《【書籍6/1発売&コミカライズ配信中】辺境の貧乏伯爵に嫁ぐことになったので領地改革に勵みます》第8話 セルジュの家族
「その前に、荷を運ばせなくちゃかな」
「あ、そうね」
フレデリクたちを外に待たせたままだ。
「荷はどこに運べばいいの?」
「二階は、しはマシだから……」
階段を上がってみると、確かにしマシだった。
フレデリクの指示で、者やお供の侍たちが荷を運び始める。
セルジュの城の使用人たちも手を貸してくれた。
二階もだいぶ古く、床も壁も傷んでいるが、調度品が壊れたままということはなく、ドアや窓もきちんと嵌っている。
掃除もきちんとしてあった。
小さな城だった。
もともと部屋數もあまり多くない上、何しろ屋が半分崩れている。西側にある部屋はほとんど使いにならないようだった。
主の部屋がある東の棟は無事で、主寢室に荷を運びれた侍たちは、夫人用のクローゼットにドレスをしまった。
セルジュと並んで室を眺めていたアンジェリクは、その部屋には天蓋付きの大きなベッドが一つあるだけだということに気づいた。
「寢室は、ここだけ?」
「客用寢室と子ども部屋がいくつかあるけど、今のところ使っているのはここだけだね」
「使っているのは……?」
「使える部屋が……、ここだけ、です」
やっぱり。
「問題あるかな?」
ふっと笑われて、アンジェリクは首を振った。
結婚式はまだだが、証文には王のサインがある。
セルジュとアンジェリクはすでに正式な夫婦だった。
結婚したのだから、一つのベッドで寢ても何も問題はない。
今夜から、この部屋でアンジェリクは寢るのだ。
セルジュと二人で……。
切ないような苦しいような気持ちになった。ドキドキしすぎてが痛い。
エルネストと結婚すると決まっていた時には、しもこんなふうにならなかった。
夫婦になれば、まあ、そういうこともするのだろうなと、そういう分野専門の教育係であるブリアン夫人から説明されて、なんだか面倒くさそうだなと思っただけだった。
し気持ち悪いけど、みんな我慢しているのだから我慢しようと思っていた。
なのに……。
領地を回る時に、領民の若い男が幸せそうに抱擁し合う姿を見た。
好きな人となら抱擁も接吻も、あるいはそれ以上のことも、きっと幸せな気持ちでけれられるのだろうかと、羨ましく思った。
自分とは無縁の幸福。
なのに……。
出會って、まだ數時間。セルジュがどんな人かも知らない。
なのに……。
「あ。そういえば、ご家族は?」
唐突にアンジェリクは聞いた。
ほかの部屋は使っていない(使えない)ということは、ここにはセルジュしかいないということになる。
聞いてしまってから、悪いことを聞いただろうかと不安になった。
何か事があったら、申し訳ない。
しかし、セルジュは「家族は王都にいる」と答えた。
アンジェリクはほっとした。健在なら何より。
でも、複雑な事で離れて暮らしているのだとしたら、やはりこれ以上は聞かないほうがいいのだろうか。
王都に城を構えている貴族が、こんな辺境で暮らすのはかなりワケアリな気がする……。
知らずに難しい顔をしていたらしく、セルジュがぷっと噴き出す。
「そんな顔しなくても、平気だよ。上に兄がいるから、僕は余りを賜っただけ」
「あ、そうなのね。でも、お兄様がいるのに伯爵ってことは……」
治めているのは辺境の地とはいえ、セルジュの分は伯爵だ。
実家は相當な家柄なのだろうか。
アンジェリクの疑問を察したように、セルジュが教えた。
「僕の生まれはバルニエ公爵家なんだ」
モンタン公爵家に並ぶ名家だ。
それを聞いてアンジェリクは、心のどこかで得心していた。
だから父も折れたのだ。
王もおそらく同じだ。いくらエルネストが怒って破談にしたいと言ったからといって、まがりなりにも王子の婚約者だった令嬢をただの田舎領主に嫁がせたのでは、格好がつかない。
せめて侯爵か、伯爵でも中央で高い地位にいる者を選びたかったはずだ。
それでもセルジュを推した。
公爵家の生まれとはいえ、國でも最も辺鄙な地を治めるセルジュを。
エルネストは、よほどアンジェリクを遠ざけたかったのだろう。
いったい誰に何を吹き込まれたのか。
気にはなったが、その一方で、その結果アンジェリクに転がり込んできた運命に謝した。
すっかり納得しかけたアンジェリクだったが、セルジュはここで弾発言を投げつけてきた。
「実家には、勘當されてるけどね」
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