《【書籍化】盡くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?》俺の知らない嫁の
遠足が終わると、また日常が戻ってきた。
でも今までとはちょっと違う。
たとえば、りこと廊下ですれ違ったとき、りこは恥ずかしそうに手を振ってくるようになった。
教室で目が合ったときには、にこっと微笑みかけてくれるようにもなった。
さすがに休み時間に雑談したり、一緒に登下校をしたりなんてことはないけれど、俺はそのささやかな接點だけで充分幸せだった。
――りこがどう思ってるかはわからない。
◇◇◇
その日の夜。
リビングのソファーでダウンロードした最新映畫を二本連続で見ていた俺は、深夜零時を越えたあたりからうとうとしはじめた。
もうこうなると、寢室に移するのが面倒くさい。
グズグズしているうちに、そのまま寢ってしまった。
そして信じられないくらい幸せな夢を見た。
夢のはじまりを認識できる人っているのだろうか。
ちなみに俺はいつも気づけば夢の世界にいるパターンだ。
今回もそう。
あれっと思ったら、の半分にらかい溫もりをじていた。
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この覚を俺は知っている。
雷雨の夜、りこがベッドに潛り込んできたときに教えられた彼のらかさだ。
もしかしてソファーで寢ている俺を見つけたりこが、もたれかかってきたのか……?
――って、本気で思ったわけがない。
そんな事態、起こりえるわけないし、こんなのは夢の中の出來事に決まっている。
だけど、それならまだ目覚めたくないな。
こんな幸せな夢、そう見れるもんじゃないから。
俺がそんなことを思って、夢にしがみついていると、俺に寄り添ってくるりこが囁くような聲で言った。
『……ねえ、湊人くん。……寢ちゃってるよね……?』
「……」
『……勝手にくっついたりしてごめんね……。ほんとはね、起きてるときもこうしたいんだ……』
「……」
『だめだね、私。け、結婚してもらえて、お嫁さんになれて、一緒に暮らせて……。噓の関係でも、傍にいられれば十分だったはずなのに……。どんどん張りになってくの……』
「……」
『……學校でももっと湊人くんと話せたらいいのになあ……。それに何より……私の気持ち、伝えたい……。……そんなことしたら湊人くんが離れて行っちゃうって、わかってるのに、馬鹿だよね……』
俺に都合の良い言葉だけを並べて、俺を心底幸せな気持ちにしてくれるりこ。
ああ、くそ。
もう、死んでもこの夢から覚めたくない……!
ところがそんな強いを抱いたせいか、に力がってしまい、その瞬間、隣のりこがびくっとを引いてしまった。
あ、待って。
いかないでくれ。
そう思っても、もう遅い。
ぬくもりは俺の隣からすっと消えて、甘く優しい言葉も聞こえなくなった。
最後に聞こえたのは、逃げるように遠ざかっていく足音。
バッと目を開いた俺は、一人きりのリビングを見まわした。
つけっぱなしのテレビの中では、映畫のエンドロールが流れている。
その時、遠くのほうから、どこかの部屋の扉が閉まる音がした。
りこ……?
「え。今の……夢……だったんだよな……?」
廊下へ続く扉を見つめながら、茫然と呟く。
當たり前だ。
……現実のりこがあんなこと言うはずないし。
でも――。
図々しい願と現実を知れという聲が、自分の頭の中で言い爭いをしている。
俺はそれからしばらくの間、扉を見つめた狀態でけなかった。
◇◇◇
翌朝も、心の中のもやもやした気持ちはまだ居座り続けていた。
あれは夢だったのか、それとも。
という問いの堂々巡り。
りこに聞けば、答えはすぐにわかるんだ。
別に夢だったとわかったところで、傷つくことはない。
今だって九十九%以上そう思ってるんだから。
じゃあ、萬が一、現実だったら……?
………………………………そ、そんなの、そんな……そんな……ああああああああああッッ。
うああああ、だめだ……!!
りこが俺を好きかもしれないという狀況がまったく想像できないのと、わけのわからない興とで、脳が思考停止してしまった。
りこが俺を好きかもしれないという可能について考えるのは、俺にとってハードルが高すぎた。
さあ、どうする。
もうこのまま、「いい夢だったな、うん」ってことで終わらせるか。
今までの俺なら間違いなくその道を選んでいた。
だって、そうすれば、九十九%以上否定する想いの中、微かに混ざっている希を守っていける。
時々、その可能について思いを馳せて、一人で幸福な気持ちになることだってできる。
……意気地なしの俺は、どうすればいいかわかっている。
いや、わかっていたはずなのに。
「――湊人くん? なんだか今日、ぼんやりしてる?」
歯を磨くため、並んで立った洗面所の前。
りこが鏡越しに尋ねてくる。
俺も鏡の中のりこを見つめ返した。
そして――。
「りこ、昨日の夜中、リビングに來た?」
気づいたら、そう勝手に口がいていた。
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高校生男子による怪異探訪
學校內でも生粋のモテ男である三人と行動を共にする『俺』。接點など同じクラスに所屬しているくらいしかない四人が連む訳は、地元に流れる不可思議な『噂』、その共同探訪であった--。 微ホラーです。ホラーを目指しましたがあんまり怖くないです。戀愛要素の方が強いかもしれません。章毎に獨立した形式で話を投稿していこうと思っていますので、どうかよろしくお願いします。 〇各章のざっとしたあらすじ 《序章.桜》高校生四人組は咲かない桜の噂を耳にしてその検証に乗り出した 《一章.縁切り》美少女から告白を受けた主人公。そんな彼に剃刀レターが屆く 《二章.凍雨》過去話。異常に長い雨が街に降り続く 《三章.河童》美樹本からの頼みで彼の手伝いをすることに。市內で目撃された河童の調査を行う 《四章.七不思議》オカ研からの要請により自校の七不思議を調査することになる。大所帯で夜の校舎を彷徨く 《五章.夏祭り》夏休みの合間の登校日。久しぶりにクラスメートとも顔を合わせる中、檜山がどうにも元気がない。折しも、地元では毎年恒例の夏祭りが開催されようとしていた 《六章.鬼》長い夏休みも終わり新學期が始まった。殘暑も厳しい最中にまた不可思議な噂が流れる 《七章.黃昏時》季節も秋を迎え、月末には文化祭が開催される。例年にない活気に満ちる文化祭で主人公も忙しくクラスの出し物を手伝うが…… 《八章.コックリさん》怒濤の忙しさに見舞われた文化祭も無事に終わりを迎えた。校內には祭りの終わりの寂しさを紛らわせるように新たな流れが生まれていた 《九章.流言飛語》気まずさを抱えながらも楽しく終わった修學旅行。數日振りに戻ってきた校內ではまた新たな騒ぎが起きており、永野は自分の意思に関係なくその騒動に巻き込まれていく 《最終章.古戸萩》校內を席巻した騒動も鎮まり、またいつものような平和な日常が帰ってきたのだと思われたが……。一人沈黙を貫く友人のために奔走する ※一話4000~6000字くらいで投稿していますが、話を切りよくさせたいので短かったり長かったりすることがあります。 ※章の進みによりキーワードが追加されることがあります。R15と殘酷な描寫は保険で入れています。
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