《【書籍化・コミカライズ】誰にもされなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺されていました〜【二章完】》第18話 二度寢と宣誓
お風呂の後は屋敷を散策しようと考えていたが、溫が上がったためか気持ちの良い眠気がアメリアのに到來した。
「お休みになりますか?」
「いや……なんの、これしき……」
とは言ってみるものの、足取りはおぼつかない。
そのうち瞼が意思に反して降りて來てしまい、がふらーっと橫に倒れた拍子に壁にごっつんした。
「あいてっ」
「お休みになった方が良いですね」
それでもなお部屋とは逆方向に向かおうとするアメリアの両肩をそっと摑んで、シルフィが回れ右をする。
「私も初めてお風呂にった時はそうなりました。ポワポワして気持ち良いですよね? 今、お布団にればぐっすり眠れますよ」
「ここは天國かしら……?」
「いいえ、邸宅です」
結局、シルフィに導かれて自室に戻るなりアメリアはベッドに倒れ込んだ。
「アメリア様、せめてお布団をお被りになってください」
「ん……」
のそのそと芋蟲のようにをかして、布団の中に潛り込む。
あったかい。
「一応、お晝のお時間にまた伺いますが、気にせずお休みください」
シルフィの聲に、アメリアはこくりと小さく頷く。
カーテンが閉められ、部屋が暗くなった。
「それでは」
ガチャリとドアが閉まって、部屋がしんと靜まり返る。
「……きもちい」
シーツはいつの間にか新しいものに替えられており、お日様の匂いが鼻腔をくすぐった。
お布団は相変わらず大きくてふっかふかでらかく、小柄なアメリアを聖母のように包み込んでくれる。
お風呂上がり、最高のベッド、程よい暗闇。
睡眠の好條件三拍子が揃ったアメリアを邪魔するものは、何もなかった。
(やっぱり……ここは天國ね……)
もう二度と実家に戻りたくないと心の底から思うほど、この家での待遇は格別だった。
(この生活を死守するためにも、ローガン様に見限られないようにしないと……)
嫌われて、婚約破棄でもされたら目も當てられない。
あの家に戻るのは、死んでもごめんだ。
自分がおっちょこちょいで、抜けているという自覚はある。
「のろま」「愚図」「鈍臭い」と実家で散々に言われてきた自の質が、ローガンの怒りにれてしまわないか心配でならなかった。
(なるべく……おっちょこちょいなところを……見せないように……しないと……)
そんな決意をしているうちに、いつの間にか眠気が限界に來ていた。
ぽかぽかと心地の良い溫もりにを任せて。
アメリアの意識は微睡の底に落ちていった。
◇◇◇
──どのくらい寢てしまっていただろう。
そっ……と前髪に何かがれるで、アメリアの意識が覚醒する。
シルフィが窓を開けてくれたのかしらと一瞬思うが、に溫もりがあった。
ゆっくりと、瞼を持ち上げる。
「起こしてしまったか」
聞き心地の良い低音ボイス。
アメリアの視界に、むっすり顔のローガンが映った。
心臓がひやりと跳ねる。
「ロ、ローガン様!?」
驚き、寢たままの勢のまま後ろにを引いてしまう。
──ゴツッ!
その拍子に、ヘッドボードに頭を打ちつけてしまった。
「大丈夫か……?」
予想以上に大きな音がして、ローガンの聲に焦りが滲む。
「だ、だいじょうぶ、です……」
言葉に反しアメリアの後頭部はじんじんと痛みを発していたが、それどころではない。
(早速やらかしてしまったわ……!!)
おっちょこちょいなところを見せない宣誓を早くも破ってしまったことに、アメリアはの気がさーっと引いていくのをじた。
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