《【二章開始】騎士好き聖は今日も幸せ【書籍化・コミカライズ決定】》47.まぁ一応、人並みには知ってるけど
ワイバーンの一件から、三日が経った。
騎士の方たちは事後処理に追われて、大変なようだ。
炎魔法が得意なリックさんは、あの日は命懸けでワイバーンからお城を守ってくれていたらしい。
そのおかげか、大怪我をした者はいないようなので、本當によかった。
私は再び王太子妃となるため……そして正式に聖として宣言されたため、あの日から今日までを王城で過ごしている。
待遇はこれまで以上にいい。
けれど、あれからレオさんやミルコさんたちには、會えていない。
きっと忙しいのだと思うけど、毎日顔を合わせていた家族のような人たちに會えないのは、とても寂しい。
エルガさんも、元気かな……。
私が聖だということは、もうトーリには戻れないのよね。
寮母の皆さんや、向こうに殘っている騎士の方たちにはもう會えないのかしら……。
それが宿命だとしても、やっぱり寂しいわ。
「……」
「シベルちゃん」
「! レオさん!?」
皆が寢靜まったころ、私に與えられた立派な部屋のバルコニーに出て、ぼんやりと外を眺めていたら、下から名前を呼ばれた。
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そこを見れば、ひらひらと片手を振っているレオさんの姿。
「どうしたんですか?」
「君の顔が見たくて。まさか本當に見られるとは思わなかったけど」
「今、行きますね!!」
「え……ちょっと……!」
ここは二階。
だけど、手すりに摑まってゆっくり下りれば、下は芝生だし、大丈夫だと思う。
そう思ってを乗り出した私だけど、思い切って飛び降りれば下でレオさんが支えてくれた。
「……ごめんなさい」
「君は本當に無茶をするなぁ」
レオさんを下敷きにするように落ちてしまったけど、レオさんは平気そうに笑ってる。
やっぱり、ペンダントの効果に関係なく、レオさんは丈夫な方だ。それに、とてもたくましいし。
「……」
「シベルちゃん、元気だった?」
いつまでもレオさんに抱き止められたまま芝生の上に座っていた私たちだけど、じっとレオさんの顔を見つめていたら、彼は優しく微笑んでそう聲をかけてくれた。
「はい、皆さんにお會いできなくて寂しかったですが……レオさんも、お元気でしたか?」
「ああ。元気だよ。ちょっとばたばたして大変だったけど」
「そうですよね」
はっとしてレオさんの上から退いて立ち上がる。そのままし歩いたところにある中庭のベンチに二人で並んで座り、とても久しぶりに思えるレオさんと會話をした。
やっぱり、騎士団は事後処理に追われていて、レオさんも忙しいのね。団長様だし。
「この三日、シベルちゃんがどうしているか、ずっと心配だった」
「……私はとてもよくしていただいていますよ」
「そうだよな。君が真の聖であったとはっきりしたんだ。力にも目覚めたし、これで君はもう大丈夫だな」
「……ですが」
「ん?」
笑顔で紡がれたレオさんの言葉には、しが痛む。
「私は、第一王子様と結婚しなければなりません」
「……」
「マルクス殿下にお兄様がいらっしゃるの、レオさんはご存知でしたか?」
「……まぁ一応、人並みには」
「どんな方なのでしょう。お會いしたことはないですけど、立派な方だという噂を耳にしたことはあります」
「……へぇ、立派。ねぇ」
「でも、外國を飛び回って全然お城には寄り付かないし、いつまでも婚約者すら決めない、自由な方なんですって」
「……へぇ」
レオさんは、どこか他人事のように返事をした。
その反応がし意外だった。
「……」
「嫌なのかい?」
「え?」
それで黙り込んでしまった私に、レオさんが問う。
本當はこんなこと言っちゃいけないって、わかってる。でも……だけど……
「嫌……です」
だって私は、気づいてしまった。
あの日一夜をともにして、夢を見て、レオさんに危険が迫っているところを目の當たりにして……。たった三日會えなかっただけで、私はとても寂しかった。
私は、レオさんのことが――
「一度會ってみるといいよ。そして、話を聞いてみるといい。もしかしたら第一王子はマルクス王子とは全然似ていないかもしれないよ?」
「……」
そうだけど……。そういうことではない。
マルクス殿下の兄だから嫌とかではなくて、私はレオさんのことが好きだから、他の人と結婚するのが嫌なのだ。
でも、それを言ったらきっとレオさんのことを困らせてしまう。
だってレオさんは騎士だもの。國のことを一番に考えるのが仕事だから、聖(私)と王子を結婚させようとするのも當然の話よね。
でもレオさんにそんな笑顔で言われると、が痛む。
とても悲しい。泣いてしまいそう……。
「いっそ、レオさんが第一王子様だったらよかったのに……」
「……そう思ってくれるのかい?」
口に出してから、なんてことを言ってしまったのだろうと、恥ずかしくなってしまった。
「ごめんなさい、そんなわけないのに。私ったら……」
「いや……シベルちゃん、実は――」
「私、そろそろ戻りますね。こんな時間に男の方と二人でいるところを見られたら、第一王子様に怒られてしまうかもしれないわ」
「シベルちゃん……!」
もうレオさんの顔を見ているのが辛くなって、私は口元だけになんとか笑みを浮べて、その場から走り去った。
駄目よ、シベル……。
貴は王子と結婚するのだから。
騎士が好きだけど……レオさんのことをこんなに好きになってしまったけれど……
この想いは忘れなければならないのよ――。
風に乗って涙がこぼれたけどそれを拭わなかったのは、この想いとともに流れていってしまえばいいと思ったからだ。
すみません……( ;ᵕ;)
これが最後のすれ違いです……!(たぶん)
いつも想ありがとうございます!
今回も皆様からの突っ込みが目に浮かぶ作者ですが( ;ᵕ;)w
最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
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