだけ上げれば良いものではないというのに琥珀も納得してくれて。うん、そうね。お金は稼げていたけど一人でいた琥珀はまともな生活を送れてなかったもんね。

寄付のような、だけで解決するのではなくて琥珀や私が援助できなくなっても破綻しない方法でそれを考えなければ。

うーん、でも私としては……とりあえず日中、私が琥珀と一緒にいられない時に預かってくれるだけで助かるんだけど。私は琥珀が寢た後も、錬金工房の開業計畫を記したノートを広げたままその事について考えて頭が一杯だった。

基本今は、琥珀と私がほぼ常に一緒に行してる。でも錬金工房として商品にする魔道や魔法薬も作りたいし、それが難しい場面も頻繁に出て來るだろう。現在は錬金ギルドの作業スペースを借りて作っているけど、琥珀は「臭いからここに居たくないのじゃ~」と錬金ギルドに行くのを嫌がるのだ。

においが合わないのはさすがに可哀そうで。嗅覚も違うし、きっと私が思うよりつらいのだと思う。

琥珀は戦闘に夢中になって暴走気味になる事がまだあるので、不測の事態で琥珀を制止できる人の居ない狀態ではまだ依頼に出られない。

アンナの事は率先して手伝うようになったけど、正直……とても有能なアンナにこの面積の住居であまり手伝いは必要ないみたいなのよね。アンナは家事が終わると趣味の手蕓にあてているけど、琥珀はそういった方面に興味はないらしく、ちょっとやらせてみたけどすぐ興味を失って退屈そうにしていたらしいし。

でも今回みたいにその度に部屋でずっと待っていなさいというのも活的な琥珀には酷だろう。

琥珀も趣味らしい趣味がないからなぁ。味しいものを食べるのがとにかく好きだと言っていたから、それが趣味と言えば趣味だろうか? 不當な料金を払っていた可能も高いが、冒険者としての稼ぎは全て食費に消えていたらしいので、余程人生の楽しみなのだろう。

國に帰らないのは「食べた事がないものが山ほどあるから、旨いもん全部食べたい」というのも理由にあったらしいし。作るのは好きじゃないみたいで、目玉焼きを焦がしてからは料理に関してはお皿を並べたり野菜を洗ったりくらいしか手を出さないようになってるみたい。

しかしさすがに食べだけ與えて放置するわけには……。

それに、今は常識と共に當たり前の禮節も覚えてきたけど。文字や簡単な計算も教えたい。冒険者としての活にも絶対必要だと思うの。文字が読めたら全部覚える必要は無い。冒険者用の技書には挿絵があっても魔の討伐部位や素材、解方法は文字が読めないと理解しづらいし。

力のコントロールは出來るようになったけど、それだけでは足りない。

書いてある指南書を持ち歩いて、必要に応じてその依頼で使うところだけ目を通し直せばいい。計算も、複雑なものでなくても報酬の計算や買いで困らないくらいの知識は必要だと思う。

そこまで考えて思いついた。これ……あの孤児院で教えてもらえばいいのではないだろうか。

正直私には、何も知識がない子供に一から文字の書き方や計算の仕方を教える技はない。実家にいた時は師事している家族達の、他のお弟子さんに時々私が教える事もあったけど、あの人達のお弟子だから皆さんその分野の中ではトップレベルの方達なのよね。

知識や技の土臺がない相手に、そもそもその土臺を教えるって、どうすればいいのかまったく思いつかないのだ。ほんと、言われたことは出來るけど、一から考えるの苦手ね……。

戦闘技については、覚派だけどしっかり基礎がついてる琥珀は私でも教えられるけど。

その點孤児院なら、就職のために一人立ちする子供に教育もする。孤児院の職員なら読み書き計算は絶対に出來るし。確実に私よりも子供に一から教えるのが上手いはず。

この報酬にってお金や食料を渡せるし、「琥珀の教育に使ってください、使い終わったら差し上げます」って言えば本や文房など教材も自然に寄付できる。

他の子供の分も渡すのは……琥珀は競爭相手がたくさんいた方が上達が早いと思うから、で押し切れないだろうか。

思いつくままに、寢支度をしていたアンナにそう話すと、「向こうの都合もありますけど、それならお互いメリットもありますし提案してみたらいかがでしょうか」と賛してもらえた。

明日フレドさんにも伝えてみよう。とりあえず明日は改めてお禮を言いたいとおっしゃってたミエルさんを訪ねて、提案してみよう。

これは私の願いがった予想でしかないけど。琥珀にとって良い出會いになると思う。

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