《【第二部完結】隠れ星は心を繋いで~婚約を解消した後の、味しいご飯とのお話~【書籍化・コミカライズ】》2-5.もやもやが消えない
ノアが早上がりだったら一緒に帰って、いつもみたいに味しいものを一緒に食べて。ゆっくり歩きながらお喋りしたり、お休みの日は新居の話を進めたり。
そんな風に過ごそうと思っていたのに……使節団が來てからの一週間でそれが葉う事はなかった。
『會えないわけじゃない』なんて言っていたのに。
『悪い予がする』なんて、そっちの言葉の方が當たってしまった。
ノアに會えない。
姿は見ているのだ。視察に出掛ける王様の側には、いつもノアが居るのだもの。
數人で隊を組んで、代で護衛任務にあたるのではなかっただろうか。ノアはそんな事を言っていたけれど……事が変わったのかもしれない。
ウェンディも気遣ってくれるけれど、わたしはただ笑って見せる以外に出來なかった。
仕事が終わって、その足で騎士団の詰所へと向かった。ノアが居るかもしれないし、居なくても次のお休みを聞けるかもしれない。
わたしがノアの婚約者だというのは皆が知っているから、お休みなどを聞いても問題ないと言われている。心に掛かるもやもやとしたを抱えながら、詰所の門番に聲を掛けると気の毒そうに眉を下げられた。
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「アインハルト殿は……」
その様子に不在なのだと、まだ使節団の護衛をしているのだと理解してしまった。
ここでごねたって、何を言ったって、この人を困らせるだけだ。わたしはにっこり笑って見せながら、気にしていないとばかりに頭を下げた。
帰ろう。
そう思って踵を返した時、こちらに向かって走ってくる足音が聞こえた。誰だろうと振り返ると、駆け寄ってきていたのはわたしも知っている騎士の方だった。
彼はラルス・ヴォルツナー。
ノアの同僚であり、友人である。ノアに紹介をして貰ってから、ラルスさんが聲を掛けてくれる事も増えたように思う。
「アリシアちゃん、ちょっといい?」
「ラルスさん……」
わたしが來ていると聞いて、急いで來てくれたのだろう。その額には薄く汗がっている。
短く整えた赤い髪と同じの赤い瞳が、心配そうに翳っているようにも見えた。
「アインハルトの事なんだけど、事を説明しておいた方がいいかと思って」
その言葉に、が痛んだ。
きっとその事は……わたしにとって、良くない話だ。そんな予がしたから、肩に掛けていたバッグをぎゅっと握り締めて小さく頷いた。心臓が騒がしくなって、呼吸が淺くなっていく。
そんなわたしを見て苦笑いをしたラルスさんは、こっち……と、門からし離れた場所へと導してくれた。
詰所を囲う高い柵の側、外燈が道を照らす明るい場所でラルスさんが口を開く。
「使節団の護衛任務にあたってるっていうのは知っていると思うんだけど。あー……何ていうか、えぇと……ちょっと言葉を選べないんだけどさ。……アンハイムの王様がアインハルトを気にっちまって」
予想外でもあり、ある意味予想通りの言葉だった。
「護衛には絶対アインハルトをれてくれって我儘を言われてさ。あいつ、毎日護衛任務についてるんだよ」
「そう、なんですか……」
「団長も上に掛け合ってるんだけど、あと一週間だから我慢してくれって言われてて。アインハルトが解放されるのは王様が寢室にる夜更け頃でさ、宿舎に戻るのもすげー遅い時間なんだ。朝は早くから出ないといけないしね」
思っていたよりも過酷な環境に、ノアの事が心配になってしまう。
それに……王様がノアを気にっているなんて。彼がどれだけ目を引くかなんて分かっているし、彼の心を怪しむつもりもないけれど……でも、もやもやする。
うまく言葉にする事ができないこのもやもやが、気持ち悪い。
わたし……うまく笑えているかしら。
「ブルーム嬢」
不意に掛けられた聲に顔を上げると、こちらに近付いてきていたのはラジーネ団長だった。金髪を後ろでひとつに結び、今日は肩マントをつける事無く騎士服の姿だった。
「ラジーネ団長、お疲れさまです」
「うん、ブルーム嬢もお疲れさま。……ヴォルツナーから聞いたと思うんだけど、すまないね、君達には不便をかける」
「いえ、お仕事ですから」
そう、お仕事なのだ。わたしがここでもやもやしていたって、仕方がない事。
自分に言い聞かせようとしても、気持ち悪さが遠ざかる気配はない。もうし時間が必要なのかもしれない。
「王殿下の輿れが決まっているというのは知っていると思うけれど、最後に思い出を作りたいと泣かれたそうでね。アンハイム側から強く頼まれて、上も否(いな)とは言えなかったみたいなんだ。過度な接がないようにこちらでもしっかり見ているから、そういう面では安心してほしい」
「……はい。ありがとうございます」
ゆっくりと息を吸い込んで、わたしは先程までよりも穏やかに笑えていたと思う。二人が困ったように眉を下げるから、もしかしたらまだ固かったかもしれないけれど。
ラルスさんとラジーネ団長に見送られながら、わたしは帰路へついた。今日は迎えを頼んでいないから、のんびりと歩いて帰るつもりだ。
見上げた空はもうすっかり夜の。
夏の匂いを纏い始めたらかな風がわたしの髪を揺らしていった。
気持ちの良い夜なのに、わたしの気持ちは沈むばかりだ。
あと一週間の我慢だと思うのに、まだ一週間もあると思ってしまう。
會えないだけが辛いんじゃない。ノアが……王様の側にいるのが辛いのだ。
王様の気持ちに慕がなかったとしても、思い出作りだとしても。それでも……辛い。
「……これじゃ、ただのヤキモチだわ」
もやもやとした気持ちの正に、もう気付かない振りも出來なかった。
お仕事だって分かっているから、こんなヤキモチを覗かせるのも違うだろう。それは分かっているけれど、目の奧が熱くなってくる。
浮かんだ涙を指先で拭って、家までの道を足早に歩んだ。
びる影がひとつ、寂しそうにしていた。
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