《真実のを見つけたと言われて婚約破棄されたので、復縁を迫られても今さらもう遅いです!【書籍化・コミカライズ連載中】》74話 エドワードの選択
「私は……」
聲がにからむ。
エドワードは、究極の選択を迫られて口ごもった。
「エド……」
そこへ後ろから遠慮がちな聲がかかる。
エドワードが振り向くと、そこには揺れる瞳を向けるアネットがいた。
出會った頃とは違い、綺麗にまとめた赤茶の髪も化粧をした顔も、すっかりあか抜けて貴族らしい姿を見せている。
だがエドワードがした屈託ない笑顔も、笑った時に見える白い歯も頬にできる可いえくぼも、今のアネットにはない。
まるで普通の貴族の娘のように見えるアネットに、いつからこうなってしまったのだろうと、エドワードはぼんやりと考えた。
そして帝國の皇太子に守られるように抱きこまれているマリアベルを見る。
彼は、完璧な淑だった。
貴族として比較するのであれば、マリアベル以上のはいなかった。
心配そうにこちらを見るマリアベルの様子に、エドワードはまだ自分への思いが殘っているのだろうかと淡い期待を寄せた。
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だがそんなエドワードの自分勝手な思いを察したのか、レナートがマリアベルの両肩に手を置く。
その手に、マリアベルの白い手が重ねられた。
まるで二人の思いを見せつけられたような気がしたエドワードはとっさに目を逸らす。
その先には、今まで見たこともないような、冷徹な目をエドワードに向けているフレデリック三世がいた。
エドワードは思わずを鳴らす。
父である國王は、いつでも自分に甘かった。
教師や側近を辭めさせる時はし悲しい顔をしていたが、それでエドワードの願いがかなえられなかったことはない。
そもそも、それほどわがままは言っていないつもりだった。
座學も剣も、求められる課題はすべてこなしてきたはずだ。
だというのに、フレデリック三世は、まるで他人に向けるような目でエドワードを見ている。
周りにいる臣下たちも、エドワードと目を合わせようとしない。
なぜだろう。
このは古代王國人の末裔である、尊きを持つ、王國の王太子だというのに……。
最後に、セドリックと目を合わせた。
心つく前に父を亡くした可哀想な従弟。
弟のように可がってきたが、あれほど博識だとは知らなかった。
王宮で自分が辭めさせた教師を見かけた時に、今はセドリックを教えているのだと聞いたことがあるが、その教師たちがあれほどの知識を與えたのだろうか。
ならば自分にも教えてくれればよかったのにと思う。
黒死麥のことを知っていれば、十年前の祖母たちの死因を知っていれば、今こんな風に追い詰められる事はなかった。
そうすればアネットを養にする先にダンゼル公爵を選ばなかったし、頼りにすることもなかった。
そうだ。知っていれば、ダンゼルの派閥の側近を選ぶこともなかったはずだ。
アネットと出會ったのは、ダンゼル派のブライアン・チェスターが城下に社會見學に行こうとったからだ。
もしブライアンを側近に取り立てていなければ、アネットと出會うこともなく、そのままマリアベルと結婚していただろう。
そしてフレデリック三世と共にダンゼルを糾弾するのは、セドリックではなく、このエドワードだったはずだ。
なのにどうして、こんなにも追い詰められてしまっているのだろう。
どうして……。
「殿下、真実のは尊いのだと……。どうか、そう、信じさせてくださいませんか……?」
言いよどむエドワードに、小さくマリアベルが聲をかける。
「……殿下とアネット様の婚約を祝福した、多くの民たちのために」
エドワードの脳裏に、アネットとの婚約を告示した後の國民たちの姿が浮かぶ。
馬車で城下町を通り過ぎる時、馬車の紋が王太子のものであるのを知った彼らは、馬車の中にいるエドワードにも聞こえるようにと、みんな大きな聲で祝ってくれた。
エドワードは十八年間ずっと、王太子として生きてきた。
やがて王位を継ぐものとして、賢く正しい王となり、國民を安寧に導くのだと心に誓っていた。
だが、マリアベルとの婚約を破棄した自分が再びアネットとの婚約も破棄したならば、醜聞となり、民の王家への信頼は一気になくなってしまうだろう。
ただでさえダンゼルの一族が失腳して貴族社會も混する中で、民衆にも王家に対する不満がふくらんでしまったら、いつどこで反が起こってもおかしくない事態になる。
それだけは避けなくてはいけない。
エドワードは、再び心配そうにこちらを見ているマリアベルを見る。
帝國へ行ってしまえば、もう會うことはないだろう。
けれども十年もの長い間、婚約者としてともに過ごしたのだ。
その思い出は、いつまでもあせることはないだろう。
だからどうか幸せになってほしい。
もう自分がその手を取ることはできないけれど。
そう思いながら、エドワードはマリアベルに微笑みを向けた後、アネットの手を取る。
「陛下、私は……真実のを選びます」
宣言したエドワードは、アネットとともに深く頭を下げた。
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