《【書籍化】『ライフでけてライフで毆る』これぞ私の必勝法》聖魔決戦
魔法攻撃を突き詰めた魔王と、HPを突き詰めた聖。
これは言わば、矛と盾の頂上決戦。
突如として湧き起こった、炎の壁。
その後ろからゆっくりと姿を現したのは、予想通りの存在だった。
「……約束、果たしに來たで」
に纏うマントが風にひるがえり、裏の赤地が明らかになる。
尊大な態度を見せ付けるようにして、彼は私を正面から見やった。
カナ。
私の唯一無二の親友にして、相棒。
またの名を──魔王。
「予想より、早かったかなぁ」
私がこれまで対峙した中では、紛れもなく最強の一角だろう。
けれど、私は勝つよ。ここで倒してみせる!
「何を言うか。そっちだって近づいてきとったやろ?」
「おっと。バレバレでしたかー」
【咆哮】が決まれば一気に楽になるだろうけど、レベルも同等、対策も未知數。
外した時の隙を考えると……使えないね。
「當たり前。そっちのも、大概目立つんや」
「あはは。だよねー。
……とりあえず、【発(ショット)】!」
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不意討ち気味に、15%程度の威力となった【聖魔砲】を発。
カナの耐久力は、限りなく無に等しいはず。であれば、攻撃を炸裂させることさえ出來れば、その時點で勝てる確率は高い。
「ちょっ、前口上ガン無視かいっ!?」
ま、流石にというか、當然というか、上手くいくわけはないよね。
挨拶がわりの一撃は、即座に展開された炎の壁によって完全に相殺されてしまった。
それにしても、ゲームで親友と會うのは、結構久しぶりなんじゃないだろうか。
そして、當然ながら。
敵として相見えるのは、初だ。
杖を取り出して、両手に握る。
持つ度にズシリとくる覚には、未だに慣れない。
え? 諦めて筋力値振れって?
あーあー聞こえなーい。
「……【守護結界】
それから、【充填(チャージ)】」
「はっ、やる気充分ってか! 【魔導領域】!」
二人とも特化型だ。勝負の時間は、そう長くはならないだろう。
カナ相手に、出し惜しみなんてできる訳もない。
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直ちにバリアを展開させる。その出力は、勿論フルチャージ済み。
流石にレベルが下がる分、結界の効力もそれに合わせて低下はしちゃった。
まぁ、弱化したとはいえ、私のHP同様。5桁の耐久力がある訳だけれども。
向こうが展開してきたのは、領域系のスキル。
ふふん。今回、カナと戦うことを想定して、ちゃんと々と下調べしてあるんだ。
【魔法領域】は、魔師系の基本にして、とても重要なスキル。
自を中心とした魔法陣を展開して、その中にいる限り魔法の威力と詠唱速度を底上げできるんだったかな。
……あれ? 魔導って言った? 魔法じゃないの?
「【魔導】は【魔法】の上位互換や。勉強不足と違うか?」
な、なるほどね?
っていうか、私いま口に出してた!?
「ぜーんぶ顔に出とるわっ。ほら、小手調べや!」
何かを高速で呟いたカナの元から、炎の球が飛んで來る。
私の足下に飛來したそれは、その場に強烈な火柱(ひばしら)を生み出した。
「わわっ!」
回避する間もなく、炎にを包まれる。
上級火魔法、火炎嵐。
火球を投げつけ、著弾點から炎を立ち上らせる火球(ファイアボール)が、下級。
中級は二つ。そこそこの範囲を炎で薙ぎ払う火炎放(ファイアブレス)と、炎で防壁を構築する火炎壁(ファイアウォール)だ。
そして、上級。最低でもレベル30以上が必要だとかであまり報は出回ってなかったけど、予習はしてある。
中級までとは比べにならない魔力を必要とする代わりに、威力も一線を畫す、高等魔法。
その中で、今回使ってきそうと思っていたのが、これ。
火炎嵐(ファイアストーム)。
対象の足元から強烈な火柱を燃え盛らせ、相手を炎に包み込む魔法だ。
炎自は、し燃え上がると直ぐに消える。
たった1発の魔法で、守護結界は10%……1000ほど削られていた。
馬鹿にならない威力。だけど、覚悟していたほどでは全然ない。
これなら……行ける?
「ユキ、まさか今のがファイアストームやったとでも思っとるんちゃうやろな?」
またしても心を読むようにして、言葉が投げ掛けられる。
充填は進んでいるから、話してくれる分にはこちらが有利になるだけ。
「……違うの?」
「ふふっ。違うで。それは大間違いや」
勿つけるようにして、カナは不敵に笑ってみせる。
その様は、赤と黒を基調にした外套を纏う姿も相まって、確かに魔王と呼びたくなるような様子だった。
「今のは、ファイアストームやない。
……ファイアボールや!」
高らかに宣言した彼が、バッと右腕を掲げる。
その手から、膨大な魔力が溢れ始めた。
「そしてこれが、ウチのファイアストームや!」
次の瞬間、荒れ狂う程の炎熱が吹き出し、こちらに襲い掛かる。
あっという間に私を呑み込んだかと思えば、それは天まで屆くほどの勢いで吹き上げた。
途方もない火力にを焦がされながら、ステータスを確認。
その被害は甚大だった。9000ほど殘っていたはずの障壁は、早くも半分以下の耐久値まで削り取られている。
チャージはまだ、60%。
生半可な一撃にして凌がれてしまっては完全に詰むので、極限まで高めた威力を當てたいところだけど……!
「ほらほら、追加で行くで。【ファイアブレス】!」
「ぐっ……」
カナの手から放たれた紅蓮の炎が、私と周囲一帯を焼き焦がす。
おかしい。スライムの時と同じ魔法のはずなのに、規模も威力も異次元すぎる。
人のこと言えないとは思うけど、カナも1週間ちょいの長じゃないよね。
一何をしたら、魔王としてとんでもない魔法を振るうことになるんだろうか。
守護結界のHPは、殘り2000満たないくらい。
次の魔法によっては、私の殘るHP共々削り取られるだろう。
けど、充分だ。
時間は稼げた。チャージ出力は、90%弱。
仮に防寄りの魔法を使われたとしても、充分に貫ける威力になっているはず。
「私の、粘り勝ちだっ!」
【発(ショット)】
全全霊の力を込めた魔砲が、放たれる。
山1つ消し飛ばすようなの奔流。
暴力的なまでの一撃が、対するを呑み込んだ。
「……っ」
一気に3ほど増えた撃破數。
この中には、カナも含まれているのだろうか。
いや、そうに決まってる。確実に、直撃した。
魔力に全振りしている親友が、耐え切られるはずもない。
がざわつくのを抑え込んで、ポーションを服用。
目を開けていられないほどのが止み、徐々に視界が晴れていく。
ゆっくりと、明らかになっていく、前方の景。
その中に、魔王は立っていた。
「──ッ!?」
思わず、息を飲む。
まさか、私でさえ耐えられるか際どいほどのアレを直撃させて、生き殘ったというのか。
「いやー……流石やわ。保険がなかったら、死んどった」
の埃を払うような仕草をした親友は、こちらに向けて右手をかざす。
彼の、魔王の口角がニヤリと歪んだ瞬間、とてつもない悪寒が全を襲った。
「準備を待っとったんは、そっちだけやない。
ウチの最高魔法……そのに刻め!」
──メテオフォール。
靜かに、その聲が響き渡った。
突如として湧き起こる、天からの飛來音。
空を見上げた私は、唖然とした。
視界を埋めつくすほどの、巖石の群れ。
圧倒的な質量の暴力が、一斉に地上の私たちへ牙を剝く。
流星(メテオ)、降下(フォール)。
周囲一帯に等しく襲いかかった、無差別撃。
まず一撃が、殘っていた結界を打ち砕く。
そして、次の瞬間。
視界いっぱいに迫る巖石の姿を最後に、私の視界は暗転した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
プレイヤー:ユキ
獲得スコア:40キル
生存順位:10位
◇◇◇◇◇◇◇◇
漁夫狙いで待機してた面々は皆まとめて巻き込まれたようです。
皆様いつもご読本當にありがとうございます。
なんとこの度、ようぐそうとほうとふ先生にお願いしまして、表紙風のイラストを描いていただきました!
ちょっと細かい所までの指示も快く聞いて下さり、私にとって非常に満足行くものとなりました。
Twitter(@komaru0412)の方で、キャラデザと共に固定ツイートにて公開しておりますので、是非ご覧くださいませ!
あとは次の一話で最終結果にれて、第二章もこれでおしまい。
毎週更新で頑張りますので今後ともよろしくお願い致します。
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