《【書籍6/1発売&コミカライズ配信中】辺境の貧乏伯爵に嫁ぐことになったので領地改革に勵みます》第20話 月
その夜、セルジュとアンジェリクは初めて「そういうこと」になった。
ブリアン夫人の言葉を借りれば「夫婦として結ばれた」のだ。
恥ずかしくて、きっと真っ赤になっていたと思う。
初めてのキスは夫人から聞いていたよりもずっとロマンチックで、その先のあれこれはしだけ怖くて、だけどセルジュが優しくしてくれたから、安心して任せることができた。
ちゃんとできたことが嬉しくて、なんだかがいっぱいになった。
今になって思う。あんなことは、エルネストとは絶対にできない。
セルジュとだから、嬉しい。
セルジュとだから、幸せ。
セルジュとだから、もっともっと……。
「したい……。もう一度、いい? アンジェリク……」
ぎゅっと抱きしめられて、耳元で囁かれた。
夜明け前のベッドの中で、アンジェリクは甘く溶けそうになった。
ブリアン夫人イチオシのすけすけナイトドレスが大活躍する日々が來てしまうなんて。
毎晩、がドキドキしすぎて死にそうだった……。
Advertisement
「セルジュ……」
「アンジェリク……」
ああ、どうしよう。
幸せ過ぎてダメになりそう。
月とはよく言ったもので、それから一ヶ月くらいは、セルジュもアンジェリクもお花畑の中にいるような顔で、一日中へらへらと笑って過ごした。
そうこうしているうちにも日々は忙しく過ぎてゆく。
夜の會議こその時間に変わったけれど、それ以外の時間はお互いきっちり仕事をこなしていた。
やせた土地にサツマイモを植え付け、麥を刈った後の畑で蕎麥を育て、夏の間に短期間で収穫できる葉野菜をたくさん育てた。
アンジェリクとセルジュは、毎日のように例の可い馬車に乗って、各地に苗や種を配って歩いた。
土の質ごとに選んだ作は順調に育ち、次々収穫期を迎えて領民たちの食卓を潤した。
アンジェリク自が馬車をる練習もした。
近くの集落までなら一人でも行くようになった。
たびたびヴィニョアのモンタン農場に出向いて、必要なものを仕れてきた。一度に売ると値崩れすると思って何回分かに分けておいたドレスを、その都度手放していった。
おそらく著ることはないのだから、しも惜しくなかった。
手紙も書いた。ヴィニョアに行くたびに馬車便で送ってもらった。
王都からの便りもたくさんけ取った。學園の友人たちからも、何通もの手紙が屆いた。
その容にはさまざまなものが含まれていたが、それら全てをアンジェリクは自分ののうちにしまっておいた。
すぐには収穫に結びつかない果樹を、しずつだけれど、計畫的に植えはじめた。
家畜の扱いを心得ている者には、牛や鶏や豚を支給した。不公平にならないように、利益が出るようになったら同じ家畜をセルジュに返す約束をして。
母牛が二頭目の子牛を産んだら一頭を返す。そんなふうにゆっくりと返せばよかった。
絞った牛は世話をした農家の収になる。人々はしずつかになっていった。
瞬く間に夏が過ぎていった。
野菜と蕎麥を収穫した畑に麥を蒔いて冬を迎える準備をする。
冬の間の食料として、蕎麥やサツマイモやジャガイモ、南瓜などが各家庭の食糧庫に積み上げられた。
セルジュは稅率を六分に引き上げたが、誰も文句は言わなかった。
十月。
各地で行われる秋祭りにセルジュと一緒に出向くと、誰もが笑顔で迎えてくれた。
「今年は出稼ぎに行かなくても、なんとか冬が越せる」
「お館様と奧方様のおかげだ」
どこの祭りに行っても、領民たちはそう言って謝してくれた。
セルジュは「みんなが一生懸命働いてくれたからだよ」と言い、アンジェリクも「よく頑張ってくれたわ」と領民たちを労った。
二人で一緒に「みんな、本當にありがとう」と禮を言った。
悪天候に見舞われることもなく、多くのことがうまくいった。
アンジェリクは満足していた。
街道の整備や橋の工事など、やるべきことはまだまだたくさんあるが、最初の目標はクリアした。
夫や父親を出稼ぎに取られない冬を領民たちに迎えさせる。それが第一の目標だった。
次の目標は耕作地を増やすこと。
ドレスを売った殘りのお金と、集めた稅を使って開墾団の人材を募った。
リーダーを選び、仕事を任せられるようになると、セルジュとアンジェリクは視察の回數を減らしていった。
アンジェリクがブールに嫁いで四か月が過ぎていた。
その間に、何度か実家から結婚式についての問い合わせがあったが、はっきりとしたことは何も書けないままでいた。
セルジュとの生活はすでに始まっている。
証文もある。
いまさら式を挙げる必要があるだろうかと考え、すぐにこれはいけない癖だと思い直す。
ただ、今はまだ、そこまでは手が回りそうになく、やはり何も返事はできないのだった。
たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。
下にある★ボタンやブックマークで評価していただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
優等生だった子爵令嬢は、戀を知りたい。~六人目の子供ができたので離縁します~(書籍化&コミカライズ)
子爵令嬢のセレスティーヌは、勉強が大好きだった。クラスの令嬢達と戀やお灑落についておしゃべりするよりも、數學の難しい問題を解いている方が好きだった。クラスでは本ばかり読んでいて成績が良く、真面目で優等生。そんなセレスティーヌに、突然人生の転機が訪れる。家庭の事情で、社交界きってのプレイボーイであるブランシェット公爵家の嫡男と結婚する事になってしまったのだ。嫁いですぐに子育てが始まり、最初の十年は大変だった事しか覚えていない。十六歳で公爵家に嫁いで二十年、五人の子供達を育てブランシェット家の後継ぎも無事に決まる。これで育児に一區切りつき、これからは自分の時間を持てると思っていた矢先に事件が起こる――――。六人目の子供が出來たのだ……。セレスティーヌが育てた子供達は、夫の愛人が産んだ子供。これ以上の子育てなんて無理だと思い、セレスティーヌは離縁を決意する。離縁してから始まる、セレスティーヌの新しい人生。戀を知らない令嬢が、知らないうちに戀に落ち戸惑いながらも前に進んでいく····そんなお話。 ◆書籍化&コミカライズが決定しました。 ◆マッグガーデンノベルズ様にて書籍化 ◆イラストは、いちかわはる先生です。 ◆9人のキャラデザを、活動報告にて公開
8 130【書籍化・コミカライズ】愛さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる
「君を愛することはないだろう」 政略結婚の初夜、生真面目軍人ジェラルドにそう言い渡された伯爵令嬢アビゲイル。 前世は魔王のアビゲイルだが、魔王とはいえ食生活は貧しかった。 憧れの人間に転生して、これで豊かな食生活がと期待するも、継母と義姉は餓死ギリギリを狙って攻めてくる。 虐げられた生活を送っていた彼女にとって、政略とはいえこの結婚はそんな生活から脫出するための希望だった。 だからせめて、せめてこれだけは確認させてほしい。 「……ごはんは欲しいです」 黒髪青目でいかつい系の軍人旦那様は、ひもじい子には意外と優しかった。庇護欲にあふれた使用人にも大切にされ、アビゲイルの美味しい食生活がはじまる。
8 136【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無雙する
【日間&週間&月間1位 感謝御禮】 ブラック企業で働いていたアラフォーリーマンの難波カズは、過労死で異世界転生。 異世界を救い、戻ってきたのはなんと十七歳の自分だった。 異世界で身につけた能力を使えることに気付いたカズは、今度こそ楽しい人生をやり直せると胸を躍らせる。 しかし、幼なじみの由依をきっかけに、もといた世界にも『人間を喰う異形――ヴァリアント』がいることを知る。 カズは過去の記憶から、近い未來に由依が死ぬことを察してしまう。 ヴァリアントと戦う使命を持つ由依を救うため、カズはこちらの世界でも戦いに身を投じることを決める。 ★ファミ通文庫さんのエンターブレインレーベルから、書籍が9月30日に発売します。 文庫よりも大きめサイズのB6判です。 ★日間ローファンタジーランキング 最高1位 ★週間ローファンタジーランキング 最高1位 ★月間ローファンタジーランキング 最高1位 ※カクヨムにも掲載しています。
8 62【完結】「お前の嫉妬に耐えられない」と婚約破棄された令嬢の醫療革命〜宮廷醫療魔術師に推薦されて、何故か王國の次期騎士団長様に守られる生活が始まりました〜【書籍化】
《エンジェライト文庫様より発売中!》 サクラ・オーラルはメイル王國の子爵令嬢だ。 そんなサクラにはウィンという婚約者がいた。 しかし、ウィンは幼馴染のモミジのことをサクラより大切にしていた。 そのことについて指摘したらウィンはいつも『モミジは妹みたいなもの』としか言わなかった。 そんなウィンにサクラは徐々に耐えられなくなっていた。 そしてついにウィンから「お前の嫉妬に耐えられない」と婚約破棄をされる。 サクラはこれに文句がなかったので少し癪だが受け入れた。 そして、しばらくはゆっくりしようと思っていたサクラに宮廷魔術師への推薦の話がやってきた。 これは婚約破棄された子爵令嬢が王國トップの癒しの魔術師に成り上がり、幸せになる物語。 ※電子書籍化しました
8 160BioGraphyOnline
BioGraphyOnline、世界初のVRオンラインゲーム 俺こと青葉大和(あおばひろかず)はゲーム大好きな普通の高校生、ゲーム好きの俺が食いつかないはずがなく発売日當日にスタートダッシュを決め、今している作業は… ゲーム畫面の真っ白な空間でひたすら半透明のウィンドウのYESを押す、サーバーが混雑中です、YESサーバーが混雑中ですの繰り返し中である。 「いつになったらできるんだよぉ!」 俺の聲が白い空間に虛しくこだまする。 BGOの世界を強くもなく弱くもない冒険者アズ 現実の世界で巻き起こるハプニング等お構いなし! 小さくなったり料理店を営んだり日々を淡々と過ごす物語です 9/27 ココナラよりぷあら様に依頼して表紙を書いていただきました! 2018/12/24におまけ回と共に新タイトルで続きを連載再開します! ※12/1からに変更致します!
8 170ひざまずけ、禮
「ひざまずけ、禮」 理不盡な死を遂げた者たちが、その運命に抗うため、化け物を退治する。どこまでも平凡な少年と文學少女が織りなす、學園ストーリー。・・・になるといいな!(白目)
8 71