《【書籍化】『ライフでけてライフで毆る』これぞ私の必勝法》第一回イベント 公式実況配信

ユキの前話での所業を、別視點からもう一度お楽しみください──

って調子に乗ってたら普段の二倍くらいの分量になりました。

バーチャル空間。とある放送局の、とある一室。

セッティングもリハーサルも終わり、あとは本番を殘すのみとなっていた面々は、大會直前特有の獨特なに包まれていた。

『カメラ回しまーす。3,2,1……』

カウントダウンが終わると同時に、生放送が開始される。

放送席の後ろ。でかでかとゲームタイトルが描かれた放送用背景が映し出されたのを確認して、彼らは小さく息を吸った。

「さあいよいよこの時がやって參りました。

Infinite Creation 第1回公式イベント『あっちもこっちも敵だらけ!?生き殘るのは誰だ!』まもなくスタートになります!」

実況席と記載された放送用テーブル。

その上(・)に(・)乗(・)り(・)な(・)が(・)ら(・)、力強く宣言する。

『うおおおお』

『おおー!!!』

『待ってました!!』

『始まったか』

一気に盛り上がるコメント欄に、彼は小さな頭でうんうんと頷いた。

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得意げな様子の実況擔當とは裏腹に、解説として隣の席に控える男には苦笑いが浮かんでいる。

しかし、実況の彼にとって、そんなことは考慮のにすららない。

テンション最高で飛び跳ねながら、彼は手に持つマイクを握りしめた。

自己紹介にるために、一度、カメラが放送席を映し出す。

その瞬間、視聴者は一斉に思考を停止させられることとなった。

放送席に映し出されたのは、二人の人間……ではなかった。

解説席に座っている、知的そうな男。そして。

皆の困を嘲笑うかのように、マイクを握りしめた小さな存在へ向かってカメラがズームする。

それに気付いた彼は、その場でくるりと宙返りをして見せた。

『は?』

『は???』

『おいwww』

『どういうことだよw』

『なんでリスwww』

『実況席に何故か混ざり込むリス』

『え、こいつが実況?』

そう、リスだ。

らしく人気の高い、小

カメラに映し出されているのは、そのリスがマイクを片手に騒いでいる姿だった。

「実況は私、開発スタッフから守口が。

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解説には、有志の方による報Wikiの取りまとめ役とも名高い、雷蔵さんにお越しいただいております」

「雷蔵です。どうぞよろしくお願いいたします」

『うっそだろwww』

『このまま進むのかw』

『第一回イベントで伝説を創る開発スタッフ』

『雷蔵のなんとも言えない顔が面白すぎる』

『アイツは被害者だったか……w』

『開発スタッフ【りすのすがた】』

「それでは先ず、今イベントの概要の確認からりましょう……」

大騒ぎのコメント欄を置き去りにするように、実況は話を進めていく。

はじめこそ困していた視聴者達も、スタッフがこのまま突き進むと理解してからは収まり始めていた。

そう、わざわざ待機して、放送を待ち構えるような面々。

様々な畫を日頃から見ているので、なんやかんやと適応力が高いのである。

「さて。確認も終わったところで……雷蔵さん」

『はい?』

「今大會。注目しているプレイヤーは居ますか?」

「あー。そうですねぇ……」

一通り確認が終わったタイミングで、実況のリスが話題を振る。

雷蔵は、し考え込むような仕草を見せてから、答えた。

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「まずはやはり、最高レベル到達者とされているドレンでしょう。

多人數撃破という面では、カナも有利かもしれません。相當數撃破を稼いでしまえば、展開次第では魔王様が優勝を飾ることもあるかもしれません」

「なるほどなるほど。確かに、ドレンさんはタイマン最強とも名高い。そして魔王様は、我々開発陣も非常に期待している一人です」

「後はそうですね……優勝候補とまでは言いませんが、件(くだん)の聖様でしょうか」

「おお、ユキさんですね! ええ、彼には我々も1番期待していると言っても過言ではありません。

何せ、僅か二週間であっという間に登録者數二十萬超えですからね。

我々の予想を軽く超えてくるそのきには、開発陣も日々戦々恐々と見守っておりますよ。

何せこの間なんて、まだ準備段階だったワールドクエストを…………おっと、これはまだ匿事項でございました」

いかにもわざとらしく指を立ててみせるリスの姿に、雷蔵は苦笑を滲ませる。

「何とも興味を惹かれるお言葉ですが……公式さんがそう言われるということは、まだその時ではないということでしょう」

「理解が早くて助かります。

まあ、ゴブリンの駆除は積極的に。砦は1つとは限らない……とだけお伝えしておきましょうか」

「思いっきり答えてる!! 答えてますよ公式さん!!」

「あっはっは……おっと。そろそろ始まりますね」

「…………そうですね」

散々に場を賑やかしておきながら、あっさりと話題は転換される。

確かに公式実況配信である以上、何を優先すべきかは自明の理ではある。

しかし、良いように振り回されているようで雷蔵はなんとも言えないを抱くことになった。

そして、それを全て把握した上で、小狡い笑みを浮かべるリス。

そう。

開発スタッフの守口。彼は、格面にちょーーっとばかり問題があった。

◇◇◇◇◇◇◇◇

ちょっとノリがおかしい実況と、全プレイヤートップレベルの報を持つ解説。

一人と一匹による配信は、順調な盛り上がりを見せていた。

先ずは公認配信者であるユキの配信を映し出し、その純粋無垢そうな外見と真反対な殺戮ビームに苦笑い。

注目プレイヤーであるドレンが刀でプレイヤーを切り捨てていけば、同じく注目対象のカナは目につくもの全てを焼き払う。

その後も様々なプレイヤーにフォーカスを合わせていくこと暫く。

あっという間に、第一戦闘時間が終わろうとしていた。

「いやーもう最初の転移時間ですか。あっという間なものですねぇ」

「そうですね。戦闘可能範囲は一気に九分の一ほどまで小します。

最序盤の戦闘も終わり直し始めていた盤面も、これでくんじゃないでしょうか」

雷蔵の言葉に、守口はうんうんと頷く。

転移のタイミングに合わせて、大型スクリーンに映し出される対象はまたユキに切り替わった。

「さあ第一回目の転移が終わりました。半徑が一気に三分の一になった戦闘エリアに、プレイヤーたちはどのような対応をしていくのでしょうか!」

「凄サマの転移した先は、どうやら市街地のようですね。

ここは隠れるポイントも多く、一どこに何が隠れているか分からない。なかなか難しい狀況かもしれません。

……もっとも、彼の不意をついたところで簡単に倒せるとは思えませんけれど」

「凄ユキの特徴は、なんと言ってもぶっちぎりのHP。

例の結界すら未だ溫存しているようですし、彼の耐久を脅かすには生半可なものでは不可能でしょう!」

「ええ……おや。何かするようですね」

ここで、雷蔵がユキの不振なきを察知した。

注目してみれば、何やらカメラを遠ざけたがっている様子。

「おっと? ここでユキ,配信用カメラを遠ざけています。

はてさて人に見られたくない事とはなんなのか。皆様ご注目ください!」

そう、ユキは気付いていなかった。

これまで堂々としていたものが急にコソコソとし始めれば、余計に注目を集めるということに。

そしてなにより、たった今の自分の映像が、公式サイトどころか大會本部による公式実況配信にまで映し出されていることに……

そして、その時は訪れる。

『がっっおーー!!!』

「出ましたーーっ!! ここでユキの必殺技、がおー!!」

◆◆◆◆◆◆◆◆

技能:聖の咆哮

効果:『がおー』のびに呼応して発

対象に超高確率のスタン、高確率の魅了。

低確率の即死を付與する。

効果範囲、功確率は聲の張り上げ合に比例する。

◆◆◆◆◆◆◆◆

実況がぶと同時に、放送の下部分にテロップが表示される。

雷蔵はにこにことしながら言葉を補足し始めた。

「これは素晴らしいものが決まりましたね。確かに、このスキルならば目視できない壁越しの相手にも突き刺すことが出來る。

そして何より、即死や魅了はレベル差がある程りやすいという考察も出ています。

このタイミングで必死に隠れているような存在には、効果覿面と言えるでしょう」

「この僅かな間で、ユキの撃破數が三つもびた!

様の渾の雄び。どうやら三人もの相手をキュン死させたようです!!」

の全力のびを不意に食らったわけですからね。

私も、現場で喰らえば無事で済まないかもしれません」

まさか自分の咆哮について大衆の前で解説されているとは思いも寄らないユキ。

は新たな話題作り……ではなく、あくまで自分のスコアのために建へと踏みっていく。

「おーっと、ここで凄様は建へと踏みるようです。

らしい咆哮を経て迷いの消えた歩み。それが向かう先は…………

──人だ! 人間がそこにいた!」

「これは……ああ。

即死こそしなかったものの、行不能になった相手を狩りに來ているようですね。

壁越しであっても、命中時のエフェクトは微かに見える。そこを狙って取りに來たわけですか」

笑いを堪えるようにして、解説を進める雷蔵。

放送席、並びに視聴者の想いを汲み取るように。カメラはユキが何をなそうとしているかをはっきりと映し出せる位置を調整していた。

「さあ、凄がゆっくりと歩みを進めます。

その先には、不意の可らしい咆哮に腰を抜かしたらしいプレイヤーの姿。

ビームか? けない対象に容赦なくビームを撃つのか?

……いや。撃ちません。一歩一歩とその距離をめていく」

「チャージする素振りすら見せませんね。

のビーム攻撃には、被ダメージもしくはチャージが必要。とあれば、今やろうとしていることは……」

「遂に両者の距離が零になった!

足がすくんでけない人間に対し、凄がゆっくりと手をばしている。

その手は癒しの手? 慈の手でしょうか!」

煽るような守口の言葉。彼は當然、すべてわかっている。

そして。ユキは期待を裏切らない。

次の瞬間、一瞬の眩いが放たれた。

晴れた後に殘っているのは、凄ただ一人。

「あああああ!? 消えました。つい先程までそこに居たはずのプレイヤーの姿が消えてしまいました!」

「……【ドレイン】ですね。

なるほど。きを封じた上で、接前提のスキルを使って撃破しつつ自も回復。非常に有意義な行です」

「ドレインっ!!!

まさか、まさか。あどけない笑みをうかべて、手をさしのべてみせた聖様。

その手は癒しでも慈でもなんでもない。ただ、けない相手の命を確実に刈り取るための悪魔の手(デーモンハンド)!

これが、これが聖のやることなのか。

もはや悪魔。いえ、小悪魔(サキュバス)の領域です!!」

「ぶふっ……そ、そうですね。可らしい聲で相手を魅了し、きを封じた上で吸(ドレイン)

毒牙にかかった彼は、寧ろ幸福なのかもしれません」

笑いを堪えきれないながらも、解説の雷蔵はしっかりと乗っていく。

そう。彼もまた、こういうノリは非常に良い。

「ユキは歩みを止めずに次の建へと向かっていきます。

そこの人間、逃げてくれ!! 小悪魔がもうそこまで來ている!」

「もうスタンの効果は切れていてもおかしくないのですが……心が折れてしまっているのでしょうか。

……それともやはり、魔の魅了か」

「我々の願いも虛しく、また一人犠牲者が出てしまいました。

いやはや羨まし……いえ、けしからん!

この悪逆非道の小悪魔(サキュバス)聖を食い止めるのは一誰になるのか!

此処でほかの映像も見ていきましょう。

どうやらドレンは相変わらず…………」

散々に煽るだけ煽って、公式配信は映像を変更した。

いくら公認配信者とはいえ、まだ中盤でいつまでも同じ人間を映しているわけには行かない。當然の措置だろう。

ただ、これでより一層。公式チャンネルの視聴者はイメージを改める機會のないまま、サキュバス聖という印象を深めることとなった。

ユキ。またの名を、小悪魔聖(サキュバスセイジョ)。

の配信者としての勢いは、ますます留まるところを知らない──

どんどんゆうめいになっちゃうゆきちゃん

ブックマーク7000、合計20萬文字を同時に突破です。

どちらも連載二か月くらいからずっと目標にしてきたことなので本當にうれしい。

皆様の応援のおかげです。本當にありがとうございます。

今後とも、楽しんでいってくださいな。

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