アメリアが「完！」と弾んだ聲を上げるまでそう時間はかからなかった。

最終的に出來上がったを小瓶にれて、オスカーに手渡す。

「アメリア様、これは……」

「腰の痛みに効くお薬よ」

一仕事やり終えたアメリアの聲は興気味だった。

「これを寢る前に腰の痛むところに塗っておくと、夜中の間に痛みを抑える分が染み込んでいって、次の日には多楽になっていると思うわ。とりあえず一回分を作ったから、効果があったらまた言って。そしたら新しい分を出すから」

アメリアがすらすらと言ってみせると、オスカーは嘆の息をらした。

同時に、震いした。

予想はしていた。

まさかこの小さなご婦人は、腰の痛みに効く薬を作ってしまうのでは、と。

（作ってしまいおった……）

それも、ものの數分で。

よりも驚くべきことは、アメリアがそこらへんの裏庭に生えているような草花と、末なお手製の道で作り上げてしまったという點だ。

その知識量、技力、機転の利きよう。

素人目でも、わかる。

（……天才、いえ……神の子とも言うべきでしょうか）

オスカーは確信する。

このお方は、公爵夫人のに収まる仁ではないと。

「本當は熱したり、濾過したりしたほうが効果は高まるんだけど、あり合わせの材料と道で作ったからそこは許してしいかな。ヨザクラ草とかもあると良かったんだけどねー」

知識をひけらかすわけでもなく、ちょっぴり殘念そうに言葉を並べるアメリアを前にしてオスカーの指が微かに震えていた。

気づく。

年甲斐もなく、興している自分に。

（いつ以來の、覚でしょうか……）

──1度見たものを決して忘れない、教えられたわけでもないのに數學の問題をすらすら解く異端児、き頃のローガンを目にした時以來の覚だ。

「アメリア様は……」

「はい」

思わず、オスカーは尋ねていた。

「その調合スキルを、どうやって？」

尋ねずにはいられなかった。

オスカーの質問に、アメリアは一言。

「母の、おかげです」

懐かしそうに目を細めて、アメリアは続ける。

「基本的なことは、母が全部教えてくれたんです。もっとも、母が亡くなった後は自分で試行錯誤しましたが……あっ、腰痛に効く薬に関しては母も腰を悪くしていたこともあって、何度か作っていたので得意だった、という事があったりします」

「なるほど……」

オスカーはふむふむと呟く。

「教えていただき、ありがとうございます」

アメリアの口にした報は表面的なものだ。

しかし、オスカーは深掘りはしなかった。

的にどんな事を學んだのか、試行錯誤とは何をしていたのか……といった質問は、従者である自分ではなくローガンが直接した方が良いと判斷したためだ。

アメリアの能力は、母親譲り。

それだけわかれば、今は充分だった。

オスカーはアメリアに向き直る。

まだ、薬の効果を実したわけではない。

などと無粋な事を考えて、未だアメリアへ猜疑の目線を向けるほどオスカーは愚者ではない。

アメリアが來てまだ數日だが、そのくらいの時間があれば、彼がどんな人格を持つ人間なのか大わかる。

自分のために手を泥だらけにして、細い腕でせっせと薬を作ってくれたあどけない淑に、オスカーは深々と頭を下げ最大限の敬意と謝辭を込めて言った。

「ありがとうございます、アメリア様」

オスカーの禮にアメリアは、対価を求めるわけでもなく得意げにすることもなく。

ただただ役に立つ事ができたと言う嬉しさでいっぱいの笑顔を浮かべて、こう返すのであった。

「どういたしまして！」

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