《【第二部完結】隠れ星は心を繋いで~婚約を解消した後の、味しいご飯とのお話~【書籍化・コミカライズ】》2-35.心を繋いで
幸せに包まれた結婚式が終わった後。
王都にあるアインハルト伯爵家のお屋敷で、ノアとわたしの為にお祝いの食事會が開かれた。わたし達と家族だけの食事會は、とても賑やかで、そして味しいものだった。
兄弟に囲まれたノアはいつもと違う雰囲気で、きっとわたしもそうだったのだと思う。
皆がわたし達の結婚を祝ってくれて、何度も「おめでとう」を言われて。そんな楽しい時間はわたしのお酒も進ませてしまって──帰路の馬車から降りる足元は、なんだかふわふわとしていた。
そして、いま。
メイドに手伝って貰って盛裝を解き、お風呂にったら酔いもしは落ち著いたみたいだ。檸檬のったお水を飲んでる間で髪が乾かされていく。いつもは自分でやるのだけど、今日は甘えさせて貰った。ドキドキしてしまって、落ち著かなかったから。
薄手の寢の上からガウンを羽織り、メイドと共に夫婦の寢室に向かう。
扉を開けてくれたメイドはにこにこと穏やかに微笑んで、わたしが寢室にると一禮をしてから去っていった。後ろで靜かに扉が閉まる。
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「酔いは醒めたか?」
笑みじりの聲に、そんなにも酔っていたかと首を傾げる。
ソファーに座るノアもお風呂上がりなのか、黒髪がまだし濡れているのか濃く艶めいていた。
「そんなに酔っていたかしら。自分ではいつも通りだったんだけど」
「足元がし危なかったくらいかな」
「それくらいならいいかしら。危なくてもノアが支えてくれるって、分かっているし」
「俺も、お前一人の時にあんなに飲ませるつもりはないからな」
ノアの隣にわたしも座って、ソファーの柄を指でなぞった。やっぱりこのソファーを選んで正解だった。座り心地も申し分ないし、貝殻みたいな可い形も深い青も気にっている。
「酔いが醒めたところだが、ワインを貰ってる。飲むか?」
「飲みたいわ。誰に頂いたの?」
陶で出來たワインクーラーで冷やされていたワインをノアが手にする。ソムリエナイフを使って手際よく栓を抜いてくれて、軽やかな花の香りがした。
用意されていたグラスに注がれるワインは琥珀。
「うちの兄さんから寢る前にでもって。それ以外にもんな人が贈ってくれたから、今日だけでこの家のワインセラーが半分以上埋まったぞ」
「ふふ。みんな、わたし達がお酒が好きだって知っているものね」
好きなワインでいっぱいにしたい。そんな風に笑い合っていたけれど、皆からのお祝いでいっぱいになるのも嬉しい。あとで確認して、改めてお禮の手紙を書かなくては。
差し出されたワインをけ取って、軽く掲げ合う。口に含んだワインは口當たりが軽やかで、飲みやすかった。甘いけれど、後味にはしの酸味が殘っている。
「味しい」
「飲みやすいな」
ふと隣のノアに目を向けると、髪は下ろされているけれど眼鏡はないようだった。前髪の隙間から見える紫が優しく細められている。
「疲れたか?」
「しだけ。でもそれ以上に楽しかったし、幸せでいっぱいなの。皆がお祝いしてくれたのもだけど……ノアと結婚出來たのが本當に嬉しくて」
またワインを口にした。檸檬水だけじゃ足りなかったのか、まだが渇いているみたい。もしかしたら、し張しているからかもしれないけれど。
「そうだな、俺も嬉しい。お前が俺の隣で、そうやって笑っていてくれる事も」
らかな聲に目を瞬いた。片手を自分の頬にあてて、そんなに緩んでいたかと確認してしまう。
そんなわたしを見て、ノアは可笑しそうに肩を揺らした。
「そんなところも可い」
「……もう、揶揄ってるでしょ」
「俺はいつだってお前を可いって思ってるけど?」
その聲があまりにも甘やかで、心臓がばくばくと騒がしくなってしまう。顔が熱いのをお酒のせいに出來るほど、ワインは強いものでもなかった。
「はは、真っ赤。……本當に可い」
何か言おうと口を開いても、言葉を失くしたみたいに何も紡ぎ出せなくて。淺い呼吸だけがれるばかりで、どうしていいかも分からなかった。
ノアは楽しそうにワインを口にすると、逆の手でわたしの肩を抱き寄せる。その溫もりにほっと深い息をついて、わたしもまたグラスに口を寄せた。
「……ノアが甘いわ」
「甘くもなるだろ。悪いが慣れて貰うしかねぇな」
「慣れるなんて出來るかしら。たぶん、ずっと……ドキドキしてしまうもの」
いつだって、何度だってに落ちる。
わたしの知らないノアの一面を見る度に、に落ちる音が聞こえるんだと思う。
ノアはわたしが手にしていたグラスを取り上げると、自分の持っていたグラスと一緒にテーブルへと置いた。まだ飲んでいる、と抗議しようとしたのだけど、ガウンが肩から落とされたら何も言えなくなってしまう。
「あとでいくらでも飲ませてやるから心配すんな」
「別にそんな心配をしているわけじゃ……」
言葉途中でノアに抱き上げられる。背中と膝裏にじる手が熱くて、また鼓が跳ねた。落ちる心配はないけれど、ノアの首に両腕を絡めたのは──わたしもれたかったから。
いつもよりもノアの歩調が早いのはきっと気のせいじゃなくて。
ベッドに優しく下ろされると、前髪の奧で夕星がを濃くしているように見えた。
「アリシア、してる」
けるように甘やかで、想いの詰まったそんな聲で囁かれたらの奧が苦しくなってしまう。切なくて、好きって気持ちが溢れるばかりで、開いた口かられる息が熱を孕んでいた。
「わたしも。わたしも、ノアの事をしてる」
紡いだ言葉は自分でも驚くくらいに、のに染まっていた。
そんな言葉に笑ったノアが、いつもよりも幸せそうで、なんだか泣きたくなってしまう。
覆い被さるノアが私の顔橫に両肘をつくから、彼に包まれているみたいで心臓がずっと落ち著かない。
優しいが額にれて、それから頬にり落ちる。擽ったさに吐息をらすと、それを飲み込もうとするかのようにが重なった。
心が繋がる。夜はまだ、明けない。
れられる場所に熱が刻まれているみたい。それさえしくて、幸せで。
「してる」
何度も繰り返した睦言に、ノアが笑う。
深く輝く夕星に溺れて、わたしも笑った。
これで第二部は完結となります。お付き合いありがとうございました!
番外編も書きたいので、まだ完結表記にはしない予定です。不定期になりますが番外編があがりましたら読んで頂けると嬉しいです。
想も誤字報告も本當にありがとうございました。毎日の勵みになっていました。
これからも頑張りますので、応援宜しくお願い致します。
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