《【書籍化・コミカライズ】三食晝寢付き生活を約束してください、公爵様》番外編:結婚式の準備は誰がする?

本日『三食晝寢付き生活を約束してください、公爵様』の2巻が発売します!

2巻発売記念で、番外編を投下します。

「これ、何?」

やっと隣國から戻ってきて、しばらくはのんびりできる! と思ってたところに渡された書類にわたしは思わずつぶやいた。

渡してきた相手は、にこりと好々爺の笑みを浮かべる総括執事のラグナートだ。

この笑みは危険だ。

ではなく、長年の経験からそれを理解している。

「旦那様よりお伺いしております。結婚式をもう一度行うそうですね? そのための準備に必要な工程と項目、それに加え招待客の選別――」

「いやいやいや、ちょっと待って! いつ知ったの? わたしたちさっき帰國してここに著いたばかりですけど!?」

「優秀な配達員が、最速で旦那様からの手紙を屆けてくださいました」

優秀な配達員? と首をひねると、ラグナートの後ろからのそりと現れたのは、灰を持つ犬――ではなく、ヴァンクーリだった。

見たことのない子だったけど、大人しくラグナートに従っているところを見ると、すでに調教済みだと知る。

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「このように使うこともできるのだと、心いたしました。これは、隣國もヴァンクーリが自國から離れるのを恐れるはずですね」

ちょっと待って、ラグナート。

そもそも、隣國はこんな風にヴァンクーリ使ってないし! 優秀な報伝達としてみなしていないし!

確かに、ヴァンクーリの腳力は人や馬なんかよりもかなり上ではある。

そのため、上手く調教できれば様々なところで活躍できるのだ。

そして、その機力の一端をわたしはすでに見ている。

旦那様と一緒に山脈越えをして、最短で隣國の王宮にやってきたその速さ。

そして今。

旦那様からの手紙をわたしたちが戻ってくるよりも先に、ヴァンクーリが屆けたので、それに従ってラグナートは即座に準備に取り掛かっていた。

本當に、優秀な執事はときに困る。

「ラグナート、わたし今帰ってきたところなんだけど……」

「ええ、あまり準備はできませんでしたが、大まかな事はまとめておきました。本來ならば、リンドベルド公爵の結婚式は盛大に行うことですが、すでにお二人はご夫婦ですからね。し格を落とし、披宴の方をメインにするようにいたしました」

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「いたしました、じゃないけど!? 別に親しい人たちだけ招けばよくない?」

「式の方は親しい人だけでよろしでしょう。一度式を挙げているのに、再び上げると言えばどんな橫やりがるかわかりませんから。表向きは、リーシャ様のお披目ということになっております」

結婚式は、相手の家が家格に合わせて準備する。

そして披宴は、通常夜の開催であるので、本來ならば男側の仕事に分類されるが、通常の夜會と違うのは、が――つまり花嫁が主役ということだ。

花嫁が主役というのは、王侯貴族だけでなく、國民全員の認識だ。

そのため、側が意見を出し、その意見を元に披宴が準備される。

「これ、絶対的に男側の方が楽できる構だけど!?」

「仕方がありません。ですが、旦那様よりお言葉もいただいております」

「何?」

嫌な予しかしないけど?

「もし面倒だと思うのなら、こちらに一任してくれても構わない。だが、文句はけ付けない、との事です。いかがなさいますか?」

あ、今旦那様があくどい笑みを浮かべている姿が目に浮かんだ。

一任したら、どんなことになるか今から悪い予しかしない。

わたしは地味でいいのだ。そう、地味で。

きっと今時派手な結婚なんてはやらない。

そもそも、旦那様だって派手な夜會は好まない質(たち)だ。

普通に考えれば、出費を抑えたいのだから男がわに一任すれば、地味な披宴になりそうだが、旦那様はわたしの事を最近よくよく理解している。

嫌がらせという意味では、派手な披宴を準備しそうだ。

「旦那様に會ってくるわ。今どこに?」

「執務室にいらっしゃいます。突然國を離れることになりましたので、決済の類がありますので」

さすがは仕事人間。

仕事が好きでやっているわけではないと本人は言うけど、わたしから見たら好きじゃなければできないと思う。

義務だけでこなせる量じゃない。

まあ、今はラグナートという最終兵にも近い有能な総括執事がいるので、だいぶ仕事は軽減されていると思うけど。

「とりあえず、これは保留! ラグナートも言っていたけど、もう結婚してるんだから、こんな華やかに披宴をするつもりはないから!」

ラグナートから渡された書類に書かれていた數々の準備品。

ざっと見ただけでも、その規模はさすがリンドベルド公爵家と稱えられるような規模だと、想像できた。

それを防止するべく、わたしは疲れたに鞭打って、旦那様の執務室に向かった。

扉を叩けば、すぐに反応が返ってくる。

中にると、いつもの執務室に座り、書類をさばいている旦那様がいた。

今は一人のようだ。

旦那様はわたしが執務室の中にると、意外そうな顔で言った。

「今頃、ベッドの中かと思った」

「そうしたかったんですけど、余計な仕事を増やそうとする人が湧き出まして」

ぎろりと睨むと、したり顔で旦那様が口角を上げた。

「ラグナートは私の仕事を手伝っているだけだ。そう言ってやるな」

「それはつまり、わたしが何を言いたいのかもう分かっていらっしゃるということでよろしいですか?」

肩をすくめる旦那様の余裕のある姿に、を尖らせた。

回りくどい事を言っても時間の無駄だと判斷し、早速本題を切り出す。

「いいですか? わたしは最小限でいいです! 最小限のお披目ができれば、それでいいと思います!」

「例えば?」

「た、例えば?」

勢いだけでここまで來たので、そこまで考えていなかった。

なにせ、普通は周囲から聞いたり親が教えてくれたりする結婚式や披宴の容に関しては、全く知識としてない。

正確には多あるが、リンドベルド公爵家の家格から考える披宴の規模に関しては無知だったりする。

そこは、ロザリモンド嬢に聞けば教えてくれるかもしれないけど、それはきっとラグナートが考えるものとほとんど変わりないはず。

「否定的意見が出たのなら、それに代わる案を提示してくれるんだろう?」

「う……そ、それは」

「花嫁が主役だ。リーシャがしたいようにしていいぞ?」

いいんですか? 本當に?

「それなら、親族と友人関係だけ、とか?」

まあ、わたしの方に親戚はもういないも等しいけど、旦那様の方にはいるし。

「それでいいならべつに構わんが」

「それなら準備もそんなに必要ないですよね?」

ラグナートにつめ込まれた旦那様関係の重要人を思い浮かべた。

親族はお互いない。

この間いざこざのあったロザリモンド嬢の実家は呼ばないだろうし、そうなると気を使うのは旦那様もお父様くらいだ。

うん、呼ぶ人がなければないだけ、準備にかかる費用もないし、なによりわたしが楽できる! 素晴らしい!

旦那様からの許可を得て、わたしはにこりと笑う。

「わたしの方は呼ぶ人數が極端にないですが、だ……クロード様の方はいかがですか?」

おっと、危ない。

うっかりすると旦那様と呼んでしまいそうになる。

「リーシャのみなら、知り合いと親族ぐらいか。ああ、でも確か皇太子殿下が祝いに來てくれるそうだ。相手は一応親族だ。リーシャのみにも合うだろう」

ん?

「えと……、確かに皇族の方々はクロード様のご親族ですけど、その……今ちょっと微妙な関係じゃありませんでした?」

「皇太子殿下とはそうでもないな。そもそも、相手は遊學中の出來事だったうえ、もし皇太子殿下がいれば、皇殿下の件は問題にもならなかっただろう」

仲良しなんですねぇ……。

それ言ったら、絶対に顔しかめそうだけど。

そして、皇族が來るとなると、それ相応の準備というものは必要で。

だけど――。

「わたしの希はお伝えしましたので、あとはよろしくお願いします」

丸投げした。

言い出した旦那様がぜひとも全部お願いします。

わたしに仕事はふらないでくださいね。

「まあ、いいだろう。では、そちらの希通りにしよう。ただし、當日の文句はけ付けない」

「え? えぇと?」

旦那様も含みある言い方に、何か非常にまずいことが隠れているような気がして、必死にその真意を考える。

「今から楽しみだな、リーシャ?」

いや、全然楽しみじゃないんですけど?

え? 旦那様、一何を考えていらっしゃるのか、ぜひとも聞きたいのですけど?

「話が済んだのなら、ゆっくり休んだらどうだ? 晝寢晝寢と騒いでいただろう?」

くっ、なぜそんなにわたしを追い出したいのか。

いつもなら、お晝寢なんて時間を沒収するようなことしか言わないのに!

悶々と考えているが、旦那様が一何を考えているのかさっぱり分からない。

そして、結局……。

「やっぱり、手伝います。というか、やります」

旦那様が何か仕掛けてくるのを防ぐために、自分でやるのが一番だと判斷した。

「私を信じて任せてくれてよかったのにな?」

全く信じられないような含みある言い方をされれば、警戒するんですよ、旦那様!!

そして、丸投げしようとした案件を引きけたわたしのお晝寢時間は、削られていく。

本當に、始めの契約事項はどこいったのか、ぜひ聞きたいのですけどね、旦那様!?

お読みいただきありがとうございます。

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