《【書籍化・コミカライズ】誰にもされなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺されていました〜【二章完】》第60話 崩壊への序章

「ふざけるなふざけるなふざけるなあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

ハグル家の執務室に、窓ガラスを割らんとするほどの怒號が響き渡る。

どん! どん! どん!

と目一杯の力で何度も機を叩くセドリック。

「はぁー……はぁー……」

ただでさええたに怒りのボルテージが瞬間的に上がったためか、全は熱く呼吸も淺い。

震える拳、ギリギリィっと噛み締められる奧歯。

ここ最近では見たことがないセドリックの剣幕に側近は震え上がった。

……セドリックの怒りの原因は、機の上の一枚の羊皮紙に全てが書かれていた。

差出人はヘルンベルク家からのもので、容は散々たるものだった。

支度金のことで使いに行かせた侍メリサの不敬行為……公爵家夫人となったアメリアへの恫喝、暴力行為、所有の破壊、そして極め付けは……貴族界の中でも最重要人の一人とされている『軍神シャロル』への暴行。

當のメリサはシャロルの正當防衛によって負傷し、現在へルンベルク家で治療をけている……と書かれているが、実質は不敬罪で幽閉されていることだろう。

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これだけの罪を重ねたのだ。

もう二度と見ることなくそのまま死罪になる可能だってある。

(一、何がどうなったらそんな事態になるのだ……!!)

あいにく、記載されている経緯説明だけでは、メリサが何を思ってそんな兇行に打って出たのか読み取ることができない。

へルンベルク家まではそこまで距離はなく、行って渉して帰ってくるだけなら一日ほどのはずなのに、どこで油を売っているのかと思っていた矢先の出來事である。

遅れて帰ってくるだけならまだよかった。

だが、公爵家夫人となったアメリアへの不敬や暴行に加えてシャロルへの暴行。

即刻謝罪、管理者責任として賠償金や謝料の請求、爵位剝奪、領地の沒収……様々な事態が頭の中に流れ込んできて卒倒しそうだった。

「あの……セドリック様……」

「なんだ!?」

「ひっ……実は、アメリア様の所有を損傷させたとして、取り急ぎの損害賠償を先方は求めてきております……」

恐る恐る、側近が羊皮紙を差し出してくる。

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「なんだ、そんなことか」

アメリアの所有とのことだ。

どうせ、そんな大した額ではないだろう。

まだ鼻息荒いまま、羊皮紙を奪い取って品目と額を確認すると……。

「なんだこれは……!?」

記載されている品目に目を疑った。

クラウン・ブラッドのペンダント。

記載されている額は……。

「六千萬メイル……だと……!?」

およそ、支度金の三倍の額であった。

妻のリーチェの趣味がジュエリーということもあって、『クラウン・ブラッド』の名はセドリックは知識としては知っていた。

にしろペンダントにしろ非常に高価な品だし、滅多に市場に出回らないため、伯爵家夫人のリーチェですら、格がもうし低いブラッドストーンの指を購していたのを覚えている。

それをアメリアはつけていて、あまつさえメリサが破損させた……。

(何かの間違いではないか……間違いであってくれ!)

セドリックは願うものの、紙には『購証明書あり』と記載されており、その願は打ち砕かれた。

証明書は商品の売買における証明書として最も強い証拠だ。

つまり、記載されている容は全て揺るぎない事実で……。

「くっそおおおおおああああああああああああぁぁぁっっっっっぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!」

セドリックは機に手をかけた。

がらがらがっしゃーん!

機ごとひっくり返され、上にあった書類や筆記用が全て床にぶち撒かれる。

それでも飽きたらないと、セドリックは暴れ回った。

部屋に立てかけられてあった花瓶を床に叩きつけ、本棚を倒し、機を何度も何度も踏みつけた。

「ふーー……ふーー……」

走った目。

真っ赤になった顔面。

湯気たつ勢いで熱を持った

その姿はまるで、怒りに駆られた猛獣のようだった。

もはや側近は、部屋の隅で主人の怒りが収まるのを震えて見守るしかなかった。

財政難にぐハグル家が頼りにしていたアメリアからの支度金。

それを貰えないばかりか、三倍の額の損害賠償金が降りかかってくる。

加えてアメリアやシャロルへの不敬や暴行に対する謝料も積み重なるだろう。

まさに悪夢だった。

悪夢以外何でも無かった。

セドリックは今にもぶっ倒れそうになる。

そのタイミングで、コンコンとドアがノックされた。

セドリックの許可が出る前に、そのってくる。

「ねえねえアナタ、一つお願いがあるんだけど……って、何よこの部屋!? 一何があったというの?」

部屋の慘狀を見て、セドリックの妻リーチェが聲を上げた。

しかしその問いにセドリックは答えない。

「……なんだ、こんな時に?」

「理由は話さないのね。なんでもいいけど、ちゃんと片付けておいてよね。本題なんだけど、今度メルエールから新作の指が出るの、買ってもいいかしら? 赤くて綺麗で、私にとっても似合うと思……」

「今俺に寶石の話をするんじゃない!!!!!!!!!!!」

腹の底からセドリックはんだ。

ぶちぶちっと脳の管が何本か切れて頭からが噴き出さんばかりに。

「な、何よ寶石の一つくらい!! 小さい男ね!」

一気に機嫌を損ねたリーチェ。

だがセドリックの剣幕に只事ではない事態をじ取ったリーチェは、悪態をつきながら逃げるように部屋を去っていった。

ついでに側近も気配を消して逃げるように部屋を出ていった。

「おのれおのれおのれえぇぇ……!!」

一人殘されたセドリックが聲を荒らげる。

荒らげすぎて掠れ気味だ。

それでもセドリックは聲を荒らげ続けた。

怒りを発させ続けないとおかしくなりそうだった。

「許さん……許さん……許さん許さん許さん!!!!」

これも、全部全部、アメリアのせいだ!!

アメリアが支度金の事をすぐかしていれば、こんなことにならなかった。

「アメリア、お前のせいで……!!」

冷靜に考えると九十九%はメリサのせいだし、支度金の慣習に照らし合わせるとアメリアに非は全くないのだが、怒りをぶつけるべき相手は生憎の檻の中だ。

セドリックの怒りの矛先は、わかりやすく歪曲されてアメリアへと向いた。

「許さん……許さんぞアメリアアアアァァァァ……!!」

確かな怨嗟と憎悪が含まれた聲。

セドリックの怒りは、當分収まりそうに無かった。

……セドリックは知らない。

この出來事は、今後起きる崩壊のほんの序章にすぎない事を。

今は、まだ──。

これにて、第二章完結となります。

ここまでお読みくださりありがとうございました!

初めての異世界という事で手探りの中で書き進めていたのですが、ここまで形にすることが出來たのはひとえに読者の皆様の応援のおかげです、ありがとうございました。

主に世界観設定の整合やざまあ回のヘイト管理等で未な部分が多々あり、読者の皆様には混やご不快な思いをさせてしまったかと存じます、自分の力不足で申し訳ございません。

皆様から頂いたたくさんのご意見やご想を活かして、今後はより一層面白い語を書くことができればと思うので、引き続き溫かく見守っていただけますと幸いです。

三章ではアメリアの薬スキルまわりのエピソード、ざまあ妹との絡みをメインに書いていきたいですね。

もちろんローガンとのいちゃこらもたっぷりで!

またこのタイミングで恐れりますが、先日発表した通り現在書籍化作業を並行して行なっているのと、しっかりとプロットを練って充分なクオリティで三章を展開したいので、更新をしばらくお休みさせていただきたく思います。

早くて1ヶ月ほどで連載を再開する予定ですので、ブクマはそのままでお願いいたします!

新作の方は引き続き更新を続けていくので、是非是非チェックをお願いいたします!

本作と同じシンデレラ風味なお話です。

↓新作URL↓

https://ncode.syosetu.com/n7286hr/

最後に「面白かった!」「二章完結お疲れ!」「三章も楽しみ!」など思ってくださりましたら、ブクマや↓の☆☆☆☆☆で評価頂けると勵みになります……!

めっちゃくちゃ勵みになりました、いつもありがとうございます。

長文失禮いたしました。

それではまた、三章でお會いしましょう!

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