《【書籍化】『ライフでけてライフで毆る』これぞ私の必勝法》【極振り】と【全振り】
グレゴールにより新たにもたらされた報が、攻略掲示板を阿鼻喚狀態とさせる中。
ユキの新たな癖が発覚しこれまた大騒ぎとなるユキファンの方々がいたらしい。
「ん~~~~! 今日は結構重かったぁ!」
あの後すぐに配信を切り上げた私は、そのままログアウト。
長時間よこたわったことによってすっかり固くなっていたを解して、居間へ向かう。
今日は一日中遊んじゃったから、もう終わりかな。
やることやったら勉強しよう。
ちゃちゃっと晩飯を作って、食べる。
今日は簡単に、醤油ベースのスパゲッティにした。
一人なので手早く済ませちゃって、洗い。
そのまま軽く掃除をしてから、部屋に戻る。
最近ちょっとサボリ気味な気がするからね。今夜は気合いれて頑張ろう。
ふんす、と気合をれて、席についた。
參考書を開き、シャープペンシルを手にもつ。
「さーてやるぞ……って電話!?」
突如鳴り響いた、聞き慣れた著信音。
ある意味最高で、ある意味最悪なタイミングにかかってきた電話に、思わず直した。
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そして、こーんなタイミングでかけてくるのなんて一人しか居ない。
畫面に表示された名前。そっとため息を付いて、応答する。
『お、出たでた。もしも~し』
「勉強しようとしてたところだったんですけど?」
『あはは。やっぱりギリギリセーフか』
「セーフじゃないよアウトだよ!?ヘッドスライディングでギリギリアウトだよっ!」
『そう言いつつも付き合ってくれる深雪は優しいなぁ』
「……切るよ」
『堪忍堪忍。 さて、どうやら武手にれたみたいやん?』
「報早いね。今更驚かないけど。
そう、今日の地下墓地の奧でね。なんか聖に伝わる杖っての貰った」
『期せずして武まで揃ったわけやな。防の納品がますます楽しみやん?
それで、なんか聞きたいことあるんちゃう?』
「……よく分かったね。今度は流石に驚いたよ」
『フッフッフ。伊達に長年親友やってないからなぁ。ステータス関連やろ?』
「ご明察。こういうの聞いてよいか分からないけれど。カナってさ、知力極振り?」
そう、これは晝間に筋力要求値の話になってから、ずっと気になっていたこと。
INTに全力傾けていることは知っているし、私自VITに振り続けてきた訳だけれど。
実際のところ、本當に全部振るよりも要求値分くらいは振っても良いんじゃないかって思ったの。
『ん~せやな。結論だけ言うで? 私のステ振りは、【極振り】ではあって【全振り】ではない』
「……どういうこと?」
『すっごい簡潔に言うと、ステータス概念があるネットゲームには、昔から【極振り】とそれを更に特化させた【全振り】って考え方があるんよ』
つらつらと並べ立ててくれた説明をまとめると、こんなじ。
まず、【極振り】とは、何らかの目的を持って一部のステータスに対して『極端に割り振ること』
そして、【全振り】は、ただ一つのステータスだけにすべてのポイントを注ぎ込むこと。
つまり、今やっているゲームで言えば、INTに九割振ってあと殘りで最低限のステータスを賄うスタイルは【極振り】になり、INTに全部振ると【全振り】となる。
今の私の狀況だと、VITだけに505ポイント全部振ってあるから【全振り】になるね。
『ウチの場合は、自前の裝備品をにつけるためにSTRとDEXにほんのしだけ振ってあるからな』
「は~~なるほどねぇ。そもそもそんなふうに區別されているのも知らなかったよ」
『まー、極振りって言えば全部振って特化するって認識の人も一般的には沢山(ようさん)おるからな』
「わたしもそう思っておりましたーっと。 ん~どうしようかな。カナもやっぱりSTRとかに振ってあるのかぁ」
直面した、杖の裝備條件もある。幸い、両手で持てばちょっと重いくらいで扱えるようだけれど。
『まーでも、ユキの場合はまた狀況も違うやろ? 結局んところ、ユキがどうプレイしたいか。それにどんなステータスが必要か、やで。
ま、こういうのはもっと最初に説明すべき事柄やったけどな!』
「うーむ。私がどういう遊び方をしたいか、か」
そんなものは決まっている。極限までHPを盛るというのが大前提。
そのHPを使って相手の攻撃をけて、今ならHPを使って毆りまで行う。
意図せぬうちに出來上がった、私の必勝法だ。
そのために必要なのは、やはりHPで間違いない。
耐久力に直結する新スキル【守護結界】も、影響するのは結局のところHPの総量。
やはりそうなると、とにかくHPを1でも多く積めそうなステータス構にするべきだよね。
「ん。當面の間はHP全振りで行くよ。
いまのところ、割り振らなかったせいでHPを損するって事態にはなっていないから。
そういうことが実際に起こったら、また考えようかな」
『ん。それがええんちゃうかな』
「相談のってくれてありがとね」
『こんくらい大したことないって。
あ、せやせや。トウカにも會ったみたいやな? あの子、律儀にメッセ飛ばしてきよったで』
「そうそう!今日の帰り道に、たまたまね。本當にすんごいハンマー持ってた。
しかも、まだまだ大きく重くするつもりみたいだよ?」
『は~~。ユキも大概やけど、あの子も大概そっちよりやなぁ』
「それ、他人(ひと)のこと言えない自覚ちゃんと有る? どーせ隠してる手札合わせたらダントツでやばいんでしょ」
『あっはっは。どうやろな? 紙耐久なんは間違いないしな。ま、そのあたりはもう5日もすればわかることよ』
奏の言葉に、何となくカレンダーを見る。
そう、イベントの日まではあと5日。
ぶつからないほうが楽なのは間違いないけど……きっと、カナとは相対することになるんだろう。
いや、お互い尖ってるし予想すら出來ないような事態になるかも?
「そうだね。もしぶつかったら、負ける気はないから」
『それはこっちも。ああ、楽しみやなぁ!』
最後におやすみを言い合って、通話が終了。
當然ながら、真っ白なままのノートが目の前には鎮座している。
……はぁ。學生として、こっちもちゃんと頑張りますかぁ。
私はなんとなく腕まくりをして、ふたたび勉強に向かい始めた。
ちょっとした休憩回(?)
ユキちゃんの方針は、【全振り】維持。
カナや、まぁ皆察していると思うので言ってしまうとトウカは【極振り】に分類される。
『Twitterで遊んでばっかりいるから……』って怒られたけど何も言い訳できない。
ブクマ6000超えました。本當にありがとうございます。
もしよろしければブクマ評価投げていただけると、私が凄く喜びます。
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