《【書籍化】キャだった俺の青春リベンジ 天使すぎるあの娘と歩むReライフ》28.この時間が至福だとは言えない(言った)
※改稿を行いました。(21/1/6 AM1:40頃)
改稿理由については活報告の【「キャな人生を~」26話、27話、28話改稿のお知らせ】を一読ください。活報告はこのページ上部の作者名をクリックした先にある作者マイページにあります。
21/1/6 AM1:40頃以降に初見の方は上記を読む必要はありません。
「それでここの數式に當てはめて――」
「あ、なるほど……それで値が出るんですね」
放課後の紫條院さんとの勉強會もすっかり恒例となった。
先生役なんて最初はどうなるかと思ったが、紫條院さんの真面目さもあり、今日まで実に順調だ。
「ふう、それにしても勉強ってどうしてこんなに辛いのでしょう……今から3年生になった時の験が怖いです……」
教科書やノートが載った機をじっと見て紫條院さんが呟く。
どうやら期末テストの追い込みでやや肩が重そうだ。
「でも紫條院さんも世界史や現國は好きだって言ってたじゃないか」
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「ええ……歴史を知ったり文章を読んだりするのは好きです。けれど……けれど……數學とかはどうしても辛いんです!」
勉強のストレスでどうやらちょっとテンションが高めなようで、紫條院さんが頭を抱えて嘆く。
「あー……紫條院さん苦手だもんな理系全般……」
「そうなんです! そもそも化學や生ならまだしもあの平面ベクトルとか三角関數とか將來本當に使うか疑問です! もう泣いてしまいます!」
ううむ、相當テンパっている。
ラノベ止令回避のためにずっと頑張ってきたが、最後の詰めにさしかかってちょっと心がお疲れのようだ。
「まあ、工學系とかの専門的な職業だと使うだろうけど……普通の仕事じゃ基本的に使わないだろうなあ」
「え……! やっぱりそうなんですか……!?」
紫條院さんが衝撃の真実を知ったとばかりに目を見開く。
「こんなに苦労して覚えても社會に出た後で活かす機會がないなんて……なら一どうして私たちはこんなものを學んで……?」
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うん、みんな一度はそこを考えるよな。
特に數學とか古文とか。
漢文に至ってはアレもう暗號解読の訓練かと思う。
「まあ、も蓋もないことを言えば學歴や験のためだろうけど……どういう意義があるのかと言えば俺は自分を知るためだと思ってる。將來の実用があるなしに関わらずんな事を學べば、どの分野が自分に適があるのかわかって將來の方向を決めやすくなるし」
「それは……そうですね。私は數學者とかプログラマーとか絶対無理です……」
俺の平凡な論なんかに紫條院さんは深く納得して頷く。
素直だ……。
ちなみに偉そうに語っている俺だが、前世の高校時代において勉強は萬遍なく苦手で、自分の適も何もロクに見分けられなかった。
今にして思えば、母さんが出してくれた學費を無駄にしまくっていたのだと気付いてが痛む。
「あとはまあ……一応ここって高校だからな。俺たちは試けて授業料を払ってまで中學より難しい教育をけたいって希してここにいるから……」
「う……っ、そ、そうでした……別に義務じゃなくて自分たちでんで學して中學より上の授業をけに來ていることを忘れかけてました……」
いやまあ、そんなに肩を落とさなくていいよ紫條院さん。
多分ほとんどの高校生がその辺をよく忘れているから。
「はは、俺もしょっちゅう忘れ……っん、む……ぅ……」
不意に、俺は頭に霧がかかるような眠気をじた。
睡眠はしっかりとっているつもりだが、やはり自分の勉強と先生役を両立するのはなかなか大変だ。
「あの……新浜君。なんだか疲れてませんか?」
「ああ、いや、全然そんなことはないよ!」
紫條院さんが心配の目を向けてくれるが、俺は即座に笑顔で元気をアピールした。
憧れの人に疲れなんて見せたくない。
「でも……なんだか最近とてもを詰めているような……」
「ええと、それは……」
剣の奴が言い出したテストの點數比べに勝つために努力中なのだが、その事を紫條院さんにはまだ話していない。
元々紫條院さんはお父さんからのラノベ止令を回避するために、期末テスト対策を頑張ってきたのだ。
そしてその仕上げの最中に、『剣とかいう奴が紫條院さんにご執心で、敵視された俺はテスト勝負を挑まれて、負けたら紫條院さんに二度と近づくなと一方的に言われた』なんていう話をするのは心に不要な負擔をかけすぎると判斷したのだ。
もちろん、俺がテスト勝負に負けて剣がそのことで騒ぎ出したりすれば全ての経緯を伝えるつもりだが……なくとも期末テスト終了までは待ちたい。
「その、後は追い込みの仕上げだけですし、私に勉強を教えるのが新浜君の負擔になっているのならこの勉強會は終わりにしても……」
「いや、全然大丈夫だから! 絶対にやめないでいいから!」
心配そうに俺を見る紫條院さんに、思わず必死に言った。
紫條院さんの期末テスト対策として始めたこの勉強會は、俺にとって憧れの人と一緒にいられる大切な時間なので負擔どころか至高の喜びとしてやってきたのだ。
そして、その勉強會を最後まで続けたい理由はそれだけじゃない。
「俺は……ん……む……」
しかし流石にちょっと休まないとだめかな……なんだか眠さで頭がフラフラして、意識が緩んできたような気がする……。
「……ん……頼むから……続けさせてくれよ紫條院さん……」
「え……?」
いかん、眠い……さっきおやつを食べて糖値が上がったせいか、眠くて自分の意識と言葉が今イチ制できない……。
「俺は……自分は勉強なんてできないと開き直って……高校にってからロクな努力をしてこなかった……」
睡魔に襲われた頭が、ぼんやりとした意識のまま勝手に喋る。
ああ、そうだ……そのサボりのツケが……あんな酷い未來に繋がって……。
「自分を変えようとして勉強を頑張って……それを紫條院さんが褒めてくれたのは……本當に心に染みたんだ……」
そう……そうなんだ……。
俺の変化や努力をいち早く褒めてくれたのは……いつも紫條院さんだった。
「しかも勉強を教えてしいって……俺を頼ってくれた。こんな俺を認めて、頼りにしてくれた……俺は泣きたくなるほど嬉しくて……だからその信頼に最後まで応えたいんだ……」
「新浜……君……」
いかん、ねむい。
ねむくて、あたまがはたらかない。
「それに……紫條院さんと一緒に勉強できるこの時間はとても大切で……しでも長く続いてしいから……」
「え――」
「ん……すぅ……――はっ!?」
い、いかん、一瞬寢落ちしてた!
(くそ、大丈夫アピールした直後に寢落ちガックンなんて無様な! これじゃ紫條院さんはますます俺の疲労を心配するじゃないか!)
「ごめんごめん、なんかボーッとしてた! さあ勉強を再開……?」
慌てて聲をかけるも、紫條院さんは何故か衝撃をけたような表のまま固まっていた。
な、なんだ? 寢落ちする寸前の記憶が飛んでるけど、まさか睡魔で理が薄くなった頭が変なことを言ってしまったのか?
「その、紫條院さん……?」
「あ、はい……」
「紫條院さんこそ合が悪いのか? なんだか頬に赤みがさしてるけど……」
「あ……そうですね……。風邪でもないのになんだか頬がポカポカしてます。私、どうしたんでしょう……」
紫條院さんが不思議そうに自分の頬をでる。
「ふふっ、それにしても……私の図々しいお願いから始まったこの勉強會を、そんなふうに考えていてくれたんですね」
寢落ち寸前の俺は何を言ったのか、紫條院さんは何故かとても嬉しそうな様子で言った。
「この時間がずっと続いてしいと思っているのは……私だけじゃなくて良かったです」
「え……?」
長い黒髪のは、いつもの朗らかな笑顔でごく自然にそう告げてきた。
天然の本領発揮とばかりにごく自然に紡がれたその言葉に、今度は俺が固まってしまう。
「では改めて……これからもお願いします先生!」
「あ、う、うん! こちらこそよろしくな!」
やる気に満ちた快活な笑顔を浮かべる紫條院さんに、俺も笑顔を返す。
ああ確かに……この時間はずっと続いてしい。
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