《【書籍6/1発売&コミカライズ配信中】辺境の貧乏伯爵に嫁ぐことになったので領地改革に勵みます》【番外編】 ブリアン夫人の獨り言(3)
オーブリー卿にされ、ダニオを産んだ。
シャルロットとカトリーヌの祖母に當たるは、南の海沿いにあるモンタン公爵領ルフォールの片田舎で余生を生きている。
彼の返事をけ取ると、アデールは王宮の係の者を訪ねた。エルネストが手當てをけ取りに來た時に渡してくれるよう手紙を預けて、後のことは天の采配に任せることにした。
どこにも行く當てのない二人を唯一けれてくれる人がいるとしたら、我が子であるダニオを手放したシャルロットの祖母くらいだ。
二人が彼を訪ねてくれればと思った。
そんな似合わないお節介をアデールが焼いたのは、シャルロットの姉のカトリーヌがきっかけだった。
妹のとばっちりをけたカトリーヌは、もともと行き遅れと言われていた地味な娘だが、バラボー子爵が爵位を失ったことで、にっちもさっちもいかなくなっていた。
このカトリーヌ、実は々変わった娘だった。
そもそもカトリーヌという娘には結婚願がなかった。
読書が趣味で、自分でも文章を書いていた。
シャルロットのことで同したアデールが何かの拍子に聲をかけると、作家としてのアデールに憧れていると言って前のめりに食いついてきた。
「私をあなたの弟子に……、いいえ、侍にしていただけませんか」
アデールはカトリーヌの書いたものを読ませてもらった。そして、これは……、と思った。
カトリーヌはいずこの國かで言うところの「オタク」であった。腐る、という表現も使うらしい。とにかく、カトリーヌは、どう考えてもコルラード卿とフェリクス卿をモデルにしているとしか思えない小説を書いていた。
「これは、世に出すには大問題ですが、萌えますね……」
「本當ですか!」
「何か、違う形で、道を探りましょう」
そんなわけで、カトリーヌを侍兼弟子としてけれ、一緒に暮らすようになった。
そのカトリーヌが、ある日「シャルロットのしたことは、決して許されることではありませんが」と前置きして言った。
「あの子は、最初から脇役にしかなれない人生を、けれるのが下手だっただけなんじゃないかと思うんです」
アンジェリクのように、何でも持っている娘が近にいたら、自分と比べずにいるのは難しいと続けた。
「誰も比べたりしないなんて言われても、信じるのは難しいです。そして、実際に比べられるんです」
目の前にいるアンジェリクは、常に注目され、褒められている。
シャルロットはその隣で霞んでいるしかなかった。
年齢の違う自分でも、アンジェリクのことは羨ましかった。同じ年のシャルロットがひねくれてしまっても、仕方ない部分はあったと思うと言った。
「の言い訳ですけど」
寂しそうに笑ったカトリーヌに、アデールは「わかるわ」と言って、肩に手を置いた。
にとって、世界は最初から不公平だ。
男にとっても同じかもしれないが、貴族のという狹い世界の中で生きていく時、生まれた環境の違いに苦しむ者がいることを、アデールは痛いくらい知っている。
社界の仇花のように咲いた若い日々。
その道の教育係として第一線で活躍した日々。
今は第三の人生が始まったばかり……。
いろいろなことがあった。
傷つくことを言われたこともある。蔑まれたことも。
大した人生ではなかったけれど、アデール自が後悔するようなことはしたくないと思って生きてきた。
第三の人生の始まりに、はからずも自分の著書の影響で、シャルロットは稀代の悪として全國津々浦々にまで知られるようになった。
運命の殘酷さに慄くとともに、シャルロットに対して、すまないとまでは思わないものの、かすかな同の念が湧いたのも事実だ。
その罪は、とうてい許すことはできないが、もしもシャルロットが心をれ替えることに功し、生まれ変わることができたなら、エルネストとともにどこかで生きていてほしいと思った。
這いつくばり、泥を摑んででも、生きてほしいと思った。
アデールとカトリーヌとの出會いもまた、運命の奇妙な巡りあわせだ。
かつてオーブリー卿の人だった者同士、ルフォールに暮らすあの人をアデールが今も知っていたことも……。
それらが全て、神の采配ならば、どうか不幸な罪人にも小さな加護があるようにと、皺の増えた手を見下ろしながら、アデールは靜かに願った。
了
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