またもや２話更新です。

連休中にできるだけ更新したいっす。

あ、誤字字を見つけましたら、遠慮なく指摘して下さい。

キッチンカーを営業する間、反対側の窓を細く開けておく癖がついてしまった。

お客がひける度にちらりと目をやり、調理をして次の來店客を待つ準備を整え、手が空いた所で窓の側に立って、休憩しながら耳をすます。

今日のチンジャオロースーは、いまいち味が決まらなかった反省や、エビチリの量をし増やそうかなんて思案しながら、意識の半分を窓の外に向けていた。

そーゆー態度は、商売人としては落第だ。料理と言う繊細な工程を経て出來上がる商品を扱っているのに、集中しないで意識の半分を商売とは別の方面に向けちまうなんてな。

でもなー、今の所は俺だけしかできない経験をしてるんだぞ？これから先、どれくらいの時間を彼らと共有できるか分からないんだぞ？だから、一回一回がめちゃ貴重な験。

あー、今日もレイモンドさんは來なかったかー。

殘念に思いながら、窓の隙間を閉めようとして―――ん？

今、その隙間から妙な音がした。近くからじゃなく、遠くから響く地鳴りみたいな低く重い音が。

なんだろうと気になって、閉じかけた窓をまたしだけ開けて周りを確かめ、人気がないのを確認してから半分開け窓から顔を突き出した。

遠くを見ようとしても、視界の半分は緑生い茂る森で、あとの半分は城壁が目隠しになっているせいか上空しか見えない。でも、ずーんとに響く振と、音に似た音がする。

おいおい、大丈夫か！？

なんだか凄く恐ろしくなって、乗り出していたを引っ込めるとすぐに窓を閉じた。その窓に背を預け、じわじわと湧き上がって來る不安と焦燥を必死に抑え込んだ。

急遠征と、レイモンドさんは言ってたっけ。急ってことは、非常事態みたいなもんだな。でも王都でこんな空みたいな音がする…って、戦爭が始まった…とか！？大丈夫なのか！？

あ～～っ！苛々するけど、俺には何もできないっ！

こんな時、マジでファンタジーのチート勇者になれたらな！と思っちまう。

◇◆◇

しでも午前中のことを忘れて過ごせるように、午後からはし早めに來て、フィブの世界に繋がる窓へと強引に意識を向けた。しかし、こちらはマジで戦爭中の世界だ。

はぁー…俺って、幸せなんだなぁ。苦労はあるけど、これは俺個人の問題で、戦爭みたいな理不盡な苦労じゃない。

ただ、俺がいるこの世界にだって戦時下の國があったり、貧困や飢に苦しむ國があったりしている。だから、この世界は平和だとまでは言わないが、俺の周りの小規模な範囲は、やっぱり平和で幸福だ。

なーんてしでも落ち著くために仕事に集中していると、背後から軽いノックの音がした。

笑顔でお客を見送り、外に出してある看板を畳んで閉店準備を始める。その時に、來店しそうな人はいないか確認してからキッチンカーの中へ戻った。

そろそろと窓を開くと、今までとは違って肩を落としたフィヴがいた。

ドキリと心臓が不安に震える。

「お待たせ。…元気ねぇな？なんかあったか？」

いつもならキラキラした綺麗なオッドアイを俺に向け、顔面いっぱいにその時のを素直なほど浮かべてるのに、今日はうつ向いたままだった。

「…あのね、昨日貰ったお菓子。仲間の子たちに見つかっちゃったの。匂いを消してから戻るの、忘れちゃってて…」

「あー…そっか。でも、どうにか誤魔化せたんだろ？」

「うん。しだけだったから、旅の人から貰ったって…。でね？あのお菓子、まだある？」

おお？クッキーをお気に召して頂いた様子だ。

でも、避難民だって言ってたが、お金を持ってるんだろうか？

「あるが、売りなんだよなぁ…」

可哀想だと思っても、店の商品でそうそう無料奉仕はできない。昨日渡したは、たまたま貰った差しれサンド（嫌がらせ用だがな）と商品価値を落としちゃった奴だったし。

「あ、お金ならあるよ！いくら？」

「金…持ってるのか？」

「ええ！これでも、王様の近衛戦士が二人もいる家の娘なんですから！」

なるほどなぁ。持てるだけの財産を擔いで逃げて來た訳か。

さて、こちらの貨幣価値はどんなかな？

弁當はワンコインの５００円玉一つだったが、今度はジャリ銭で３００円だ。

１００円玉を指に挾んで、フィヴに聲をかけた。

「フィヴ、これ見えるか？これが俺の世界の貨だ。で―――って、訳だが」

俯き加減のフィヴが上目使いで俺の手元に視線を集中させたのを見計らって、またもやそろそろと窓を通してみた。

謎。これが、貨？

俺の小指の爪くらいの、なんだか分からん青く綺麗な四角い石だか寶石だかに変化した。なんだっけ？的にはラピスラズリだっけに似た、紺に近い青。

「こ、これが三つで袋が一つ買える」

あああっ、何だろう！銅でも銀でもねぇ！

予想だにしなかった変化に、狼狽えてしまってるやんけ！

「え、さっき…ええ！？なんでなんで！？どうなってんのよっ！！」

おい！謎イリュージョンに喰い付いてどーすんだ！クッキーを買いたいんだろうが！

「知らねぇよっ。どうしてか、この窓を通すと変化するんだよ！別の異世界でも―――あ」

「別のって…なに！？」

そう言えばフィヴには、レイモンドさんの世界のことを話しておかなかったな。どーせ顔を合せることなんて無いから、わざわざ話さなくてもいいかーと後回しにしてたんだ。

が、フィヴの喰いつきが一段と激しくなってしまった。

「ねぇ！！こことは違う異世界なの！？」

「あ…ああ、同じようにな…窓越しだけど、フィヴの世界とは違う所にも繋がるんだ。外見は俺同様なんだけど、々と違う」

お？また瞳の輝きが戻って來たぞ。綺麗なんだよなぁ。オッドアイって近で見たことなかったから、こうして至近距離で見ると不思議だし本當に綺麗だ。

「そうなの…。トールや私の世界のほかに…まだ異世界ってあるのね…凄いわ、トール！」

「俺が何かした訳じゃないんだぞ？それより―――」

「ああ、行ってみたい…」

「おい！フィヴ、クッキーどうするんだ？」

夢見たっていいじゃないか、だな。

「クッキーって名前なのかぁ。袋三つちょうだい。はい、お金！」

マントの下に著込んだ上著のから革袋を引っ張り出し、その中を覗き込みながら貨を摘まみ出している。

その間にこちらの営業窓から外を眺め、閉店の札をかけた。そしてクッキーの袋を三つ持って行き、フィヴへと差し出した。

空いた俺の掌に、親指の爪くらいの楕円の赤い石とさっきの青い石が四つ乗った。

ゆっくりフィヴにも見えるように手を引いて、窓のレールぎりぎりに下げて引っ込めた。

俺の手には５００円玉と１００円玉が四つ。計９００円頂きました。ありがとうございます。

真ん丸に開いた寶石が、キラキラしていた。

＊ご想を下さる皆様、ありがとうございます。とても勵みになり嬉しい限りです。ただ今、執筆熱が上がってる最中ですので、しばしそちらを優先させて頂きます。が、お返事は遅くなってもお返ししますので、申し訳ありませんがしの間お待ちください。

それと、小説のどこを指してるのか意味の解らない書き込みや、ストーリーの先を示唆もするもの、先を予想しての確認の様な書き込みに関しては、すみませんがお返事しないか、遅らせる可能がありますので、ご注意下さい。よろしくお願いします。

後書きお願いに関して、誤解を招く様な表現を訂正しました。２/11