《【書籍化】盡くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?》高校生カップルの正しい過ごし方(平日編)①
その日は一日中々と大変だった。
まず、とにかくやたらと視線を浴びる。
休み時間や移教室の際はおろか、授業中ですらだ。
りこと馴染だって噓を吐いた時も注目を集めてしまったが、はっきりいって比じゃない。
「ほら、あの人が花江さんの……」
「ええっ……。ほんとに……?」
視線とセットで聞こえてくるのは、潛めた聲の噂話。
まあ、うん、言わんとしていることはわかるよ。
不釣り合いだ、信じられない、ってことだろう。
俺も同だからよくわかる。
それなのに、りこに好きになってもらおうと思ってるんだから、俺も図太くなったものだ。
だいたいこんなふうに注目を浴びるのだって、本來はめちゃくちゃ苦手なことなのに。
それさえも、りことの結婚生活を失わないためだったらやり過ごしてやると思うようになった。
って人をこんなふうに変えていくんだと思うと慨深いものがある。
大変なことの二つ目は、澤だ。
「新山ああああああっっ! ぬぁんで黙ってたんだよぉおおおお。ひどいだろ! なんでどうでもいいクラスメイト達と同じタイミングでおまえに彼ができた話を聞かされるんだよ!? しかも相手がりこ姫なんて……! うらやましいやら、みじめやらで、ハゲ散らかりそうだ!!」
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一限目が終わるなり、俺の席に駆け寄ってきた澤はそう言って頭を掻きむしりはじめた。
クラスメイト達の視線が痛いし、澤を連れ、急いでトイレに逃げ込む。
「澤、落ち著けって。黙ってたのは悪かったよ。相手が相手だからさ。隠れて付き合ってて言えなかったんだって」
「……前に俺が言ったじゃん。りこ姫おまえのことが好きだって。おまえは別に好きな子がいるって言ってたけど、あの時からすでに付き合ってたってこと……?」
し、しまった。
過去の自分がついた噓が今の俺の足を引っ張ってくる事態に……!
俺が答えあぐねいていると、澤はなぜか突然、「ははーん」と言って腕を組んだ。
「いや、わかった。言わなくていい。おまえの気持ちはわかる」
「え?」
「他に好きな子がいたって、りこ姫みたいなかわいい子に好きって言われたら振ったりできるわけないもんな。おまえの行を責めることなんて俺にはできないよ」
「あ、ああ」
なんだかわからないが、一人で納得してくれたようでよかった。
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ただ、澤の面倒な絡みは當然それだけでは終わらなかった。
その後も休み時間のたびに澤は怒濤の勢いで、りことのことについて質問してきたのだ。
本當にりこ姫から告白してきたのかだの、いつから付き合っていたかだの。
そこまで的にりこと話を詰めていないから、俺は「言いたくない」と返すことしかできない。
「どうして! 教えてくれてもいいじゃん」
「言えないって」
「だから理由は?」
晝飯もそっちのけで、向かいの席に座った澤がを乗り出してくる。
學食がいつもどおりざわめいていてよかった。
こんなやりとり他の生徒に聞かれたくないし……。
「新山、理由はってば」
「り、理由は……そ、そう。あれだよ。相手があることだし。俺だけの判斷でペラペラしゃべれないって」
「なんだよそれ。熱発覚した蕓能人みたいなこと言いやがって。じゃありこ姫に確認してくれよ。大親友の澤くんには二人のこと話してもいいかって」
「俺が嫌だっての」
「いや、新山。よく考えてみろ。おまえ彼ができるのなんて初めてだろ?」
「それがなに……」
「おまえ一人で、常に正解のルートを選べると思ってんのか? ってのはギャルゲーと一緒だぞ。たった一度、選択肢をミスっただけで、好き好き言ってた彼が『新山くん気持ち悪い。別れて』とか言い出すんだぞ」
「……っ」
「もう一度聞く。おまえひとりで常に正解のルートを選べる自信はあるのか?」
俺はの気が引くのをじながら、首を橫に振ることしかできなかった。
自信なんてあるわけがない。
「だったらのスペシャリストである俺を頼るべきだろう」
「澤だって彼いたことないじゃん……」
「まあな! でも俺は心がついた頃から、工學について研究しまくってきたからな!」
うーん。
頼りになるのかならないのか……。
でも、たしかに俺がない知恵を絞るより、相談相手がいるほうがしはマシな気もする。
「りことの間にあったことを話してもいいかは、本人に聞いてみるまで待ってくれ」
「わかった! じゃあ、質問容を変える」
「……まだこの話題続けるのか」
「當たり前だろ。中のある報全然得られてないんだから!」
「おまえ、明らかに楽しんでるよな……?」
「何言ってんだよ。心配二割、楽しみ八割だから!」
それほとんど楽しんでるじゃないか……!
「で、次の質問だけど――なんで付き合ってるのに、晝飯をりこ姫と一緒に食べないんだよ?」
「え? 普通はそういうもんなの?」
「だって、ほら見てみろよ」
澤が顎で示した先に視線を向けた俺は、男二人で晝食を摂っているテーブルがあるのに気づいた。
「みんなああやって二人の時間を楽しんでるわけよ。大人と違って高校生のなんて、二人で過ごせる時間が限られてるじゃん。放課後デートだって、あんま遅くまでうろついてたら補導されるしな」
「なるほど」
「おまえなんてただでさえバイトれまくってて時間全然ないだろ。そしたら平日は、晝飯んときとか、帰るときぐらいしかりこ姫との時間を確保できなくない?」
まさか「家に帰ったらずっと一緒だし」とは言えないので、俺は苦笑いを返した。
「なんだよ。なんかやけに余裕があるな? ……はっ、まさか」
「な、なに」
思いっきりギクッとなってしまった。
「休日にデートしまくってるから、平日は別にぃ的なやつか!? くそ! 羨ましすぎるぞ! 滅びろ!!」
澤の的外れな推測を聞いて、をでおろす。
「……なあ、りこ姫とどんなデートしてるの? 誰にも言わないから教えてくれよ」
「デートって……」
そもそもふたりで外出したのは、あの商店街での買い出しの時だけだ。
まいったな……。
架空のデートの験談でも語っておくべきか?
いや、今まで人生で一度もデートをしたことのない俺だ。
すぐにボロが出て、噓がバレるに決まっている。
そしたらなんでそんな噓を吐く必要があったんだという話になってくるし、下手したら付き合っていること自が噓だとばれかねない。
真実に基づいた噓をつくなら、ここは正直に話したほうがよさそうだ。
「デートしたことないんだよね」
「は!? 噓だろ!?」
「いや、ほんとに」
「なんでだよ!? てか、あの商店街でとられた寫真は!?」
「一緒に出掛けたのってあれ一回だけだし、そもそも商店街で買いするのをデートって言えるのか?」
「た、たしかに……。ってなんでデートしないんだよ!? あ、ふたりの関係を隠してたから?」
澤が無意識にいい球を投げてくれたので、慌ててそれをけ止める。
「そうそう! だからどんなデートをしてるも何もないんだよ」
「そっかぁ。でも、これからはどこでも行きたい放題だな!」
「へ?」
「だってもう隠す必要はないんだし。さっそく今週末デートしてこいよ! たしか休みっていってただろ。そんで俺に報告な!」
「いやいや、しないって!」
「おまえなあ、デートを面倒がる男は、の子に嫌われるぞ」
「え……。そうなのか……?」
「當たり前じゃん。何のために付き合ってんだって話になるし。娯楽も刺激も提供してくれない男、すぐに想盡かされちゃうって」
想を盡かされる……。
その言葉の攻撃力が高すぎて、の気が引く思いがした。
って、それはりこが本當の彼だったらっていう話だよな!?
いや、でも付き合っていない男でも、デートにうことで澤の言うところの「娯楽や刺激」を提供することってできるのだろうか?
もし、それができるのなら、デートって「俺と付き合うと楽しい」ってりこにアピールするチャンスなんじゃないか……?
「だいたいさ、學校でも一緒にいないうえ、デートすらしてないのがバレたら、他の男たちがりこ姫を狙い出す危険があるぞ。今までは男子全般相手にしてなかったから、みんな高嶺の花として遠くから眺めてるだけだったけど、彼氏を作ったうえ、相手が平々凡々とした新山だからなぁ。下手したらりこ姫が學した當時の告白ラッシュが再來しかねないって」
「……っ。それは困る……」
「だろ? 彼氏がいようがおかまいなしの奴だっているだろうし。二人の関係に隙があるって思わせないほうがいいよ」
「的に何したらいいんだ……?」
「だからいちゃつきながら晝めし食ったり、いちゃつきながら一緒に登下校したり。ふたりは超がつくほどのバカップルで、誰も割ってることなんてできませんって見せつけてやればいいんだって」
「な、なるほど……」
かなりハードルが高そうだ。
でも、りこを橫から奪われるなんて絶対に嫌だし、好きになってもらうための努力の一環として頑張るしかないだろう。
「よし。わかった。とりあえず今日一緒に帰ろうってってみる」
「おお! その意気だ! んで、なんか甘酸っぱい事件が起きたら俺に報告してくれよ!」
ワイドショーを楽しむ主婦みたいな態度で、澤が肩を組んでくる。
どうやら澤は、俺とりこの関係を娯楽として楽しむ方向にシフトチェンジしたようだ。
澤って普段からの話が大好きだしな……。
とはいえ俺にとっては唯一の相談相手だし、邪険にはできないよな。
正直、澤はもともとりこに憧れていたから、俺たちが付き合ってると聞いて怒ってしまうんじゃないかと心配していた。
怒るどころか、明るく祝福してくれた澤には謝している。
本人に言うと調子に乗りまくるだろうから、伝えていないけれど……。
まあ、だけど、たとえりこが一緒に帰ってくれても、澤が喜ぶような甘酸っぱい事件なんて起こりようがない。
そう高を括っていた俺の予想は、ものの見事に外れることとなる。
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