《【書籍化】キャだった俺の青春リベンジ 天使すぎるあの娘と歩むReライフ》27.イケメンは絶滅しないかな
※改稿を行いました。(21/1/6 AM1:40頃)
改稿理由については活報告の【「キャな人生を~」26話、27話、28話改稿のお知らせ】を一読ください。活報告はこのページ上部の作者名をクリックした先にある作者マイページにあります。
21/1/6 AM1:40頃以降に初見の方は上記を読む必要はありません。
「……なんでそんな漫畫みたいな展開になってるんだよ」
「俺が聞きたいよ」
晝休みの教室で、俺と銀次は弁當を広げていた。
そしてその會話の最中、俺が剣という男子から『期末テストで勝負しろ! これは決定事項だ!』と一方的に告げられてしまったことを伝えると、銀次は呆れた様子だった。
「しかしまたえらいのに目をつけられたな……よりによって『王子様』の剣隼人か」
「え? あいつマジでそんなあだ名なのか?」
「ああ、家は剣グループを経営する一族で、本人もイケメンでスポーツ萬能で績優秀で、まるで漫畫から出てきたみたいな俺様系だから子たちはそう呼んでるらしい」
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なるほど……そこまで完璧超人だからこそ紫條院さんを人にしたがっているのだろう。自分に相応しい『上』の子を求めているのだ。
「けどなんでそんな奴が普通の高校にいるんだよ……私立の金持ち學校に行けば良いだろうに」
「中學は私立の名門學校に行ってたらしいけど……噂だと自己中すぎて他の金持ちの子どもとトラブルを起こしまくったから高校は普通のところを親に強制されたとか何とか」
「トラブルになっても問題にならない庶民しかいない高校にしたってか? 本當だとしたら迷すぎるだろそれ……」
ただまあ、あの格じゃトラブルを起こしまくったという部分については信憑が高いな。
「それにしても『勝負だ! お前が負けたら今後俺の好きな子に近づくな! はい決まりぃー! 俺が決めたから決まりぃー!』って小學生かよ。聞きしに勝る俺様ぶりだな……」
「まあ、ちょっと會話にならなかったな」
前世における高校時代の俺とは真逆の意味で、あの王子サマのコミュニケーション能力はかなりヤバい。
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「でもまあ……結局お前は何の約束もしていないんだから別に何もする必要はなくね? 剣が勝負だペナルティだと騒いでも付き合う必要はないし」
「ああ、そうだ。そうなんだが……俺はあいつを負かしてみようと思う」
俺がそう告げると、銀次は目を瞬かせて驚いた。
「もちろん俺はテストの點數で負けても約束もしてないペナルティなんて守る気はない。けど剣の奴は自分が勝ったからどうのと絶対に大騒ぎする」
「話を聞いた限りじゃ100%そうだな……なんつうウザさだ」
「だろう? そしてその後は調子づいて俺への敵対行がエスカレートしていくのが目に見えている。だからどうせなら、あいつが「さあお前の點數は何點だ!」って比べにきたところで勝って、鼻っ柱をへし折っておきたいんだよ」
剣の奴と話していてわかったが、あいつは自信の塊だ。
自己の優位を信じ切っており、俺をその辺の石ころだと思っている。
だからこそ、俺があいつに勝利することで奴に途方もない敗北を與えることができるのだ。
「……できるのか? 相手はこの前の中間テスト1位だったんだぞ? まあお前は10位だったから勝ち目がないことはないだろうけどよ」
「ああ、本當に頭いいみたいだなあいつ。でもまあ……負ける気はない」
あいつは完璧超人かもしれないが、無敵ではない。
高校生レベルのテストで爭う以上、勝てない道理はない。
「正直、あのクソ傲慢野郎には目にを見せてやりたいしな」
あの腐れ王子が當たり前のように紫條院さんのことを『春華』と呼び捨てにしていたことを思い出し、俺は憎々しげに呟いた。
自宅の居間で俺はせっせとシャープペンをかす。
期末テストは10科目あり範囲は中間より広いので満遍なく勉強が必要だ。
ちなみに前世では毎回赤點ギリギリから平均程度の績だった。
(逆行や転生ラノベお約束のチート能力なんて付與されなかったからな。ただ地道に勉強するしかない)
俺が持っているものと言えばただ人生への激しい後悔からくる行力と、社畜生活で鍛えられたメンタルと経験のみ。
そのおかげで紫條院さんには前世の高校時代よりはるかに接近できているが――
(けど……あの剣みたいなイケメンが紫條院さんに先に告白したらどうなる?)
形は無條件で強い。
いかに紫條院さんが天然ボケだとしても、真正面からあの形力でを囁かれればなからずグっときてしまうのでは?
「イケメンは全滅しないかな……」
「え、なに、突然どうしたの兄貴」
近くのソファで雑誌を読んでいた妹の香奈子がギョっとした顔を向けてくる。
あ、なんだいたのかお前。
「最近以前にも増してガリガリ勉強してるかと思ったけど……なんかあった? 今の呟き、やたら恨みがこもってたよ?」
「ああ、うん、ちょっと王子サマからテスト勝負を挑まれてな……ハエが寶石に止まっているのが我慢ならないらしい」
「はぁ?」
わけがわからないという顔の香奈子に説明を要求されたので、俺は剣との間にあったことを話してやった。
その王子の人気から、俺がそいつを打ち負かそうと考えているところも余さずだ。
「ふーん……その人そんなにイケメンなんだ」
「ああ、だからちょっと不安になっちゃってな……テストの點數比べに関係なく、もしああいう形が紫條院さんに告白したらやっぱり心かされてしまうんじゃないかって……」
「うん、まあイケメンって強いからね。が嫌いな男がいないのと同じでイケメンが嫌いなもいないし」
「うぐっ……」
それは當たり前のことなのだが、こうしてキャでリア充の妹からはっきり言われると辛い。やっぱこの世はイケメン中心天説なのか……?
「でもそれは中もイケメンだった場合の話だよ。聞く限りではそいつクソだから全然気にしないでいいって」
「そ、そうなのか?」
「そそ、だってそいつの俺様王子ムーブってイケメンってフィルターがなかったら痛いってレベルじゃないっしょ?」
「まあ……普通の顔の奴がやってたら単なる頭のおかしい奴扱いで誰も近づかないだろうな」
「そんな奴をキャーキャーもてはやすのはとにかくイケメンならなんでもいい子か、頭がヤバイほどのオラオラぶりを男らしさだと思ってる子とかだから。まともなレベルの子にはまず敬遠されるタイプだよ」
「…………よくそんな分析がすっと出てくるな」
「え、だって私兄貴と違ってモテるもん」
「兄をディスるのは止だってこの前言っただろぉ!?」
キャでリア充であることを見せつける妹が辛い。
「まあ、男の子だっていくらでも格がクソ傲慢な奴とか付き合いたくないでしょ? ハードとソフトって同じくらい大切だし」
「確かに……」
思い出すのは前世で出會った本社から出向してきた人OLだ。
自分は可いから許されるという自信に満ちあふれており、同僚や後輩をヒステリックに責め、上司には貓なで聲で接して恩恵を得るのが常套手段だった。
最初はこんな人と仕事ができるなんてラッキー!と思ったが、すぐに評価はただのクソに変わった。
本社に戻っていった時は心からほっとしたものだ。
「いくら顔が良くても暴言を吐いたりやたら傲慢だったりが許されるのは、それこそラノベやアニメの中だけだよな……現実にいるとマジでクソだ」
「そーいうこと。兄貴の大好きな紫條院さんはそんな見た目だけの王子サマになびく人なの?」
「いや、それは……考えてみたら全然想像つかないな。というか絶対ない。俺は一何を悩んでいたんだ……?」
冷靜になって考えてみるとあの傲慢男になびく可能を考えること自が紫條院さんへの侮辱でしかない。イケメンという自分に縁のない力を前にしてなからず不安になっていたようだ。
「うわ……最悪だ俺……。イケメンなだけでクラっとくるかもしれないなんて……紫條院さんにメチャクチャ失禮なことを考えてた」
「でしょ? だからイケメンに取られちゃうかもーなんて心配するのはアホだよ兄貴。そんなことに心のリソースが奪われたら勝てるもんも勝てないよー?」
言って、香奈子はへへーと笑った。
そこで俺はやっと気付く。
この一連の話は、俺の不安を取り除いて元気づけるためのものなのだと。
「そんな腐れイケメンより今の兄貴の方が3000倍カッコイイって! だから気にしないでガリガリ勉強して、コテンパンにしてしまえばいいから!」
「ああ、そうだな……ありがとう香奈子。テストが終わったらそのイケメンがどんな顔で負けたのか話してやる」
「その意気その意気! ラブ戦士の兄貴が負けるわけないって!」
前世では険悪だった妹の言葉だからこそに染みる。
イケメンという世界共通の強者に対してもう心が僅かでも竦むことはない。
この無邪気な笑顔に応えるためにも絶対勝つと、俺は改めて心に誓った。
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