《真実のを見つけたと言われて婚約破棄されたので、復縁を迫られても今さらもう遅いです!【書籍化・コミカライズ連載中】》56話 新國王派
「先ほどの話に戻りますが、新國王派と呼ばれるものたちは、マリアベルを王太子の側室として、國事などはすべてマリアベルにさせるつもりみたいですね。ただ元々の婚約者であったマリアベルとの婚約を破棄したのは王太子側です。それを、正妃にとむならともかく側室というのは話の筋が通りません」
「そんな暴論が通るのであれば、獨裁國家と変わらん」
呆れたようなレナートに、ジュリアンは苦笑する。
「そこで、マリアベルは既に結婚しているので、正妃ではなく側室に迎えるしかない、という筋書きになっているようです」
「筋が通っておらぬどころか、ねじ曲がっているではないか」
「まったくです。そしてここに、マリアベルは実は王太子殿下をしていたのだという話が混ざりますと、側室に迎えるのはマリアベルもんでいるという、あり得ない話になっていくわけです」
「その結婚相手が王太子の兄弟というわけか」
「結婚したといっても、すぐに召し上げてしまいますからね。サイモン・レントは一生、戸籍に記されただけの妻を持っていなくてはならず、他のと再婚することもできない上に、妻を主に獻上した男というレッテルを一生られてしまうわけですから、まあ適任なのでしょう」
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ジュリアンはサイモンがあまり好きではない。
顔の醜はともかく、あの長い前髪の奧から覗く卑屈な目が気にらないのだ。
だがエドワードへの忠義だけは本だろうと思っている。
エドワードはサイモンの容貌を忌避せず、その存在を認めて側に置いているからだ。
「幸い……と言っていいのかどうか分かりませんが、父はその新國王派によってされているようです。おそらく國のためにマリアベルを側室にすることを認めろと言われているのでしょうが、王太子殿下の手前、そう手荒なことにはならないと思っています」
「バークレイ侯が捕らえられているのは王宮か?」
「政治犯を収容する王宮の北の塔にいる可能が高いですね」
「の安全は確かなのか」
「今のところは」
だが、拘束が長期間になれば安全が保障されるかどうかは怪しい。
時間がたてばマリアベルは婚約期間を終えて、レナートとの婚姻を迎えるからだ。
「それで、どうやってバークレイ侯を助け出す」
「マリアベルは正式な皇太子殿下の婚約者となったのですから、直接國王陛下か王太子殿下に婚約の報告をすると良いでしょう。皇太子殿下も一緒にいて証言するのであれば、誰も文句は言えません。直接王宮へ乗りこみ……いえ、まいりましょう」
「ふむ。それが一番だな」
レナートはそう言って安心させるようにマリアベルへと微笑んだ。
マリアベルも申し訳ないと思いながらも、父のためにはレナートに頼らざるをえない。
何もできない自分がはがゆかったが、勝手にいても事態は好転しないのだから、ここはじっと耐えるしかない。
ジュリアンはそんな二人の様子を見て微笑ましく思いながら、書棚の橫にある丸まった紙の束から一番大きなものを取り出して執務機に広げる。
一般に広く流通している大陸地図だ。
「ここが我がバークレイ領で、こちらが王都になります。王都へ行くには、この王の道を真っすぐ進むわけですが、當然途中で王國軍の兵士に見つかってしまうでしょう。ですがバークレイ領から鉱山への道を通り、その先に進むと當家と親しいハウスタッド伯爵家の領地となります。ハウスタッド家のユーフェミアは僕の婚約者なので、安心してください」
ジュリアンはバークレイ領から王國の南東へと指をらせた。そこからし上へと指を進める。
「そしてここにガーディナ大公家があります。セドリック殿下にレナート皇太子殿下とマリアベルの分を保障して頂き、一緒に王都へ向かいます。大公家の領地は王都のすぐ南ですので、すぐに王都にれるでしょう」
「大公妃殿下ではなく、セドリック殿下を頼るのですか?」
マリアベルは驚いたようにジュリアンを見た。
ガーディナ大公家のセドリックは、十年前に亡くなった王弟殿下の忘れ形見でまだ十一歳の年だ。
頼る相手としてはすぎるのではないだろうか。
「先日、前會議に出席なさっていたけれど、ずいぶんご立派になられたよ」
マリアベルはよく知るセドリックの姿を思い出す。
出會った頃のエドワードよりも思慮深く落ち著いた雰囲気の年だった。
兄弟のいないエドワードが弟のように可がっていて、マリアベルも同席した茶會に招いて、珍しいお菓子をご馳走していた。
「セドリック殿下も、かなりマリアベルのことを心配していてね。何かあったらぜひ力になりたいと言ってくださっている」
「セドリック殿下が……」
王國には家族以外の味方はいないのだと思っていたけれど、こうして助けてくれる人たちがいるということに、マリアベルは謝した。
「では父を解放するために、王都へ向かいましょう」
マリアベルの言葉に、レナートとジュリアンは強く頷いた。
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