「大丈夫ですか……！？」

腰を押さえ前屈みになったオスカーに、アメリアが聲を掛ける。

突然の事態に、無意識に敬語に戻ってしまっていた。

「ご安心を」

アメリアにオスカーが掌を見せる。

「それよりアメリア様、敬語に戻ってしまっております」

アメリアが「はっ！　ほんとだ！」と言ってる間に、オスカーが「ふんぬっ！！」と気合のった聲と共に腰をばした。

バキゴキッと、あまりからは響いてほしくない音が鼓を叩く。

「いやはや、お見苦しいところをお見せし申し訳ございません」

腰を回しながら、オスカーが何事も無かったかのように言う。

「腰の調子、良くないの？」

「お恥ずかしながら。最近、座り仕事が多いゆえ、凝り固まってきているようでして。昔はへっちゃらだったのですが、やはり歳には勝てませんのう」

ほっほっほと、余裕ぶった笑顔を見せるオスカー。

しかし彼の右手が、そっと腰をっているのをアメリアは見逃さなかった。

「ちょっと待ってて」

先程までの無邪気な子のような雰囲気から一変。

史を思わすような表になったアメリアが駆け出した。

「アメリア様？」

オスカーの聲がけも構わず、アメリアは草原に舞い戻り腰を下ろす。

「えっと……ラムーの葉をこのくらいと、ラングジュリの花をこのくらい……もうちょっと、ブーメイル草もあった方が良いかな……」

ガサガサゴソゴソと、草原のあちこちに行ってはしゃがんで、ぶつぶつ呟いて植を採取するアメリア。

その行に迷いはなく、何か一つの目標に向けていているように見えた。

「これは……もしや……」

ひとつの可能に思い至ったオスカーは何も口を出さず、靜観することにした。

しばらくして、両手を草花でいっぱいにしたアメリアが戻ってきた。

「これ、機の上に置いていい？　汚れてしまうと思うけど……」

「構いませんよ」

「ありがとう！」

アメリアは植を種類ごとに並べたあと、実家から持ってきたカバンをパカリと開けた。

「一応、持ってきておいてよかった」

言いながら、アメリアは機の上に何やら々と並べ始めた。

すり鉢、すりこぎ棒、小さなスプーン、などなど……。

それらは正規品で売っているようなちゃんとしたものではなく、どれも木や石を組み合わせたり食を改造していたりと、手作りが満載だった。

調合のための道か──と、オスカーは予想する。

「えっと……まずはラムーの葉を荒くり下ろして……」

そこからのアメリアの挙は、オスカーにとって全く未知のものであった。

見ていたじ、草をり潰したり花からを搾ったりしたものを混ぜ合わせ、出來たものをまた別の花と混ぜて……といった事をしていた。

その過程でどのような化學反応が起きていて、何が出來上がっているのかはオスカーの知るところではない。

ただ、アメリアの手際の良さから、保有している知識と経験値が凄まじいということだけはわかった。

集中した瞳で手元をかし続けるアメリアの気迫に、オスカーはしばらく目が離せないでいた。