《【書籍化】キッチンカー『デリ・ジョイ』―車窓から異世界へ味いもの輸販売中!―【コミカライズ】》唐揚げは共通言語!

午後から営業した住宅街で、今度は反対の窓がレイモンドさんの世界とは違う異世界へ繋がった。試しにもしかしたら…の思いで細く開けての確認だったから、異世界人と接せずに撤退できたけど、半分冗談で試してみただけに繋がっていたことに愕然とした。

それもだ、今度は獣人っての?ケモ耳プラスしっぽ種族の異世界らしい。

いや~、參ったね。どうなっちゃってんだよ!?このキッチンカーは。

でも、不思議なんだよな。UVフィルムってあるとは言え明ガラスがっているのに、ガラス越しじゃ異世界は見えなくて、窓を開けると繋がる。試しに運転スペースのウィンドウを下げてみたけど、そっちはごく普通の風景だ。もちろん、車を降りて回ってみたよ?でも異世界じゃない。

つまりは、店舗スペースの窓からだけ、営業中の間と二カ所の拠點でのみ繋がる二つの異世界。

誰が何のために、こんな複雑なことをしたんだろう。

たまたま異世界への時空が重なった、SF説?

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神様が俺のデリを気にって繋げた、ラノベ的ファンタジー説?

俺としては2番目押しだけど、そうそう神様も暇じゃないだろうしなぁ。

取り合えず慎重に行してみて、異世界流してみようと思う。興味ない訳じゃないし、ここまで來たら試さないのは商売人として失格だ。

そんな訳で、まずはレイモンドさんとの意思疎通&換にチャレンジしてみることにした。

だって、彼もなんだか妙だと気づいていたようだし、かと言って接を拒否するつもりもなかったようだ。あったら、去り際に窓閉めておけなんて忠告してくれる訳ないし。

さて、異世界流!レッツ チャレンジ!

俺が最初にやったのは、レイモンドさん宛に手紙を書いたことだ。

容は、屋臺の店は異世界で俺も異世界人であること。なぜ窓が繋がったのか、こちらとしても全く原因が分からないこと。窓を通すと、こちらの金銭やがそちら仕様になること。レイモンドさんさえよければ、お客様として以外に親を図ってみたいこと、などだ。

ただ、貨やはあっち仕様に変化したけど、手紙の文字は大丈夫なのかと心配だったから、いつもより早めに來て日本語を書いた紙を、そっと窓から出して見てみた。すると、す~~っと文字が変化した。見たことない記號に。これなら大丈夫だろうと、手紙を小さく折りたたんで弁當につけた。

さて、翌日は本來の窓には準備中の札を出し、いつもより30分ほど早い時間ながら、ビルの側面に向く窓を開けてみた。繋がっているのは、さっきのメモで確認済みだ。

「こんにちは!約束通り買いにきました!」

すでにレイモンドさんが立っていて、思わず笑ってしまった。元気で明るい笑顔を見てほっとしたのもある。それに、彼も俺が現れたのに安心したようだった。まだ、しはお互い張してるけどね。

「いらっしゃいませ。ご來店ありがとうございます。昨日は、遅くまで引き留めてすみませんでした。怒られませんでしたか?」

「ああ、ご心配は無用です。…ここは城から一番遠い裏門なので、しくらいの遅れは目を瞑ってもらえます」

レイモンドさんは、周りを見回して聲を小さくすると、こそっと話してくれた。

彼はどうも王都を取り巻く城壁の門兵らしい。ただ、森林に囲まれた裏門みたいで、人の通りもないから暇そうだった。

「お弁當は、どれにしますか?昨日のは殘りだったんで、あれしかお渡しできなかったんですが、お売りする弁當は、この量になります」

俺は、ちらしを彼にゆっくり差し出した。カラー印刷のB5判のチラシが、あらあら不思議!わら半紙みたいな薄茶の紙に変わり、弁當の寫真がな絵に変わったよ。もちろん、文字もね。

「へー…々あるのですねぇ…でも、すでに決めて來てます。昨日の品がとても味かったので、もう一度食べてみたかった。お願いできますか?できれば、二包み」

おお!異世界男子も、やはり唐揚げの虜か!

「はい。お供はパンかごはんが選べますが、どちらに?」

「ゴハン…とは、昨日の三角の品でしょうか?」

「ええ、昨日のは焼いた魚が混ぜてありましたが、今日は白いままですが…」

「では、両方を一つずつで」

「はい! お會計は1000ニルになります」

俺はそう告げると、いそいそと弁當を用意する。

通常のメニューにはパンはない。白飯一択で、おにぎりや炊き込み飯に変わる時があるぐらいだ。

けど、中世イギリス風なレイモンドさんの佇まいから、主食はパンなんじゃ?と思い、小型のらかめなフランスパンもどきを用意してみた。それの間にさっとマーガリンを塗って、サラダ用の葉とポテトサラダをちょっと挾んだ。後は、塩結びで2つ目の弁當をこさえて、プラスプーンを付けゴムで重ねた。そして、例の手紙を2つの弁當の間に挾んで、差し出しだ。

「おまたせしました~」

おおー!ゴムがヒモに、プラスプーンが木でできた簡易フォークになったよ!

「すごい!…こんな料理、初めて見ました」

「ありがとうございます。お口に合ったら、またお願いします。それと…お手紙を挾んでおきましたんで、読んでください」

レイモンドさんがこっちに出した手には銀の丸い貨が乗っていて、でも目はもう片手に持った弁當に注がれている。俺は貨をけ取り、頭を下げながら何喰わない作でこそっと囁いてみた。レイモンドさんの顔が弁當から俺に向けられ、ちょっと目を見張った。俺は、なにも言わずに軽く頷いた。

「それでは、さっそく味わいに戻ります。では!」

飛び跳ねるように戻っていく彼の後ろ姿を見送って、俺はさっさと窓を閉めた。

さーて本來の営業に戻りましょう。

手紙を読んだ彼が、どんな反応を見せてくれるか楽しみだった。

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