昨日はあの後、エルガさんについて調理場へ行き、他の寮母の方たちも紹介してもらった。

皆さんとても忙しそうで、私が手伝いに來たと聞いて驚きつつも、とても謝してくれた。

それにしても、こんなに辺境の地であるのに、食材はとても充実していた。

國を守る重要な役割を果たしている第一騎士団の方たちには、惜しみなくのつく食材が送り屆けられているらしい。

近くの街から、毎日新鮮なや魚にたまご、野菜に果。小麥、チーズやソーセージのような加工食品まで屆けられるそうだ。

その運搬の際に護衛として付くのも騎士団の方の仕事の一つであるらしいのだけど。

ともかく、そういうわけで昨日は私もそのおこぼれで、とても贅沢な食事をさせてもらえた。

今までは伯爵家の殘りものを食べるだけだったから、スープにれるおはなかったし、パンは固くなっていたし、野菜は切れ端ばかりだった。

それに、第一騎士団の方たちは皆とてもあたたかく私を迎えれてくれた。

大好きな騎士様が目の前にたくさんいて、私は興のあまり倒れてしまいそうだった。

ああ……私はなんて幸せなの？

神様、これはなんのご褒ですか？

これからもいい子にしていますから、どうかこのまま……このままでいさせてください……！

そんなことを心の中で願いながら、キラキラと輝いて見える騎士たちを惜しみなく観察させてもらい、味しい食事をとり、至福のときを過ごした。

だけど、レオさんが「仲間は家族」と言っていたのがわかる気がした。

ここの方たちの雰囲気は、本當にあたたかいのだ。

きっと皆、毎日命をかけて働いているのだろうに……。

ああ、なんて尊いのかしら。

私もこの場所で、立派にやっていこう。

しっかりとあたたかいお風呂にってから寢支度を整え、ふかふかのベッドにをれて、私はそう決意を新たにした。

＊

「おはようございます！」

「……おはよう。隨分早いのね」

翌日。日の出前に目が覚めた私は、エルガさんが用意してくれていた寮母の制服に著替えて、早速食堂へ向かった。

制服はきやすいワンピースだけど、私が著ていた服よりも機能がよく、高そうだ。

ありがたい。

だけど、言われていた時間よりし早く來てしまったから、もしかして迷だった……？

そんなことを一瞬考えてしまったけれど、エルガさんは表をやわらかく崩した。

「本當にやる気に満ち溢れているのね」

「はい！　何からしましょうか？　なんでも言ってください！」

「貴のような貴族のご令嬢は初めてだわ」

クスッと小さく微笑んだエルガさんは、昨日よりも可らしく見える。

いえ、昨日もとても綺麗な方だと思ったけど、言葉の通り、今日は可らしい人だなという印象をけるのだ。

「それじゃあ遠慮なく言わせてもらうけど、わからないことがあったらすぐに聞いてね」

「はい！」

もし私に姉がいたら、こんなじだったのかもしれない。

勝手にそんなことを思いながら、朝食作りに取りかかった。

「――おお、とても味そうだ」

予定の時間通りに、騎士の皆さんは食堂にやって來た。

もちろん、レオさんも。

持ち場を離れられない方もいるから、全員が揃っているわけではないけれど。

それでも三十人以上はいる。

パンはほぼ毎食出しているから大量に焼いて、大きなオムレツもたくさん作った。

それから野菜のスープと、ソーセージが今朝のメニュー。

あとりんごが一切れ、デザートで皆についた。

「このオムレツ、今朝は誰が作ったんだ？　とても味いぞ！」

「本當だ！　ふわふわだし味もちょうどいい！　それに、見た目も綺麗だ」

……ふっふっふっ。

ありがとうございます。オムレツを擔當したのは、私です！

そんな言葉が聞こえてきたから、そう聲を大にして言いたい。けれど、私は淑。

こういうときは靜かに微笑むのが嗜みというもの。

さすがにこんなにたくさんのオムレツは作ったことがなかったからし大変だったけど、騎士の方たちが食べるのかと思ったら、一回一回気合いがった。

「オムレツはシベルが作ってくれましたよ。それからスープの味付けも、仕上げをしてくれました」

すると、誰かが言ったその質問に、エルガさんがあっさり答えてしまった。

「本當だ！　スープもいつもとしだけ味が違う！」

「味いぞ！！　一何をれたんだ！？」

〝です〟

なんて答えたら、やはり皆引くだろうか。

だからやっぱり私は、淑らしく小さく微笑んでおくことにする。

「お口にあったようで、よかったです」

「これから毎日楽しみだな！」

「ああ、それになんだかとても力が湧いてくるようだ！　今日も張り切って働くぞ！！」

まぁ、嬉しい。

し大袈裟な気もするけれど、騎士の皆さんが喜んでくれるなら、私はそれだけで満足。

「ありがとう、シベル。これからも貴には食事作りをメインに擔當してもらおうかしら」

「はい、喜んで！」

騎士の方たちの反応を見て、エルガさんも嬉しそうにそう言ってくれた。